▽トランプ氏の労働統計局長解任、政権高官が「正しい」と擁護<ロイター日本語版>2025年8月4日午前 7:15 GMT+9

Doina ChiacuJasper Ward

トランプ氏の労働統計局長解任、政権高官が「正しい」と擁護

[ワシントン 3日 ロイター] – トランプ米大統領による労働省のマッケンターファー労働統計局長の解任に批判が集まる中で、国家経済会議(NEC)のハセット委員長と通商代表部(USTR)のグリア代表がトランプ氏の措置を擁護する発言を行った。

 1日に発表された7月雇用統計で過去2カ月分の雇用者数の伸びが大幅に下方修正されたことを巡り、政治的に操作されたと根拠のない主張をして不満を示したトランプ氏は、マッケンターファー氏の解任を命令。元労働統計局長のウィリアム・ビーチ氏が「統計の信頼が損なわれる。局長が雇用者数を操作するなどあり得ない」と述べるなど各方面から批判が殺到した。

 労働省統計局は過去の雇用者数の下方修正について、企業や政府機関から追加的な回答を受け取り、季節要因を再計算した結果だとしている。

 こうした中でハセット氏は2日のFOXニュースの番組で、5月と6月の雇用者数が合計で25万8000人も下方修正されたのは重大な懸念要素だと指摘した上で「労働省統計局を真新しい目で見る必要があると思う。状況を刷新できる誰かの目線で」と語り、トランプ氏が新しいトップの起用を求めたのは正しいと強調した。

 またグリア氏はCBSテレビの「フェース・ザ・ネーション」で、雇用者数が常に改定されるのは事実だと認めつつも、「時には修正が極端な形になる」と述べ、トランプ氏が雇用統計のあり方を「本当に懸念している」と明かした。

▽雇用統計後の局長解任は「有害」、トランプ氏に選ばれた前任者が非難<bloomberg日本語版>2025年8月4日 3:16 JST

Maria Paula Mijares Torres、Catherine Lucey

  • トランプ氏が政権1期目に局長に起用したビーチ氏がCNNで発言
  • 米政府はデータ収集の改善を-BofAモイニハンCEO

トランプ米大統領が労働統計局(BLS)局長を解任したことについて、前任者は3日、根拠のない措置だと非難した。米経済の重要データに対する信頼を損なう行為だと警鐘を鳴らした。

  トランプ氏が政権1期目にBLS局長に起用したウィリアム・ビーチ氏は、CNNの番組で「非常に有害だ」と述べた。

  7月の雇用統計が市場予想を下回り、5、6月分が大幅に下方修正されたことを受け、トランプ氏はマッケンターファーBLS局長を解任した。

関連記事:トランプ氏、労働統計局長を解任-雇用統計を「政治操作」と非難

  今回の統計を「でっちあげ」と呼んだトランプ氏による局長解任について、エコノミストや議員らから非難の声が上がっている。

  ビーチ氏は「今回の解任に正当な理由があるとは到底思えない」とし、「統計制度を大きく傷つけ、BLSへの信頼性を損なう」と述べた。同氏は2024年1月にマッケンターファー氏と交代した。

Ivanka Trump And Wilbur Ross Co-Chair American Workforce Policy Advisory Board
ウィリアム・ビーチ氏 2020年Photographer: Al Drago/Bloomberg

  ビーチ氏は、BLSのデータが20-30年前に比べて精度を増していることが複数の研究で示されていると発言。速報値の修正を含めて正確性は高まっていると述べた。

  また、BLSの職員は「想像でき得る限り最も忠実な米国民の部類にある」とし、それがBLSを「世界最高の統計機関」にしていると語った。

データ収集の改善を

  バンク・オブ・アメリカ(BofA)のブライアン・モイニハン最高経営責任者(CEO)は3日にCBSの番組で、不信感を招くような修正を避けるため、米政府はデータ収集を改善する必要があると発言。

  「われわれは消費者や企業の実際の動きを注意して見ている」とし、「このデータは他の方法で得られると思う。重点を置くべきはそこだ」と述べた。解任に関する政治的な動きには言及しなかった。

  マッケンターファー局長は上院で賛成86票、反対8票で承認されていた。当時上院議員だったバンス副大統領も賛成票を投じていた。

  ハセット米国家経済会議(NEC)委員長はNBCの番組で、雇用データの大幅下方修正について説明が不十分だったと主張。BLSには「新たな視点が必要だ」と述べた。

  政治的に中立な機関だというビーチ氏の意見に異を唱えようとする姿勢を見せ、「重要なのは、これらの数字を作るのに人間が関与したということだ」とも話した。

  トランプ氏は自分が気に入らないデータを提供した人物を誰でも解任するのかと問われると、「そんなことは決してない」と否定。「大統領は信頼の置ける人物を配置したいと考えている。それによって、われわれが目にする数字がより透明で信頼できるものになる」と述べた。

原題:Trump’s Former Jobs Data Chief Decries Firing of Successor (1)(抜粋)

▽バンス氏と労働長官、雇用統計に前向きな見解-トランプ氏と温度差<bloomberg日本語版>2025年8月4日 1:13 JST

Mario Parker

  • 外国生まれの労働者の雇用減少を示すグラフを再投稿-バンス氏
  • 雇用の伸びは依然として前向きな軌道にある-チャベスデリマー長官

米国のバンス副大統領とチャベスデリマー労働長官は、弱い雇用統計の発表後も現在の労働市場に前向きな見解を示そうとした。トランプ大統領はしかし、統計発表元の労働統計局長を政治的な動機に基づくものだと証拠も示さずに主張し解任した

