今朝の読売新聞に大河原化工機冤罪事件の謝罪記事が掲載されている。同紙によると「精密機械製造会社『大川原化工機』(横浜市)を巡る冤罪(えんざい)事件で、警視庁と検察の幹部が25日、逮捕・起訴されて被告の立場のまま72歳で亡くなった同社元顧問・相嶋静夫さんの墓を訪れ、遺族に謝罪した。遺族は謝罪を受け入れた一方、同庁と最高検が今月7日に出した捜査の検証報告書に不満を示し、再検証と関係者の処分見直しを求めた」とある。この事件は2020年3月、警視庁公安部が相嶋さんら3人を外国為替及び外国貿易法違反で逮捕・起訴したことに始まる。事件当初から3人は被疑事実を否定したが、検察・警察は事実解明を怠ったまま、自ら作り上げたストリーリーに沿って3人を逮捕・勾留した。勾留中の相嶋氏は癌の宣告を受けるが、検察・警察・裁判所は仮釈放を認めず獄中で死亡した。

大河原化工事件は裁判で被疑者の無罪が確定、検察・警察も冤罪であることを認め、事件経過などを含めた検証報告書を取りまとめている。読売新聞によるとこの日検察・警察は遺族と向き合って謝罪。警視庁の鎌田副総監は「違法な捜査・逮捕について、深くおわび申し上げる」と述べた。東京地検の市川次席検事は「違法な勾留請求と起訴で重大な人権侵害を生じさせ、保釈請求に対する不当な対応で治療の機会を損失させた」と語り、最高検の小池隆公安部長も「心より深くおわび申し上げる」と発言した。3人はそれぞれ深く頭を下げた、とある。これに対して相嶋さんの長男(51)は、「さらに深く原因追究を行うべきだ」と応じ、妻は「謝罪は受け入れるが、決して許すことはできない」と答えている。無実の罪を着せられ、挙げ句の果てに癌を宣告されたにもかかわらず、治療のための釈放すら認められなかった遺族にしてみれば、「決して許すことはできない」。当たり前の感情だろう。

検証報告を一歩前進と受け止めた長男氏だが「懲戒処分を受けた警察官が一部にとどまり、検察官はゼロだった点を甘すぎる」と主張。非公開の面談では、「再検証や処分の再考を求めた」という。だが最高検の山元裕史次長検事は25日夕、再検証や処分の見直しは「考えていない」と突き放した。墓前で謝罪した3人の関係者も「深々と頭を下げた」とあるが、テレビニュースの映像を見る限り「形式的な謝罪」の印象を受けた。捜査の検証に第三者は入っておらず、いってみれば身内だけの検証でしかない。フジT Vのスキャンダルで主要メディアは、検証自体を第三者に任せるべきだとの大キャンペーンを張っていた。対象が捜査当局になると、そうした声は一切起こらない。保釈を認めなかった判断に約20人の裁判官が関わっていた。だが裁判所は、「裁判官の独立」の観点から検証は実施しない方針だという。「間違っても真相は解明せず」、この国の権力者の際立った特長だ。