▽米・EU、貿易協定実現へ前進-履行条件や関税措置の具体像明らかに

Jennifer A Dlouhy、Alberto Nardelli

  • 欧州車の関税引き下げ、対米関税措置実現へのEU法案提出が条件
  • 欧州医薬品・半導体への関税、米国は15%を上限とする意向を確認
New vehicles ready for shipping in Emden, Germany.
New vehicles ready for shipping in Emden, Germany. Photographer: Ina Fassbender/AFP/Getty Images

米国と欧州連合(EU)は21日、貿易協定の概要を示す共同声明で合意した。これにより貿易協定の正式化が一段と進み、欧州の自動車に対する関税が数週間内にも引き下げられ得る計画について、詳細が明らかになった。また鉄鋼とアルミニウムに関しても、新たな関税引き下げの可能性が開かれる見通しだ。

  今回の共同声明は先月の米国とEUの合意の進展を示すもので、自動車、医薬品、半導体を対象とするEUのセクター別関税の引き下げ履行に向けた具体的な基準が盛り込まれた。

  米国とEUは大半のEU輸出品に米国が15%の関税を賦課することで合意。米国は7月の大統領令で、EUからの輸入品は15%を上限とすると明示していた。

  EUの行政執行機関、欧州委員会のフォンデアライエン委員長はX(旧ツイッター)への投稿で、米国との通商合意で予見可能性が生じ、「市民と企業に恩恵をもたらすとともに、欧州と米国の関係を強化する」と述べた。 

  今回の進展は、トランプ政権下の貿易交渉の特徴を浮き彫りにしている。大まかな合意がまず表明され、その後、詳細を詰めるための交渉に数週間かそれ以上の時間が費やされるというパターンだ。多くの合意は、実現までに時間を要するような広範な政策変更を含んでいる。

  たとえばトランプ氏は既に欧州製品の大半に一律15%の関税を課している。同氏がかつて示唆していた30%からは半減された。しかし米国が自動車・自動車部品にも15%関税の適用を拡大するためには、EUが米工業製品に対する一連の関税を撤廃する法案を正式に提出し、一部の米国産水産物や農産物に「優遇的な市場アクセス」を提供することが条件となっている。

  声明によれば、現在27.5%に設定する欧州自動車関税の引き下げを米国が確定させるには、EUが約束した関税引き下げを「実現すべく必要な法案を正式に提出」することを条件としている。

  トランプ政権の高官は記者団に対し、関税引き下げは数週間以内にも実現する可能性があると説明した。

  今回の法的な面での条件は、EUが約束した関税引き下げの履行を確実にすると同時に、EUが政策実施に必要な政治的権限を得るための圧力を維持する狙いがあると、同高官は述べた。

航空機・航空部品

  米国は航空機・航空機部品や後発医薬品(ジェネリック品)とその原料、コルクなどの一部天然資源を含む複数品目の欧州製品に対し、低水準の最恵国待遇(MFN)関税率を適用する方針を示している。

  声明によれば、将来的に対象品目が追加される可能性もあるが、現時点ではワインと蒸留酒、医療機器について、EUはこの関税優遇を受けていない。米国はまた、欧州の医薬品と半導体、木材に対する今後のセクター別関税について、15%を上限とするコミットメントを改めて確認した。

  さらに鉄鋼やアルミニウム、それらの派生製品を含む一部製品群についてはクオータ制において関税が引き下げられる可能性も出てきた。トランプ政権は7月にこれらの製品について関税を50%で維持する方針を表明していたが、方針を転換する。

  声明によれば、米国とEUは「過剰生産能力からそれぞれの市場を保護しつつ、相互のサプライチェーンの安定を確保するために協力する可能性を検討する方向」にある。

EUの米投資計画

  EUが2028年までに米国へ6000億ドル(約89兆円)を投資し、約7500億ドル相当のエネルギー資源を購入するという計画について、今回の声明ではその実現手段が明らかにされていない。

  これについて米政府高官は、製薬や半導体、先端製造業など、米国の幅広い戦略分野において欧州企業による民間投資が期待されるとの見方を示した。

  一方、EUは米国からの軍事・防衛品の調達を大幅に増やす計画で、少なくとも400億ドル相当の米国製の人工知能(AI)チップを購入する意向を示している。

原題:EU, US Lay Out Next Steps on Tariffs to Rebalance Trade Ties (1)(抜粋)