アラスカで8月15日(日本時間16日)に開催されたトランプとプーチン両大統領による対面形式の首脳会談について、国内外の主要メディアが足並みを揃えて酷評している。ほんの一例だが時事通信の当日の模様を伝える記事の見出しを見ると、「『米国の恥』『プーチンの勝利』、トランプ大統領に国内で批判」となっている。さらに著名な米政治学者であるイアン・ブレマー氏の「何も譲らず、時間を稼ぎ、制裁もない。勝ったのはプーチンだ」とのSNSへの投稿をそのまま引用している。当日のテレビニュースを見る限り、戦争犯罪人で逮捕状が出ているプーチンをアラスカの米軍基地に招待し、レッドカーペットの上を二人が肩を並べて歩く姿は“尋常”ではない。会談終了後の記者会見も、ホストであるトランプ氏を差し置いてプーチンが口火を切っている。これも異様だ。スピーチもプーチンの7~8分に対してトランプはわずか3分ほど。まるでプーチン主導の首脳会談のようだった。それまでの高圧的発言は、単なる脅しだったのか。そうではないだろう。事前に周到に準備された首脳会談だったのではないか。
そんな印象を持ちながらこの週末にいくつか関連情報に目を通してみた。そこで浮かび上がってきたのは当日の印象とは違うものだった。トランプ発言を見る限り、首脳会談では多くの項目で合意が成立している。中身が発表されていないから具体的に何が合意されたのかはわからない。ウクライナに関しては主要メディアでも一部報道されているが、ゼレンスキー氏がドンバス地方(ドネツク、ルハンスク州)の割譲に合意することを条件に、ウクライナの安全保障に米国が責任を持つ。これにプーチンが同意したようだ。具体的にはイタリアのメローニ首相が発案者とされるNATO第5条(集団防衛条項)にヒントを得た構想が検討されている可能性がある。複数の国が参加してウクライナのための安全保障機構が設立されるのだろう。領土の割譲を含めて最終的にはゼレンスキー氏の判断に委ねられている。こうした状況をトランプ氏はFOXニュースのインタビューで、「There is no deal until there is a deal」と語っている。その一方でゼレンスキー氏に対して「Make a deal」と呼びかけている。これは一種の命令だろう。
要するに米ロ首脳会談の評価は、内外の主要メディアが報じているような「勝った」「負けた」ではないということだ。ウクライナ戦争を始めたのは誰か、戦争の根源にまで遡ろうとしている。そうなれば世界がひっくり返る可能性だってある。トランプ氏は「私が大統領だったらウクライナ戦争は起こらなかった」と常々強調している。記者会見でプーチンもこれを認めた。バイデン前大統領憎しの個人的な感情だけではないだろう。もちろん戦争を始めたのはプーチンだが、その裏にはグローバリストとDSがいる。二人から見ればゼレンスキー氏もNATOも戦争の推進者だ。この流れを断ち切る。暗黙の密約が二人の大統領の間で交わされたのではないか。国際政治アナリストの及川幸久氏はゼレンスキーが「承諾」しても「拒否」しても、今回の会談を受けて「ウクライナ戦争は終結する」と読む。本当かどうかわからない。それが人類にとって幸せへの道かどうか、それすらはっきりしない。唯一はっきりしているのは、国内外の主要メディアは軒並み真実を伝えていないということだ。
