▽【米国市況】株・国債が上昇、議長解任観測で混乱も-ドル一時146円台
Rita Nazareth
- パウエルFRB議長解任観測で株売り、トランプ氏の否定で買いに
- PPIは予想下回り、年内の利下げ観測を後押し
16日の米株式相場は上昇。連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長に関する臆測が一時的な混乱を引き起こしたが、トランプ大統領が議長を解任する計画はなく、「コンセプト」として議論しただけだと述べたことで、荒い値動きは収まった。
ホワイトハウス高官の話として、トランプ氏が近くパウエル氏を解任する可能性が高いとの報道が流れた後、トランプ大統領は「何かをするつもりはない」と発言。S&P500種株価指数は再び上げに転じた。
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| 株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| S&P500種株価指数 | 6263.70 | 19.94 | 0.32% |
| ダウ工業株30種平均 | 44254.78 | 231.49 | 0.53% |
| ナスダック総合指数 | 20730.49 | 52.69 | 0.25% |

ノースライト・アセット・マネジメントのクリス・ザッカレリ氏は、FRB議長の解任が決定された場合、中央銀行の独立性に関する懸念が「投資家の脳裏に真っ先に浮かぶだろう」とし、市場に悪影響を及ぼすとの見方を示した。「パウエル氏を解雇する決定を下せば、法廷で争われることになることを忘れてはならない。なぜなら、議長は『正当な理由』がある場合のみ解任されるからだ。そして、FRB本部の建設費超過が、その正当な理由に該当するかどうかは裁判所が判断することになる」と話した。

インタラクティブ・ブローカーズのスティーブ・ソスニック氏は「トランプ大統領がパウエル氏解任を『計画していない』と発言した今、最初の報道は市場の反応を探るための観測気球だったのではないかと疑わざるを得ない」と述べた。
アカデミー・セキュリティーズのピーター・チア氏は、一連の「勝利」によってトランプ大統領が勇気づけられ、この件についても強硬な姿勢を貫く可能性があると私は従来から主張してきたと発言。「しかし、恐らくもっと重要なのは、関税政策が市場の予想よりも強硬なものになる兆しがあるということだ」と付け加えた。
朝方の上昇は、予想を下回る生産者物価指数(PPI)が年内の利下げ観測を後押ししたことが要因だった。6月のPPIは前月比で横ばい。前月は0.3%上昇に上方修正された。6月は前年同月比では2.3%上昇。
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ハリス・フィナンシャル・グループのジェイミー・コックス氏は「ディスインフレは継続しているが、連邦公開市場委員会(FOMC)は9月まで金利を据え置く方針を堅持するだろう」と述べた。「労働市場が堅調で底堅さを維持する限り、金利が大幅に低下する可能性は低い」と話した。
米国債
米国債相場は上昇。パウエル議長解任の可能性が報じられると、金融政策に敏感な2年債利回りが一時3.86%まで低下した。5年債と30年債の利回り差は2021年以降で最大となった。
| 国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
|---|---|---|---|
| 米30年債利回り | 5.01% | -1.4 | -0.27% |
| 米10年債利回り | 4.45% | -3.0 | -0.67% |
| 米2年債利回り | 3.89% | -5.2 | -1.33% |
| 米東部時間 | 16時51分 |

モーニングスター・ウェルスのドミニク・パッパラルド氏は、トランプ大統領がパウエル議長を公然と批判し、解任するとの「脅し」が続いていることの最大の影響は、FRBの信頼性と政策の信用性の低下だと指摘した。
外為
外国為替市場ではドル指数が下げ渋る展開。ホワイトハウス高官がパウエル氏解任の可能性は高いと述べたため、ドル売りが膨らんだが、トランプ大統領が解任の計画はないと述べると、急速に下げ渋った。
対ドルの円は一時、1ドル=146円92銭まで上昇したが、トランプ氏の発言後に148円台まで伸び悩んだ。その後は147円台まで再び強含んだ。
| 為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| ブルームバーグ・ドル指数 | 1203.99 | -3.46 | -0.29% |
| ドル/円 | ¥147.84 | -¥1.04 | -0.70% |
| ユーロ/ドル | $1.1640 | $0.0039 | 0.34% |
| 米東部時間 | 16時52分 |

ウェルズ・ファーゴのストラテジスト、アループ・チャタジー氏は「パウエル氏を解任すれば、ドルのリスクプレミアムは大幅に上昇する。インフレの安定が脅かされるため、ドルは下落、国債利回りは上昇してイールドカーブはスティープ化する」と指摘。
解任の場合、その当日だけでドル指数は3%前後下がる可能性があると、チャタジー氏は予想した。
原油
ニューヨーク原油相場は3日続落。リスク資産全般が買われる中、原油は需給が緩む兆候が示されて小幅安となった。
トランプ大統領がパウエルFRB議長解任計画を否定し、株式相場が上昇する前、原油は1.7%安まで下げていた。米エネルギー情報局(EIA)の週間報告では留出油の需要低下と、主要な原油貯蔵拠点であるオクラホマ州クッシングの在庫増加が示された。
バファロー・バイユー・コモディティーズのマクロ取引責任者フランク・モンカム氏は「今のマーケットはレンジ取引だ。地政学リスクの低下が上値リスクを抑える一方、季節的な需要のピークが価格をある程度支えている」と述べた。

トレーダーもアナリストも、年末にかけての供給超過見通しが依然として最も気になるところだ。世界的に需要の伸びは減速し、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成される「OPECプラス」は減産の巻き戻しを前倒しで進めている。米州全体で生産は増加している。
原油在庫は数カ月前から世界的に増加傾向にあるが、積み上がりの大部分は先物価格にほとんど影響を与えない市場で起きていると、モルガン・スタンレーは分析。トレーダーは期限の近い先物に高いプレミアムを払っており、この逆ざや現象は短期的な需要の強さを示唆する。
マーティン・ラッツ氏らモルガン・スタンレーのアナリストは「ブレント先物は期近4-6カ月にわたって、頑固な逆ざやが続いている。通常は需給のタイトさを示唆する構造だ」とリポートで指摘。在庫増の不均等な配分が特徴的だとし、「在庫の積み上がりは太平洋側で起きているが、ブレント価格は大西洋側で決まる」と述べた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物8月限は、14セント(0.2%)安い1バレル=66.38ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント9月限は0.3%下げて68.52ドル。
金
ニューヨーク金相場は反発。FRB議長解任の計画をトランプ氏が否定した後は、大きく上げ幅を削った。
関連記事:トランプ氏、FRB議長近く解任の可能性「非常に低い」-報道を否定
FRB議長が近く解任される可能性は高いと、ホワイトハウス高官が述べた後、金相場は一時1.6%高となっていた。
2026年の任期満了を待たずにパウエル議長を解任することになれば、FRBの独立性が揺らぎ、ドルにはマイナスになるため、安全資産としての金需要を押し上げる。
金スポット価格はニューヨーク時間午後1時40分現在、前日比29.81ドル(0.9%)高い1オンス=3354.36ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は22.40ドル(0.7%)上げて3359.10ドルで引けた。
原題:Stocks Climb as Trump Denies Plan to Fire Powell: Markets Wrap(抜粋)
Dollar Pares Decline After Trump Comments on Powell: Inside G-10
Oil Edges Lower as Stockpile Gain Undercuts Risk-On Sentiment
Gold Pares Gains After Trump Says Not Planning to Fire Powell
