▽日本との合意、ベッセント氏とラトニック氏が自賛-対EU協議控え<bloomberg日本語版>2025年7月23日 21:45 JST

Daniel Flatley、Annmarie Hordern

  • 日本との合意、「革新的な」資金提案が決め手-ベッセント氏
  • 日本の提案は自分が発案、投資利益の90%は米国に-ラトニック氏

トランプ政権の貿易交渉を担当する閣僚2人が、日本との合意にこぎ着けた自らの交渉アプローチを自賛した。8月1日の期限を前に交渉が続く欧州連合(EU)にとって、好例になるかもしれないとの認識を示した。

  ラトニック米商務長官は23日、ブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、米国に数千億ドルの投資を約束して合意を成立させた日本は、EUにとってモデルに「なり得る」と語った。

  ラトニック氏は「欧州が米国に1兆ドルの投資を行うことはないだろう」との見方を示しつつ、日本のように米国の自動車基準を欧州が受け入れ、米国製品の購入を増やせば、より好意的な合意を確保する助けになるだろうと主張。

  「欧州がそれを受け入れるなら」、「米国には数千億の輸出機会が生じ、トランプ大統領を動かすだろう」と語った。

  ベッセント財務長官も同日、ラトニック氏の前にブルームバーグテレビジョンのインタビューに応じ、EUが日本と同様の貿易合意をトランプ大統領と結べるかについて明言を避けた。日本の合意は、革新的な資金供給スキームによって実現したものだと強調した。

  「日本が15%の関税率を獲得できたのは、同国が革新的な資金供給スキームを提供する意思を示したからだ」とベッセント氏は語った。

  日本は当初、25%の関税を課される見通しだったが、自動車など本来25%の製品関連関税が適用される品目を含め、15%の税率で合意にこぎつけた。

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  合意には、米国への投資を目的とした5500億ドル(約80兆4000億円)規模のファンド設立も盛り込まれている。

  「日本側は、日本と米国のパートナーシップという構想を持ち込んできた。米国内の大型プロジェクトに対して、出資や信用保証、資金提供を行うという内容だ」と、ベッセント氏は語った。

  また、今回約束された対米直接投資は「全て新規の資本」だとも述べた。

  ベッセント氏はEUが約1000億ユーロ(約17兆2000億円)相当の米国製品に対して30%の報復関税を準備しているとの報道に言及し、過度に懸念すべきではないとの見方を示した。

関連記事:EU、一部の米製品に30%の関税賦課へ-貿易交渉で合意不成立なら

  「交渉戦術だと思う。もし自分がEUの立場だったとしても、同じことをするだろう」と語った。

  米国との協議の中でEU側が何か革新的な提案を出してきたかとの問いには「まだないが、交渉は以前より順調に進んでいる」と答えた。

自分の発案

  ラトニック氏は、日本が打ち出した投資スキームは自身が1月に考え出したものだと主張。「トランプ氏が望む形で日本が市場を開放することはあり得ない」ため、その代替案としてファンド形式の投資が浮上したという。

  石破茂首相が投資の一部は融資保証の形を取ると述べたことに対し、ラトニック氏は「出資と融資、融資保証だ」と説明。投資は日本企業が行うプロジェクトを特に対象にするわけではないと語った。

  「これはまさに、米国が後発医薬品の工場を建てたい」、あるいは半導体、重要鉱物の施設を建てたいという際に、日本が資金を提供するということだと、ラトニック氏は語った。

  日本は「銀行家(バンカー)であり、運営事業者ではない」との認識を示し、プロジェクトからの「利益は米国の納税者に90%、日本側に10%が分配される」とも述べた。

EUには問題

  EUとの交渉について、ベッセント氏は「かなりの前進を遂げている」としつつ、27カ国から成るEUには意思決定の難しさがあるとの見解をあらためて示した。これに対し、1990年以降に52回訪れたという日本は、「一つの実体として動いている」と表現した。

