▽【米国市況】円下落、トランプ関税25%の発表で対ドル146円台乗せ
Rita Nazareth
- 株は反落、大型ハイテク株に売り-マスク氏の新党結成でテスラ急落
- 米国債は軒並み下落、入札に注目-サウジの価格引き上げで原油反発
7日の外国為替市場では、ドルが大半の主要通貨に対して上昇。トランプ大統領が日本と韓国からの輸入品に25%の関税を賦課すると発表し、円と韓国ウォンが特に大きく下げた。
| 為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| ブルームバーグ・ドル指数 | 1196.51 | 5.72 | 0.48% |
| ドル/円 | ¥146.06 | ¥1.59 | 1.10% |
| ユーロ/ドル | $1.1708 | -$0.0070 | -0.59% |
| 米東部時間 | 16時56分 |
トランプ氏は報復に動かないよう日本に警告した。
関連記事:トランプ氏、日本からの輸入品に25%の関税賦課へ-8月1日発効 (2)
三井住友信託銀行米州部マーケットビジネスユニットの山本威調査役は、新たな関税率の発表を受けたドル・円相場について、「25%の関税率でそのままいくとは思えず、交渉の材料とされていることを踏まえれば、中期的に円売りが続くとは思わない。しかし交渉の進展には時間がかかると思われ、短期的には一段の円安に注意が必要かもしれない」と指摘。
「貿易交渉の先行き不透明感に加え、参院選を控えた政治的な不透明感の高まりを受け、雇用統計を受けたドル買い・円売りに拍車がかかった格好だ」と述べた。
トランプ氏は関税率を通知する書簡を公開し始めた。日韓のほかには、マレーシアとカザフスタンに25%、南アフリカに30%、ラオスとミャンマーに40%の関税を発表した。
ホワイトハウスのレビット報道官によれば、各国への書簡はトランプ氏がソーシャルメディアでも公開する。近日中に追加の書簡が明らかになるという。
ステート・ストリート・グローバル・マーケッツの新興市場担当シニアストラテジスト、ニン・スン氏は「トランプ関税がセンチメントを重くしており、リスク資産には良くない日になった」と話した。

4月2日を「解放の日」と称してトランプ大統領が関税を発表して以降、安全な投資先としてのドルの信認が揺らぎ、米経済は大胆な関税政策の影響でリセッション(景気後退)に陥るとの不安が広がった。ドルは年初来、9%近く下げている。
先週発表された6月雇用統計は強い数字となり、ドルを支えた。これを受けて利下げ期待は後退し、7日の時点で市場の織り込み具合は年内約51ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)となった。1週間前は65bpだった。
円は対ドルで一時1.2%安の146円24銭まで下落。日中としては6月23日以来の安値をつけた。。ウォンは一時約1.2%下げて対ドル1378ウォンを付けた。
パイオニア・インベストメンツの債券・通貨戦略ディレクター、パレシュ・ウパダヤ氏は、この日のトランプ氏発表を受けた幅広いリスク資産への売りに「驚いていない」と話す。「韓国と日本に関してネガティブなニュースがあったが、こうした悪い知らせはリスク回避につながるものだ」と述べた。
一方で新興市場国の通貨も圧迫された。トランプ氏は主要新興国グループBRICSの「反米政策」に同調するいかなる国に対しても、追加で10%の関税を課す考えを示した。
株式
米株式相場は過去最高値から反落。日韓両国は一方的な米関税を賦課されるまでの3週間で、市場開放の要求に応じなくてはならない。大型ハイテク株が下げ、テスラは一時8%余り下落。イーロン・マスク氏は新たな政党結成を発表し、同社の見通しに対する不安が広がった。
| 株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
| S&P500種株価指数 | 6229.98 | -49.37 | -0.79% |
| ダウ工業株30種平均 | 44406.36 | -422.17 | -0.94% |
| ナスダック総合指数 | 20412.52 | -188.58 | -0.92% |
シティー・インデックスのマーケットアナリスト、ファワド・ラザクザダ氏は「ニュースのリスクに投資家は警戒するべきだ」と話す。「土壇場での合意がまとまる余地は大きいが、同時に貿易摩擦が再燃する可能性も高い」と述べた。

BMOキャピタル・マーケッツのイアン・リンジェン、ベイル・ハートマン両氏は数カ月前から見られる米政府の行動について、交渉プロセスにおける「新たな戦術」に過ぎないとの印象を受けたと語った。
両氏はまた、最新の貿易動向から一つ明るい点を指摘するなら、7月中は関税引き上げが実行されないことだと述べた。9日に失効するはずだった当初の90日間猶予が「間接的に延長された」ことを意味するという。

