中国とロシアが主導して設立された上海協力機構(SCO=Shanghai Cooperation Organization)の首脳会議が天津で行われている。議長を務める習近平主席はじめロシアのプーチン、インドのモディ首相ら世界のリーダーが笑顔で握手を交わすなど、首脳たちの親密度を前面に押し出している。もちろん意識しているのはAmerica Firstのトランプ大統領だろう。西側陣営と東側陣営という旧来の分類に従えば、パフォーマンスは明らかに東側陣営の“勝ち”だ。首脳が集まる国際会議は、参加者が笑顔で談笑や握手を繰り返す、これがある意味ではお決まりのパターン。意見の対立があってもカメラの前ではいかにも親密であるかのようにふる舞う。その方が世界中の視聴者の共感を得やすいからだ。

産経新聞(Web版)によると昨日の首脳会議では「上海宣言」が採択された。宣言には「一方的な経済制限措置への反対」などが盛り込まれており、各国首脳が署名した。会議を主宰する習近平主席はこの日の演説で、トランプ米政権を念頭に「冷戦思考や陣営対抗、いじめ行為に反対する」と強調、加盟各国に結束を呼び掛けた。トランプ関税は東側から見れば“いじめ”なのだ。いじめにはみんなで結束して対抗しましょうと呼びかけている。見下したようなそぶりは微塵も見せない。テレビカメラの前でウクライナのゼレンスキー大統領と喧嘩腰の論争を行なった前例を持ち出すまでもないだろう。トランプ大統領のパフォーマンスには「協調」とか「連携」、「結束」といった類の気遣いは全くない。あるのは上から目線の命令だけだ。

だから悪いと言いたいわけではない。トランプ氏の戦略が一向にわからないと言いたいのだ。SCOは結束して米国に対抗しようとしている。トランプ氏に戦略性がもう少しあれば、習近平とプーチン、モディ首相の3人に楔を打ち込むような配慮が必要ではないか。それが言いたいのだ。その象徴がインドだ。ロシア産原油の輸入を止めようとしない同国に50%の関税を課した。クゥワッド(日米豪印)の首脳会議にも参加しない方針のようだ。おそらくインド憎しの感情に支配されているのだろう。モディ首相は対日戦勝記念を祝う中国軍の戦勝パレードへの参加を見送った。友好国・日本への配慮だ。全方位外交のインドは、多方面に配慮している。配慮なきトランプ氏。これでAmerica FirstのMAGAは実現するのか。来年の中間選挙を前に早くも米国民の間に不安が広がっていると、米国の通信社は伝えている。