  バンス氏は米国生まれの労働者の数が増えた一方、外国生まれの労働者の雇用が減少したことを示すグラフをX(旧ツイッター)にリポストした。この状況はトランプ政権の移民政策を反映している可能性がある。

関連記事:米労働市場はこの3カ月で激変、雇用者数は月平均3.5万人しか増えず

  チャベスデリマー長官は1日にブルームバーグテレビジョンで、非農業部門雇用者数の下方修正は予想外だったとしつつ、トランプ政権2期目以降、雇用の伸びは依然として前向きな軌道上にあるとの認識を示した。政権発足後に創出された雇用は、ヘルスケアや建設分野を含め、50万人近いと述べた。

  「下方修正については議論すべきことであるし、予想外だったが、その修正の大半、62%は教育分野と季節労働に関連していた」と説明。「数字が実態に後から追い付くことは、時々起きる」と話した。

  同長官は、トランプ氏が行っている通商交渉での関税措置の活用や減税・歳出法の成立も評価した。

  トランプ氏はその数時間後にマッケンターファー労働統計局長を解任。

関連記事:トランプ氏、労働統計局長を解任-雇用統計を「政治操作」と非難

  チャベスデリマー長官はその後、「雇用に関する数字は公正、正確でなければならず、政治的目的のために操作されることは決してあってはならないという大統領の主張に全面的に同意する」とXに投稿。根拠のないトランプ氏の主張に寄り添う姿勢を示した。

原題:Vance and Labor Department Touted Jobs Data That Trump Now Hates(抜粋)

▽トランプ氏、労働統計局長を解任-雇用統計を「政治操作」と非難<bloomberg日本語版>2025年8月2日 4:05 JST

Skylar Woodhouse

  • 雇用急減速示す雇用統計発表から数時間後、SNSに投稿
  • 政策に政治が介入するとの不安が市場に広がるとストラテジスト

トランプ米大統領は1日、米労働省労働統計局(BLS)のエリカ・マッケンターファー局長を解任した。7月の雇用統計発表から数時間後に明らかにしたもので、同雇用統計では雇用者の伸びがこの3カ月に大きく減速したことが示されていた。

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エリカ・マッケンターファー労働統計局長出所:米労働省労働統計局

  トランプ氏は「このバイデン前大統領の政治任命者を即時解任するよう、チームに指示した」とソーシャルメディアに投稿。雇用統計を政治目的で利用したとして、証拠を示さずにマッケンターファー氏を非難した。

  「より有能で資格のある人物が後任になる。このような重要な数字は公正かつ正確でなければならない。政治的目的で操作されてはならない」とトランプ氏は続けた。

  今回の雇用統計では、経済を巡る不確実性が広がる中で、労働市場のペースが落ち始めていることが改めて示唆された。7月の非農業部門雇用者数は前月比7万3000人増。雇用者数の伸びは前月と前々月合わせて26万人近く下方修正された。これまで3カ月の平均はわずか3万5000人の増加で、コロナ禍後の最悪を記録した。

関連記事:米労働市場はこの3カ月で激変、雇用者数は月平均3.5万人しか増えず

  好景気を誇示し、関税引き上げや減税が米経済を押し上げると主張してきたトランプ氏にとって、今回の雇用統計は大きな痛手となった。

  マッケンターファー氏の解任には、共和党系の経済学者からも批判の声が上がっており、市場関係者の間にも不安が広がっている。

  トランプ氏が解任を命じた数時間後には、米連邦準備制度理事会(FRB)のクーグラー理事が8月8日付で辞任すると、FRBが発表した。 雇用統計とBLS局長解任のニュースで市場が揺れる中、トランプ氏はFRBへの影響力を強める機会を得た。トランプ氏が決定する後任には、利下げを支持する人物が指名されるとの見方が強い

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  PNCアセット・マネジメント・グループのチーフ投資ストラテジスト、ユンユ・マー氏はトランプ氏が「BLSを標的にしたことで、今後、経済政策の判断に政治が介入するのではないかとの不安が市場に広がるだろう」とした上で、「投資家にとって最大の懸念は次の一手だ。パウエルFRB議長の解任を再び示唆するかどうかだ」と指摘した。

  トランプ氏は今回の雇用統計発表後、パウエル議長への批判も再開した。

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  マッケンターファー氏は2023年にバイデン前大統領によって局長に指名され、24年1月に承認された。

  チャベスデレマー労働長官は、労働統計局のウィリアム・ウィアトロウスキー副局長が当面は局長代行を務めると明らかにした。

  労働統計局長は大統領に任命されるが、同統計局は自らの業務を「独立」かつ「超党派的」と説明している。エコノミストやストラテジストは、この中立性こそが、データに対する国民や金融市場の信頼を支えていると指摘する発表される数値に基づき、市場で数兆ドル規模の資金が動く可能性があるためだ。

  調査会社マクロポリシー・パースペクティブの創業者、ジュリア・コロナド氏はマッケンターファー氏が解任されれば「この先、データの信頼性を十分に確信することができなくなるだろう」と指摘。「このデータは極めて価値の高い公共サービスであり、その信頼性が不可欠だ」と語った。

原題:Trump Fires Data Chief on Bad Job News, Gets Chance to Tilt FedTrump Moves to Fire Labor Statistics Head After Weak Jobs Data(抜粋)