  また、欧州が対米貿易で黒字を抱えていることから、「貿易摩擦が激化した場合に、打撃が大きいのは常に欧州の側だ」と述べた。

  中国との協議については「中国に関する状況は現在、非常に良好で、より大きな議題へと移行を開始できる段階にある」と発言。米中の次回協議は28、29両日にストックホルムで行われる。

  関税引き上げ措置を一時停止している現行の休戦合意は、8月12日に期限を迎えるが、ベッセント氏は「90日単位で延長する可能性があると思う」とし、「双方が姿勢を軟化させた。米国は中国と定期的に会合を開く非常に良い流れに入れると思う」と語った。

原題:Bessent, Lutnick Hail Japan Finance Pledge as EU Talks Loom (1)、Japan to Finance Projects in US as Part of Deal, Lutnick Says(抜粋)

▽日本が「数十億ドル相当の軍事装備購入」とトランプ氏、貿易協定合意を称賛<ロイター日本語版>2025年7月24日午前 6:31 GMT+9

日本、米ボーイング機100機購入や米産コメ輸入増で合意=ホワイトハウス

[ワシントン 23日 ロイター] – トランプ米大統領は23日、日本との貿易協定を巡り「日本が史上初めて米国に市場を開放した」と自身の交流サイト「トゥルース・ソーシャル」に投稿した。また、「日本が数十億ドル相当の軍事装備などを購入することに同意した」とも述べた。

米ホワイトハウス当局者は、日本が22日に米国と締結した貿易協定の一環で、ボーイング製航空機100機を購入し、米国産コメの輸入量を75%増やすことで合意したと明らかにした。

合意には日本が農産物など80億ドルを購入するほか、米企業との防衛費を年間170億ドルと、これまでの140億ドルから増額することも盛り込まれた。

同当局者は日本との貿易協定について、医薬品や半導体への関税率については別途交渉するが、他の貿易相手国より悪くなることないとの見方を示した。

日本の対米輸出の4分の1以上を占める自動車部門への関税は、従来の27.5%から15%に引き下げられる。

トランプ大統領は、日本との貿易協定について「自動車やSUV(スポーツ多目的車)、トラック、そして全ての製品だ。農産物や、これまでずっと『ノー』とされてきたコメも対象だ」と指摘。「日本の市場開放は関税と同じくらい大きな利益をもたらす可能性があるが、これは関税の力のみによって得られた成果だ」と述べた。

ベセント米財務長官はブルームバーグTVのインタビューで、自動車関税の15%への引き下げについて、日本が「革新的な資金調達メカニズムを提供する意思があったからだ」とし、これは他国が真似できるとは思えないと語った。

▽日本の対米投資、半導体や天然ガスなど焦点=ホワイトハウス<ロイター日本語版>2025年7月24日午前 6:42 GMT+9

日本による対米投資、半導体や天然ガスなど焦点=米ホワイトハウス

[ワシントン 23日 ロイター] – 日米が合意した経済協定について、米ホワイトハウスは23日、日本による米国への投資は、半導体の設計と製造のほか、天然ガスなどの部門に一部焦点が当てられるとの見通しを示した。

トランプ米大統領は22日、日本との貿易交渉で大規模な合意を締結したと明らかにし、日本に対する相互関税は15%になると表明。日本が米国に5500億ドル(約80兆円)を投資するとも明らかにした。

ホワイトハウス によると、 日本は米国産コメの輸入を即時に75%増加させ、輸入割当枠も大幅に拡大する。このほか、米国産のトウモロコシ、大豆、肥料、バイオエタノールのほか、環境に優しい航空燃料などを含む80億ドル相当の物品を輸入する。

また、日本は米国製の商用航空機の輸入も確約しているとし、これには米航空機大手ボーイング(BA.N), opens new tab製の航空機100機も含まれるとした。

このほか、日米はアラスカ産液化天然ガス(LNG)を巡る新たな契約の検討も進めるとした。

ホワイトハウスは5500億ドルの投資資金について、トランプ氏の裁量で支出されると説明。レビット報道官は、当初4000億ドルだった投資表明額が交渉で引き上げられたとし、エネルギー、半導体、重要鉱物、医薬品、造船などの主要産業に重点を置くことになると述べた。