ガザ地区の食糧難はすでに「危機的状況にある」、メディアの多くがそう伝えている。国連のグテレス事務総長は29日、ガザ地区に「食料、水、医薬品、燃料を滞りなく届ける必要がある」(ロイター)と、大規模に支援を拡大する必要性を訴えた。「ガザ地区のパレスチナ人は、大規模な人道的大惨事に耐え続けている。これは警告ではなく、目の前で起きている現実だ」(同)と強調した。飢餓という言葉は使っていないが、実質的には飢餓状態にあるとの認識を示したものだ。トランプ大統領も「本当の飢餓がある」(BBC)と語っている。これに対してネタニヤフ首相は「イスラエルがガザで飢餓政策を取っているかのように言われているが、明らかなうそだ」(28日付、読売新聞Web版)と強調。「ハマスが人道支援物資を奪い、物資を供給していないとイスラエルを非難している」(同)と主張している。

ガザが飢餓状態にあるのか、これは極めてセンシティブは問題である。個人的には連日報道されている情報やムービー、写真等を見て「飢餓状態」との認識が頭の中で既定事実化している。本当にそうなのかと疑うこともない。だからトランプ氏の発言を見て、「この人も時には正しいことを言う」と納得する。反対にネタニヤフ氏の主張は「事実を隠蔽するレトリック」と無視してしまう。昨日国連は、「世界の飢餓人口、2024年に減少-食品価格上昇で貧困国には打撃」と題した報告書を発表している。ガザの飢餓状態と直接関係はないのだが、事実に即した分析をしている。このニュースを見ながら、ガザの飢餓報道にバイアス報道(偏向報道)はないのか。改めて各種ニュースを見直してみた。確証はないのだが、左派系メディアは「飢餓」を強調し、保守系メディアは飢餓ということば使いに慎重な印象を受けた。

事実関係ははっきりしない。ただ、飢餓があるとする報道には大半のメディアが痩せ細って母親に抱き抱えられている子供や、食料の配給所に群がる子供達の写真が添付されている。これを見れば大半の視聴者は飢餓の存在を認識せざるを得なくなる。反対にネタニヤフ氏が主張するハマスの略奪については、証拠となるムービーや写真はない。これも同氏のレトリックを否定する要因になっている気がする。戦争という異常な状況下で派生するセンシティブな問題。メディアも事実を確認しているわけではないだろう。バイアスがあるとすれば弱者や子供、貧困者などに対する同情めいた感情だろう。報道には常にバイアスがかかるが、貧困者を対象とする報道は特にそうだ。イスラエルは批判の対象となるが、ハマスは常にメディアの批判の対象外になっている。これもバイアスのせいか・・・。