参院選が始まっているが、連日のメディアの喧騒が嘘のように私の周辺は静かだ。街宣車は一台も来ない。電話もなければメールも来ない。新聞はまったくとっていないので、選挙情報はネットかテレビだけ。どちらもけたたましいほど大量の情報で溢れている。序盤の情勢は参政党の躍進ぶり一色。自公連立政権は過半数割れの可能性もあると、主要メディアは同じような情勢判断を伝えている。テーマは消費税減税か現金給付か。まるで二者択一のような選挙報道で溢れている。中には「なぜ投開票日が3連休の真ん中に設定されたのか」と問うテレビ局もある。なぜいまごろ。「遅すぎる」と叫びたくなる。投票率の低下を狙った自公連立政権の“思惑”に決まっているではないか。メディアの反応の鈍さが気になる。
政策論争も同じことの繰り返し。消費税減税か現金給付か。政党の数が多すぎてどの党が何を主張しているのか、まるでわからない。石破政権の現金給付と野党の消費税減税の戦いの様相でもある。野党の消費税減税の中身は一様ではない。完全撤廃を主張する党もあれば、税率の引き下げ、期限付き撤廃など中身は様々。テレビ局はどこも各党の主張を一覧表にしているが、政党の数がおおいせいかちょっと見ただけでは記憶に残らない。テレビ局は伝え方の工夫が足りないのではないか。自分が視聴者になったつもりで考えた方がいい。ちょっと前まで国民民主党が主張していた「手取りを増やす」との真っ当な政策は、いつの間にかどこかに消えてしまった。消費税減税も現金給付も国民の手取りを増やすわけではない。
消費税撤廃も税率の引き下げも、国民の支出を減らす政策である。結果的に可処分所得の減少幅が少しだけ小さくなるにすぎない。それによって消費が本当に増えるのか、やってみないとわからない。1回こっきりの現金給付、裏には増税の思惑が隠されている。国民はもはや騙されないだろう。石破政権は手取り増を賃上げに委ねている。歴代自公政権はそれしか言わない。だが賃上げはインフレの後追いに過ぎない。企業はこのところ努力をしている。問題は政府だ。この30年間、国民負担率を少しずつ引き上げてきた。コメだけではない。医療費も薬代も値上がりしている。にもかかわらず制度的な国民への還元はゼロ。自公政権は貧しい国民から“奪う”ことに専念してきた。参院選の焦点は、ありていに言えば「減税」か「増税」かの選択だ。メディアはそこに焦点を当てるべきだ。
