自民党の参院選総括委員会に出席する小野寺政調会長(6日、党本部で)
政府・与党が参院選公約に掲げた現金給付の実現に暗雲が垂れ込めている。衆参両院で少数与党となり、給付の裏付けとなる2025年度補正予算案を野党の賛同を得て成立させられるかどうか見通せなくなったためだ。制度設計でも課題が立ちふさがる。
(谷口京子)
政府・与党の現金給付を巡る現状と課題
「物価高への対応が鈍かった」。自民党本部で6日開かれた、参院選の敗因を探る総括委員会で谷口将紀・東大教授(政治学)がそう指摘した。
小野寺政調会長、木原誠二選挙対策委員長らが出席した会議には谷口氏ら有識者3人が呼ばれ、躍進した国民民主党の経済政策の分析などの説明もあったという。ある出席議員は「民意は自民が掲げた現金給付を否定した」と肩を落とす。
自民、公明両党は参院選で、国民1人2万円(子どもや低所得者は4万円)を年内に支給すると訴えた。一方の野党各党は消費税減税や廃止を訴え、給付を「選挙目当てのバラマキ」と非難した経緯がある。
石破首相(自民総裁)は4日、給付の実施に向けた指示を出し、これを受けて自公の政調会長は5日、国会内で会談して制度設計に向けた議論を始めた。公明の西田幹事長は「金額を変えるかどうかも含めて議論したい」と語るが、自民側の意欲は決して高くない。
背景には、補正予算案の成立が見通せないことがある。衆院に加え、参院でも少数与党となって野党からの賛成の取り付けはさらに困難さを増しているためだ。
制度設計でも、マイナンバーと預貯金口座をひも付けた「公金受取口座」の活用を検討していたが、この登録者は5月末現在で65%にとどまり、全国民に迅速に届けるには難点がある。与党は、減税には時間がかかるとして給付の優位性を訴えてきたが、足元が揺らいでいる形だ。
選挙が終わった現在、自民内では給付の必要性そのものを疑問視する向きもある。政府関係者によると、事務を担う自治体からも不満が相次いでおり、「こうした反対論を理由に実施しないことも一案かもしれない」(自民幹部)との声も漏れている。