欧州連合(EU)は米国との枠組み合意に近づいているとの認識を示した。欧州委員会のフォンデアライエン委員長は6日にトランプ大統領と電話で会談。ベッセント米財務長官は数週間内に中国側と会談する見通しだと述べた。
個別企業のニュースとしては、テスラのマスク最高経営責任者(CEO)が新政党の結成を発表し、本業への重しとなっている政治活動に一層踏み込んだことが嫌気された。テスラ株は、トランプ大統領の減税法案を巡り6月初旬に同氏と対立して以来の大幅下落となった。
人工知能(AI)向けクラウドサービスを手掛けるコアウィーブは、全額株式交換により暗号資産(仮想通貨)マイニング(採掘)大手の米コア・サイエンティフィックを買収することで同社と合意した。買収額は約90億ドル(約1兆3120億円)。
アップルはEUが科した5億ユーロ(約850億円)の制裁金を不服として控訴した。制裁金は「前例がなく」、当局が「アップストア」に求めた変更は「違法だ」と主張している。
米国債
米国債相場は軒並み下落。長期債の下げが比較的大きくなった。8日に始まる中・長期債入札サイクルを控え、イールドカーブのスティープニングが見られた。活発な社債発行も供給圧力を高めた。
| 国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
|---|---|---|---|
| 米30年債利回り | 4.91% | 5.3 | 1.09% |
| 米10年債利回り | 4.38% | 3.4 | 0.78% |
| 米2年債利回り | 3.89% | 1.3 | 0.32% |
| 米東部時間 | 16時56分 |
入札サイクルは8日の3年債(発行額580億ドル)に始まり、9日の10年債(同390億ドル)、10日の30年債(220億ドル)のリオープニング(追加発行)と続く。
米経済は今のところ、健全な雇用とインフレの抑制で持ちこたえている。しかし連邦公開市場委員会(FOMC)は今後数カ月の経済に関税がどう影響するかを見極めたいと考え、度重なるトランプ氏からの利下げ圧力に抵抗している。
今週は9日に発表されるFOMC議事要旨(6月会合分)が投資家の注目を集める。
原油
ニューヨーク原油先物相場は反発。サウジアラビアがアジアの顧客向けに出荷する原油価格を予想以上に引き上げたことが買いを誘った。石油輸出国機構(OPEC)産原油の生産引き上げを市場が吸収できると、サウジが考えているとの見方が広がった。
サウジの国営石油会社サウジアラムコは「アラビアンライト」のアジア向け価格をバレル当たり1ドル引き上げ、アジア顧客向け指標価格より2.20ドル高く設定した。ブルームバーグが確認した同社文書で明らかになった。
関連記事:サウジ、アジア向け代表油種を値上げ-夏の需要見込み自信の価格設定
OPECと非加盟産油国で構成される「OPECプラス」は8月に供給を日量54万8000バレルと、予想以上に引き上げた。9月にも追加増産が予想されている。
サクソバンクの商品戦略責任者、オレ・ハンセン氏は「夏季の需要期に価格を引き上げる決定は、現物市場が依然として逼迫(ひっぱく)していることを示しており、当面は追加供給が吸収可能であることを示唆している」と指摘。「短期的には、原油の下振れリスクは限定されているようだ」と述べた。

ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物8月限は、前営業日比93セント(1.4%)上昇し、1バレル=67.93ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント9月限は1.9%高の69.58ドル。
金
金相場はほぼ変わらず。トランプ大統領が日韓の製品に25%の関税を課すと発表した後、下げ渋る展開となった。
今回の措置は、米国の貿易政策の抜本的な見直しを急ぐトランプ大統領の政策の一環。市場に不安定要因として働き、安全資産である金の需要を後押ししてきた。

トランプ大統領が前日、「BRICSの反米政策」に同調するいかなる国に対しても、追加で10%の関税を課す考えを示しことを受けてドル高が進行。金スポットは一時1.2%安となる場面もあった。通常、ドル高は金価格への重しとなり、他の通貨での購入者にとっては金が割高になる。
関連記事:トランプ氏、BRICS「反米政策」と協調なら10%関税増す方針 (1)
金スポット価格はニューヨーク時間午後3時22分現在、前営業日比48セント高の1オンス=3337.63ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は10セント安の3342.80ドルで終了した。
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