トランプ大統領の新たな上乗せ関税が公表された。大統領自身のSNSであるTruthSocialに投稿した。4月2日に公表された24%(一律分10%、上乗せ分14%=24%)に比べると1%上乗せされた。同大統領は1日に「日本の関税は30%〜35%になる」と示唆していた。これに比べると新たな関税は相当低い水準に設定されている。同氏の再々の発言が日本に対する“脅し”だったことがよくわかる。新たな関税の実施時期は8月1日に設定された。それまでに日本が新たな提案(譲歩)を行えば関税はゼロにもなるし、さらに上積みされる可能性もある。7日に公開された書簡で注目されるのは日本に対する1%上乗せのほか、EUが除外されていること。日本と同様韓国も25%に設定された。ちなみに韓国は4月2日と同じ水準である。

もう一つは日本、韓国に加えてマレーシア、インドネシア、バングラディッシュ、タイ、カンボジア、ラオス、ミャンマーが入っている。なんとなくアジアが狙い撃ちにされている気がする。石破総理は今朝、早速、関税対策本部会議を招集した。8月1日までに何を譲歩するか、本格的な検討が始まるのだろう。素人目にみればコメの輸入拡大、自動車メーカーの現地生産の強化、非関税障壁としては車検制度の大幅緩和などが検討されるのではないか。日本ができる対応策は無限にあるわけではない。残りの時間はわずか。少ない日程の中で石破総理がスパッと決められるか。参院選の最中でもある。序盤の情勢は自民党にとってきびしそうだ。コメの輸入拡大を決断できるのか。総理の手腕が改めて問われることになる。おそらくコメ問題になると野党も歯切れが悪くなるだろう。参院選が終了するまで結論は出さないとみる。

それにしてもこの期に及んでトランプ氏はなぜ1%という微小な関税の上乗せに及んだのだろうか。大統領の真意は測りかねるが、憶測を逞しくすれば石破総理に対する“当てつけ”ではないか。総理はかねがね「国益を損なうような妥協はしない」「ゆっくり急ぐ」「ギリギリの交渉を続ける」など、数々の迷言を吐いてきた。トランプ氏も「国益」をかけている。国益をかけて真っ向勝負に打って出たわけだ。核の傘下にいる日本が米国と国益をかけて戦えるのだろうか。仮に国益をかけて戦うとすれば、手段は一つしかない。米国債の売却だ。だが、加藤財務大臣がいったん口にしたこの戦略は、直後にナヨナヨと撤回した。中国はレアアースで勝負に出た。トランプは習近平氏の戦術に負けたのである。対する石破氏。口から出る言葉は常に勇猛果敢だが、実績が伴わない。さて残り約3週間、石破総理と自民党はどうするのだろうか。