石破総理と韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領との首脳会談が終了した。韓国の左派勢力を基盤とする李大統領は根っからの反日派として知られているが、首脳会談では日韓の連携強化をベースにした未来志向を鮮明にした。石破総理との個人的な関係強化も図られたようで、巷に溢れる日韓関係に対する懸念はとりあえず杞憂に終わったようだ。会談時間は約2時間。この会談で両首脳は日韓関係の将来を「未来志向で安定的に発展させていくことで一致した」と報じられている。首脳会談に同席した長島補佐官は「よい雰囲気だった。イ大統領はこれからアメリカに行くが、石破総理はすでにトランプ大統領と対面で2回会談している。石破総理なりの経験談みたいなことをイ大統領と共有することができた」(NHK)と述べている。大統領来日の目的はトランプ会談に向けた事前準備にあったのかもしれない。

長島補佐官はさらに「アメリカが保護主義や孤立主義に陥るかどうか、すごく微妙な時期だけに、インド太平洋や東アジアにつなぎ止めておく意味で、今回のイ大統領の訪米や日韓の協力は大事だ。きのうの首脳会談や夕食会、きょうの議員連盟との会談は1つにつながっていて、流れを加速させる一助になったのではないか」と述べている。「流れ」は明らかにトランプ大統領対策ということだろう。これを「加速」させるために両首脳は日韓に横たわる「負の項目」には目をつぶり、共同して行動しようと確認しているのである。日韓のメディアの扱い方も総じて好意的。韓国の連合ニュースは首脳会談が当初の予定より大幅に伸びたことを取り上げ、「経済や安全保障など協力のあり方について、集中的に議論したようだ」(同)と伝えている。韓国の保守系メディアである朝鮮日報は一夜明けた昨日、共同文書が17年ぶりに発表されたと伝えている。

その一方で歴史問題や、東京電力福島第一原発の事故を受けて続けられている日本産水産物の輸入規制については、文書には盛り込まれなかった。トランプ対策を優先するため、「両国から反発が出る可能性がある敏感な問題は盛り込まなかったものとみられる」(同)と指摘している。トランプ対策優先で日韓関係にとって最も重要な歴史問題や、水産物の輸入規制問題には両国とも目をつぶったというわけだ。それで本当に「未来志向」なのかと、茶々を入れたくなるが、それはとりあえず置くとする。心配なのは国内での支持率が低迷すると、韓国首脳はすぐに手のひらを返して反日姿勢を鮮明にすることだ。保守系、革新系を問わず、韓国首脳の間ではこのパターンが定着している。年がら年中頭を下げ続ける日本政府、何かあれば反日姿勢に転ずる韓国政権。二つの負の遺産を乗り越えない限り、「未来志向」には大した意味がない気がする。