▽【米国市況】S&P500が最高値、小売売上高の堅調で-短期債に売り
Rita Nazareth
- TSMCが売上高見通し上方修正、ハイテク株に買い
- 失業保険申請件数は減少、円は一時149円09銭まで下落

17日の米株式相場は続伸。S&P500種株価指数は過去最高値を更新した。堅調な小売売上高に加え、失業保険申請件数が減少したことから、景気敏感株を中心に買いが膨らんだ。
| 株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| S&P500種株価指数 | 6297.36 | 33.66 | 0.54% |
| ダウ工業株30種平均 | 44484.49 | 229.71 | 0.52% |
| ナスダック総合指数 | 20884.27 | 153.78 | 0.74% |

小型株で構成されるラッセル2000指数は1.2%上昇。ハイテク株も高い。半導体の受託生産大手、台湾積体電路製造(TSMC)が売上高見通しを上方修正し、世界的な人工知能(AI)投資の勢いに対する投資家の自信を高めた。通常取引終了後にネットフリックスが発表した決算は予想を上回り、同社は売上高見通しを引き上げた。
関連記事:米小売売上高、6月は幅広く回復-消費減速懸念和らぐ可能性も (2)
6月の小売売上高は急減していた前月から幅広い分野で回復。個人消費の減速懸念をやや和らげる可能性がある。先週の新規失業保険申請件数は5週連続で減少し、4月半ば以来の低水準となった。雇用市場の強さが示された。
ノースライト・アセット・マネジメントのクリス・ザッカレリ氏は「景気が拡大を続け、失業率が低水準を維持する限り、個人消費は続く。この好循環はより高い利益を生み出し続ける可能性があり、株式相場上昇を後押しする原動力になる」と述べた。
ハリス・フィナンシャル・グループのジェイミー・コックス氏は、消費者は4月の関税ショックを乗り越え、消費活動を再開しているようだと指摘。「あとは連邦準備制度理事会(FRB)が9月の利下げサイクル再開方針を明確に示せるだけの、十分なインフレデータがそろうか確認する必要があるだけだ」と語った。

トレードステーションのデービッド・ラッセル氏は「個人消費は6月に復活した。新規失業保険申請件数やフィラデルフィア連銀景気指数など他の指標も、堅調な経済状況を浮き彫りにしている」と話した。ただ、「全体的な成長には好材料だが、利下げを正当化するのが難しくなる」と述べた。
ルネサンス・マクロ・リサーチのニール・ダッタ氏は、小売売上高が予想を上回ったものの、消費者物価の上昇を考慮すると、楽観的な見方はやや控えるべきだと話した。
ブルームバーグ・エコノミクスのエステル・オウ氏は、複数の財カテゴリーでの価格上昇を踏まえると、回復の大部分が価格上昇によるものか、それとも堅調な需要によるものかを明確に区別するのは困難だと指摘。「低い企業センチメントと他の選択的サービス支出の弱さを考慮すると、前者の方が可能性が高いと考える」と続けた。
米国債
米国債市場では短期債が下落した。長期債はほぼ変わらず
短期金融市場が織り込む年内の利下げ回数はなお2回未満となっている。
| 国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
|---|---|---|---|
| 米30年債利回り | 5.01% | -0.4 | -0.08% |
| 米10年債利回り | 4.45% | -0.4 | -0.09% |
| 米2年債利回り | 3.90% | 1.3 | 0.33% |
| 米東部時間 | 16時45分 |
サンフランシスコ連銀のデーリー総裁は、金融当局が年内2回の利下げを計画することは合理的な判断だと述べ、あまり長く待つべきではないと強調した。米連邦準備制度理事会(FRB)のクーグラー理事は、関税の影響でインフレは加速に向かうとして、「当面は」金利の据え置きが適切だと述べた。
外為
外国為替市場ではドル指数が上昇。小売売上高が予想を上回り、新規失業保険申請件数が予想を下回ったため、ドル買いが優勢になった。
対ドルの円相場は、米経済指標の発表直後に1ドル=149円09銭まで下げた。その後は148円台で推移した。
| 為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| ブルームバーグ・ドル指数 | 1207.58 | 3.47 | 0.29% |
| ドル/円 | ¥148.58 | ¥0.70 | 0.47% |
| ユーロ/ドル | $1.1597 | -$0.0044 | -0.38% |
| 米東部時間 | 16時45分 |
ノムラ・インターナショナルの宮入祐輔氏は「市場は、米関税が国内経済に打撃を与えることを予想しており、これが最近までドル安が続いた一因だ」と指摘。「しかし、米経済指標は成長鈍化の明確な兆候を示しておらず、その予想は『希望』に近いものになりつつある」と述べた。

原油
ニューヨーク原油相場は反発。供給見通しにひっ迫の兆候が出る中、米株式相場の上昇を好感した。
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は一時、1.7%上昇する場面もあった。予想より強い米経済統計を受けて金融市場全般が堅調に推移し、コモディティー(商品)には典型的な強気シグナルと受け止められた。
供給面の材料としては、米国の原油在庫が先週減少した。イラクでは北部クルド人自治区の油田がドローン(無人機)で攻撃され、日量約20万バレルに相当する生産が失われた。シェブロンは米最大の油田で生産が頭打ちに近づいていることを明らかにした。
ゴールドマン・サックスの石油調査責任者、ダーン・ストライフェン氏は「在庫は世界的にかなり大きく積み上がってきたものの、米国のように価格を左右する国では依然としてかなり低水準だ」と指摘。市場の関心は「供給の下向きリスク」に移ったと述べた

イラクはクルド人自治区に2023年3月以来中断していた石油輸出の再開を許可した。これを受けて、原油相場の上昇は抑制された。関係者によれば、クルド人自治区政府はイラク国営石油販売公社(SOMO)に日量23万バレルを供給する見込みだ。
供給懸念は現在逆ざやとなっている先物市場にも反映されている。
米国の留出油在庫は先週増加したものの、この時期としてはなお1996年以来の低水準にある。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物8月限は、前日比1.16ドル(1.75%)高い1バレル=67.54ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント9月限は1ドル(1.5%)上昇し69.52ドル。
金
ニューヨーク金は反落。経済の底堅さを示した最新のデータや、パウエルFRB議長の進退が市場の関心を集めた。
前日の金融市場は、トランプ米大統領がパウエルFRB議長を近く解任するとの政府高官発言に動揺した。大統領はその後、解任の可能性は低いと述べた。FRB議長が解任されれば、FRBの独立性に疑義が生じ、結果として安全資産としての金の投資妙味を押し上げる。
関連記事:トランプ氏、FRB議長解任「可能性低い」-不正行為あれば別と含みも
年初からの金相場急伸は、貿易の緊張と地政学リスクのほか、金を裏づけとした上場投資信託(ETF)への資金流入、中央銀行による購入が支えてきた。市場の関心は米政府の貿易政策に向けられている。トランプ大統領は10-15%の関税率を通知する書簡を150カ国余りに送付すると述べている。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時40分現在、前日比9.29ドル(0.3%)安い1オンス=3337.84ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は13.80ドル(0.4%)下げて3345.30ドルで引けた。
原題:S&P 500 Hits Record on Signs Economy in Good Shape: Markets Wrap(抜粋)
Dollar Resumes Gains on Solid US Data; Aussie Lags: Inside G-10
Oil Rises on Supply Disruption Concerns as Equities Edge Higher
Gold Declines as Traders Assess US Data, Fed Chair Future
