FOMCは今回も利下げを見送った。パウエルF R B議長は次回9月会合について「何も決まっていない」と、利下げに後ろ向きな姿勢を示している。これに対して」トランプ大統領は改めて「利下げを要求」と報道されている。性懲りも無く利下げ要求が続いているわけだ。この間、ECBは24日に開いた理事会で8会合ぶりに利下げを見送った。逆に言えば前回までに7回連続で利下げした。金融政策は各国の事情によって変更される。これも一種の中央銀行の独立性だろう。関税はそうはいかない。米国が貿易赤字解消を目的に関税を引き上げようとすれば、たとえばEUや中国のように報復関税を準備する国がある。主権を持った国々の交渉だから、報復を検討するのはある意味当然の“権利”だろう。日本は報復より「粘り強い交渉」に活路を見出そうとする。米国の保護のもとで安穏に生活しているわけだがらこれもしかたない。
関税と金融政策は別物である。ごっちゃにして議論しても仕方ない。それはわかっている。だが実体経済への影響となれば、どちらに重きがあるのだろう。これも各国の事情によって異なる。だから一律にどっちだとはいえない。たとえば日本。植田日銀総裁は利上げを軸に金融政策を展開している。国会は減税か給付かで争っている。減税か給付かの判断はこの際置くとして、日常生活への影響は政策金利の引き下げ、引き上げより、減税あるいは給付の方が圧倒的に大きい。米国には日本の消費税のような税金がないから、利下げか減税かの議論は起こらない。代わりにトランプ大統領は所得税減税を推進して、国民の購買意欲を刺激している。これが米国経済の堅調さを支えている。その代わりに財政赤字は拡大する。経済が堅調に推移する中でトランプ氏は、執拗に利下げを要求している。その根拠はなんだろう。財政負担の軽減にあるのはないか。
デフレ脱却が建前だった異次元緩和。日本政府と日銀の“本音”は、財政負担(利払い費)の軽減だったのでは?利下げは国民の金利負担軽減より国の財政負担軽減に役立った。日本も米国も金融資産は潤沢にある。日本は預貯金、米国は株関連資産が中心だが、資産サイドに余裕がある。日本は利上げした方がお金の流通は活発になったはずだ。だが、政府・日銀は異次元緩和という逆の選択をした。結果的にデフレを長引かせた。資産は潤沢だが内訳を見ると貧富の差が大きい。こいう国は利上げと同時に、大多数の低所得者を対象とした減税が必要になる。与野党は昨日、ガゾリン税の減税で一致した。部分的な減税に過ぎないが、世界に比べ周回遅れだった国がようやく動き出した。その意味は大きい。先頭集団に追いつくにはまだ相当時間がかかるだろう。金融政策も大事だが、問われているのは財政政策だ。
