▽【米国市況】株は反落、高値警戒感-7年債入札の需要好調で金利低下

Rita Nazareth

  • S&P500種7日ぶり反落、入札の応札倍率は2012年以来の高水準
  • 円は対ドルで前日終値近辺、148円半ば-原油は対ロシア圧力で続伸

29日の米株式相場は下落。高水準のバリュエーションに対して懸念が広がり、米中による関税一時停止延長への期待を打ち消した。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数6370.86-18.91-0.30%
ダウ工業株30種平均44632.99-204.57-0.46%
ナスダック総合指数21098.29-80.29-0.38%

  前日に最高値を更新していたS&P500種株価指数は、朝方こそ上昇していたものの失速。7営業日ぶりの下げとなった。

  ベッセント米財務長官は、米中が関税導入の停止期限を延長する条件を巡り協議を継続すると述べた。期限をさらに90日間延長するのも一つの選択肢だとの見方を示し、トランプ大統領が最終判断を下すと説明した。

関連記事:米中、関税停止期間延長の協議継続で合意-ベッセント財務長官 (1)

  期限が延長される可能性があるとの報道に米株式相場がポジティブに反応しなかったことは、関税交渉が相場を動かす材料としては徐々に効力を失いつつあることを示す。

  週内にはこのほか、連邦公開市場委員会(FOMC)会合や雇用統計に加え、大手ハイテク企業の決算発表も控える。

  ペッパーストーングループの調査ストラテジスト、ディリン・ウー氏は「投資家は現在、貿易合意を過度に解釈することよりも、経済・政策見通しを裏付けるハードデータに重点を置いている」と述べた。

  この日発表された米経済指標では、7月の消費者信頼感指数が改善。経済全般や労働市場の先行きに対する懸念が和らいだことが背景にある。6月の求人件数は3カ月ぶりに減少したが、引き続き労働需要が全般的に安定していることを示唆する水準で推移した。

  BMOキャピタル・マーケッツのイアン・リンジェン氏は「全般的に一連のデータは強弱まちまちで、相場の動きやマクロ経済見通しに実質的な変更を迫るような内容ではなかった」と述べた。

  足元でバリュエーションへの懸念が高まっているが、HSBCホールディングスやモルガン・スタンレー、UBSグループは米株式相場に対する長期的な強気見通しを維持している。

  UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのウルリケ・ホフマン・ブハーディ氏は「向こう12カ月に株式は上昇すると見込んでいるが、今後数週間については相場が大きく変動する可能性に留意すべきだ」と指摘した。

  ゴールドマン・サックス・グループのチーフ・グローバル株式ストラテジスト、ピーター・オッペンハイマー氏は、米政府が主要な貿易相手国・地域と合意に達したとしても、関税は株価に大きな打撃を及ぼし得ると指摘。米国がリセッション(景気後退)を回避した場合でも、バリュエーションが割高なため、他の市場に分散投資を続けるのが賢明だと述べた。

米国債

  米国債相場は上昇(利回り低下)。この日実施された7年債入札で需要の強さが見られ、上げが加速した。20年債と30年債の利回りはいずれも約10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下した。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.86%-9.7-1.96%
米10年債利回り4.32%-8.7-1.98%
米2年債利回り3.87%-5.9-1.50%
  米東部時間16時52分

  7年債入札(発行額440億ドル)の最高落札利回りは4.092%。入札前取引(WI)水準は4.118%だった。応札倍率は2.79倍と、2012年以来の高水準となった。

  入札を受け、10年債利回りは一時4.32%と、今月10日以来の低い水準を付けた。

  ナティクシス・ノースアメリカの米金利戦略責任者、ジョン・ブリッグス氏は、四半期定例入札の公表やFOMC会合、雇用統計などリスクイベントが週内に控える中で、米国債相場が大きく上昇したことは「やや驚きだった」と述べた。

  7年債入札ではプライマリーディーラーの落札比率が4%にとどまり、需要の強さが示唆された。これは2004年以降に公表された普通国債の入札データで過去最低。ただ、一部のインフレ連動債入札ではこれを下回ったことがある。

  30日に米財務省が詳細を公表する四半期定例入札では、トランプ政権が長期債利回りを抑制するためにどのような方針を示すかが注目されている。

関連記事:米四半期定例入札、30日詳細公表へ-中・長期債ガイダンスに注目 (1)

外為

  ニューヨーク外国為替市場でドル指数は4営業日続伸。ユーロは前日に続き、主要通貨の中で対ドルでの下げが大きかった。

  円はドルに対して小幅に上昇し、1ドル=148円台半ば。前日終値を挟んだ動きに終始した。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1209.981.860.15%
ドル/円¥148.47-¥0.06-0.04%
ユーロ/ドル$1.1546-$0.0043-0.37%
  米東部時間16時52分

