四囲の情勢から判断して参院選で過半数割れを招いた石破総理は、今月下旬から来月初旬に欠けて退陣を表明する。昨日の記者会見で表明した国政の停滞回避は単なる“口実”。8月1日に25%の関税付与を確認した段階で、辞意を表明する。早ければ来週中か。昨日、赤沢経済再生担当大臣が訪米した。8回目だ。同氏の最後の役割は、税率に変更がないことを確認するだけ。これを受けて総理退陣の手続きが水面下で静かに始まる。どうしてこうなるのか。トランプ氏を取り巻く現在の情勢を勘案すれば、こうならざるを得ない。一番大きいのはトランプ氏に、妥協の余地がなくなっていること。その原因はエスプタイン事件。MAGA陣営の結束を誇ってきた問題が、ブーメランのようにトランプ氏に襲いかかっているのだ。
エプスタイン事件とは、米国の大富豪・エプスタイン氏にまつわる児童に対する性的虐待事件。エプスタイン自身は拘束中に死去しているが、彼が残したリストが存在しているとされる。このリストには政財官界やエンタメ業界の大物が名を連ねているとされる。W S Jはこのリストにトランプ氏の名前があると先日報道した。一方で司法省は先月、「顧客リストは発見されなかった」との捜査報告書を発表している。トランプ氏もこれを容認した。これに対してMAGA陣営の強硬派が反発、苛立ったトランプ氏は「彼らの支持はいらない」と口走ってしまった。団結を誇っていたMAGAに亀裂が走った瞬間である。真相解明を求める強硬派、問題の沈静化を図ろうとする大統領。日本流にいえば裏金問題の発覚である。真相は藪の中だが、政治的大問題に発展してしまったのだ。運の悪いことにトランプ氏の健康問題も浮上した。
ウクライナ、ガザをめぐる和平交渉もイランとの対話も、トランプ氏の思惑通りには進んでいない。日本の関税問題に時間を割く余裕はまったくない。譲歩すればTACO論争が再燃する。米側の責任者であるベッセット財務長官は先週、大阪万博訪問を名目に来日した。関税交渉はなし。おそらく「しばらく残留せよ」と指示したのではないか。岸田前政権同様、米国の意向に服従する石破政権。財務長官は昨日、「関税交渉は8月1日以降も続く」とわざわざ表明した。これは次期政権に対するメッセージだろう。かくして石破政権は何の実績も残せないまま、衆参両院で過半数割れに寄与した政権として歴史に名を残す。国民民主党と参政党の躍進で日本の政界は、「新しい政治」に向けてちょっとだけドアをこじ開けた。何もしない、何もできなかった石破氏、日本の政治に新たな可能性をもたらしたその一点で、後世の評価を受けるのかもしれない。
