▽米財務長官、関税交渉急がず「質重視」 対日協議「米国益優先」<ロイター日本語版>2025年7月22日午前 6:41 GMT+9

Andrea ShalalSusan Heavey

米財務長官、関税交渉急がず「質重視」 対日協議「米国益優先」

[ワシントン 21日 ロイター] – ベセント米財務長官は21日、米政府が貿易相手国・地域と進めている関税交渉について、タイミングよりも質を重視していると述べた。日本については、日本の国内政治よりも米国民にとって最良の取引を得ることに関心があると語った。

ベセント長官はCNBCのインタビューで「ディール(取引)を得るために急ぐつもりはない」と言及。8月1日としている期限が延長される可能性があるかとの質問に、トランプ大統領が決定するとした上で、「大統領が何を望むか見守る必要がある。8月1日に(設定されている関税に)戻ることになれば、(交渉相手国・地域に)より良い協定案を提案するよう、一段の圧力がかかることになる」と語った。

中国については、「極めて近い将来」に協議が行われる可能性があると言及。「貿易は良い状況にあり、今は他のことについて話し始めることができると考えている。残念ながら中国は制裁の対象になっているイラン産原油とロシア産原油の主要な輸入国だ」と述べた。また、「中国が実施する必要のあるリバランシング(再均衡化)についても協議することができる」と語った。

このほか、米国がロシア産原油を輸入する国に「2次関税」を課した場合、欧州にも追随するよう呼びかけると意向を示した。

ホワイトハウスのレビット報道官は、トランプ氏が22日にフィリピンのマルコス大統領とホワイトハウスで会談する際、貿易について協議する可能性があると述べた。

また、米政権は世界各国との関与を継続しているとし、8月1日までにさらなる通商合意を発表するか、もしくは関税率を通知する書簡をさらに送付する可能性があると述べた。詳細には踏み込まなかった。

こうした中、EUは米国との貿易協議で受け入れ可能な合意の可能性が薄れつつある中、米国に対するより広範な対抗措置を検討しているとEU外交筋が明らかにした。合意に至らない場合には米国のサービス業を標的にしたり、公共入札へのアクセスを制限したりできる「反威圧」措置の発動を検討する動きがドイツを含む加盟国の間で広がっているという。

ドイツのメルツ首相は記者会見で「関税の水準を巡る交渉は現在、非常に激しい状況だ」とし、「米側に対称的な関税協定に同意する意思がないのはかなり明白だ」と述べた。

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▽コラム:裏目に出るトランプ氏のロシア「2次関税」<ロイター日本語版>2025年7月16日午後 6:26 GMT+9

Yawen Chen

Yawen Chen

コラム:裏目に出るトランプ氏のロシア「2次関税」

[ロンドン 15日 ロイター BREAKINGVIEWS] – トランプ米大統領がロシアの輸出品を購入した国々に100%の関税を課すと脅しをかけたのは、彼らしい大胆な動きだ。ロシア経済を支えている国々、特に中国とインドを標的にすることで、プーチン・ロシア大統領にウクライナとの停戦合意を迫るという発想だ。だが実際に関税を実行すれば、物価上昇を通じて米国に跳ね返ってくる。より良いアプローチは、ロシア産原油に制裁を科すことだ。

トランプ氏の対ロシア強硬姿勢は、この2カ月で強まってきた。この間プーチン氏はウクライナ、特に首都キーウ住宅地への爆撃を激化した。西側諸国による対ロシア制裁にもかかわらず、ロシア経済は予想されたよりも底堅く推移している。これは主に中国とインドへの石油輸出を継続しているおかげだ。エネルギー・クリーンエア研究センター(CREA)によると、6月だけでもインドはロシア産原油を36億ユーロ相当、中国は35億ユーロ相当それぞれ購入した。

この供給を遮断することが戦争終結の鍵となる。しかしトランプ氏は、ロシア産原油の買い手だけでなく米国自体にも打撃を与える可能性の高い「2次関税」という粗暴な手段に出ようとしている。問題は、中国とインドがロシア原油の最大の買い手であり、2022年12月から25年6月末までに同原油の約85%を購入する一方、両国が米国の主要な貿易相手国でもある点だ。中国製の電子機器やインド製の医薬品に100%の関税を課せば、両国経済に打撃を与えるだけでなく、米国の消費者物価を押し上げる。さらに悪いことに、報復措置も招きかねない。

そこで効果を発揮する可能性があるのは、ロシアと取引する企業を標的とした2次制裁だ。米政府は、ドル建ての国際決済システムを通じてインドと中国に圧力をかけることができる。これには前例があり、筆頭は対イラン制裁だ。こうした措置は、厳格に標的を絞るとともに、他の同盟国も外交的圧力に加われば、銀行、保険会社、運輸企業などがロシアの石油取引を助けるのを抑止しつつ、中国もしくはインドとの全面的な経済戦争を回避できる可能性がある。

極めて重要なのは、これがロシアを締め付けることだ。日量500万バレルというロシアの原油輸出に直接打撃が及ぶだろう。トランプ氏には原油価格の下落という味方もある。石油輸出国機構(OPEC)が今年の減産措置を解除しつつあるため、原油価格は1バレル当たり65ドル前後まで下落している。

今のところ投資家はトランプ氏の計画に半信半疑だ。同氏は関税に50日の猶予期間を設けており、「相互関税」で見られた彼の戦術に照らせば、この期間は延長される可能性もある。原油先物価格は14、15の両日に下落した。トランプ氏が警告を真に受けてほしいのであれば、実際に痛手をもたらす部分に圧力をかける必要があるだろう。

Bar chart showing the countries that bought Russia’s fossil fuels after EU bans
Bar chart showing the countries that bought Russia’s fossil fuels after EU bans

●背景となるニュース

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(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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