  ブルームバーグ・ドル・スポット指数は一時、約1カ月ぶりの高値を付けた。

  しかし、スコシアバンクのストラテジスト、ショーン・オズボーン、エリック・セオレ両氏は「ドル上昇の勢いは鈍りつつあり、失速しているかもしれない」とリポートに記した。

  「明日のFOMC会合では、少なくとも2人の連邦準備制度理事会(FRB)理事から、利下げを支持する一段と強い反対意見が表明されるかもしれない。8月1日の米雇用統計では、非農業部門雇用者数の市場予想が危険なほど10万人増の水準に近づいている」と指摘。

  「ドルに対する短期的なファンダメンタルズの逆風は、向こう数日にもう少し強まる可能性がある」と述べた。

  シティグループのアナリストらは「7-9月(第3四半期)もドル売りが続くとすれば、それは弱い米労働市場データから生じる公算が大きい」と指摘。「1日の雇用統計を前に、ドルへのショート(恐らく対ユーロまたはスイス・フラン)再開を検討する可能性がある」と述べた。

  ユーロは4営業日続落。欧州連合(EU)と米国の関税合意でEU側が受けるとみられる経済的影響への懸念が背景にある。

  一時は対ドルで0.6%安の1ユーロ=1.1519ドルを付けた。前日も1.3%下げていた。

原油

  ニューヨーク原油先物相場は続伸。トランプ大統領がロシアに対してウクライナと10日以内に停戦で合意するよう求め、応じなければ経済制裁を科す方針を示したことが材料視された。

  ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)と北海ブレンドはいずれも6月以来の高値で引けた。

  トランプ氏は訪問先のスコットランドからワシントンに戻る大統領専用機エアフォースワン内で記者団に発言。追加の対ロ制裁が原油市場に与える影響について懸念はないかと問われると、「全く心配していない。米国には原油がたくさんある。さらに増産すればいいだけだ」と同氏は答えた。

関連記事:トランプ氏、ロシアに10日以内の合意迫る-ウクライナ停戦巡り圧力

  BOKファイナンシャル・セキュリティーズのシニアバイスプレジデント、デニス・キスラー氏は「今回の新たな期限は多くのアナリストにとって、予想外だった。実際に適用されれば、ロシア産原油・燃料の世界市場への供給が逼迫(ひっぱく)する可能性がある」と述べた。

  ロシア大統領府はこれより先、トランプ氏の警告を踏まえた上で、プーチン大統領が方針を変更する可能性は低いとの見解を示していた。

関連記事:沈黙のロシア、トランプ氏が短縮したウクライナ停戦合意期限に無反応

Oil Rallies After Trump Pressures Putin for Ukraine Truce | WTI climbed to trade above $67 a barrel

  トランプ氏の警告は、EUによる新たな一連の対ロシア制裁に続くものだ。市場はまた、各国が米国との関税交渉で8月1日の期限までに合意をまとめられるかどうか、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成するOPECプラスの次回会合にも注目している。OPECプラスは同会合で9月の供給政策を決定する見通し。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物9月限は前日比2.50ドル(3.75%)高の1バレル=69.21ドル。ロンドンICEの北海ブレント9月限は3.5%上げて72.51ドルで引けた。

  金相場は反発。市場は30日のFOMC政策決定や、週内に予定される一連の重要な経済指標発表に備えている。

  FOMCは政策金利を据え置くと予想されているが、一部のメンバーは据え置きに反対票を投じる可能性もある。金利低下は、利息を生まない金にとって追い風となる傾向がある。

  ペッパーストーン・グループのリサーチストラテジスト、ディリン・ウー氏は「関税協議、FOMCの金利決定、米雇用統計という3大イベントを控え、金価格のボラティリティーが一段と高まりそうだ」とリポートで指摘。「金は現在、テクニカル要因とファンダメンタルズ要因のはざまで岐路に立たされている」と続けた。

  金スポット価格はニューヨーク時間午後3時38分現在、前日比11.02ドル(0.3%)高の1オンス=3325.63ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は14.40ドル(0.4%)上げて3381.20ドルで引けた。

原題:S&P 500 Snaps Six-Day Winning Run as Bonds Climb: Markets Wrap

US Treasuries Extend Gains as Auction Shows ‘Surprise’ Demand

US 7-Year Auction Stops Through, Produces Strong Demand Metrics

Dollar Gains Ahead of Fed; Euro Among Laggards: Inside G-10

Oil Prices Jump After Trump Ratchets Up Truce Pressure on Russia

Gold Steadies as Investors Clear Decks for Fed, Trade Talk(抜粋)