トランプ氏が大統領に就任してから、いたるところに不透明感が転がっている。原因の大半は前例のないトランプ氏の政策並びに、同氏のコロコロと変わる発言にありそうだ。トランプ氏がいたるところで「不透明感」を生み出している。だが、それ以外にも要因はありそうだ。たとえば、同氏の看板政策である「One Big Beautiful Bill Act」、いわゆる減税・予算法だ。この法律の評価をめぐってCBO(議会予算局)と共和党の解釈が全然違うのだ。Bloombergは法案のコストについて以下のように報道する。「CBOと米議会の合同税制委員会の試算によると、今回の法案は現行法ベースで見た場合、今後10年間で連邦財政赤字を3兆4000億ドル増やす見通しだ」との見解を公表した。これに対して上院共和党は現行ベースで10年間に4000億ドルの財政赤字削減になると試算している。

トランプ政権は減税や規制緩和による経済成長に加え、関税収入で法案の財政負担が一部相殺されると主張する。米大統領経済諮問委員会(CEA)の試算によれば、今回の減税措置により国内総生産(GDP)は今後4年間にインフレ調整後4.2-5.2%押し上げられるとの見通しを示している。これに対して一部のエコノミストは、政権側の楽観的予測に反発する。関税による収入は、今回の減税・歳出法で政府が10年間に失う歳入規模には到底届かないとの見方が主流だ。物価上昇によって消費が鈍り、輸入が減って関税収入も落ち込む。市場関係者やエコノミストは、政府債務は35年までにGDP比118%超に達し、「米国債の信認が損なわれる恐れがある」と警告する。メディアは常にマイナス評価に傾く。

日本では政策の妥当性が議論される前に、数字そのものが一人歩きする。典型的なのは103万円の壁を突破するための所得税控除額の引き上げだ。国民民主党が上限103万円の上壁を178万円に引き上げる案を提示した時、政府・自民党は間髪を容れずに、「必要な財源は7兆円〜8兆円に達する」とぶち上げた。これに呼応して地方自治体は「地方財源が4兆円不足する」と危機感を煽った。必要財源の根拠が示されないまま、財源不足だけが強調される。なおかつ、大幅減税に伴う経済効果など誰一人見向きもしない。不透明感の裏にはマイナス評価に同調する世の中の流れもあるのではないか。「経済は気から」と言われる。総理が明るい顔をして、明るい将来展望を語るだけで景気は上向く。ところが現実は全く逆。悪い数字を強調しながら暗い顔で総理は、「社会保障を維持する」と強調する。「ダメだこりゃ?」、これでだけで現役は将来に対する希望を失う。