▽【詳報】新浪剛史氏「法を犯しておらず、潔白」◆サントリーHD前会長、サプリ購入巡り記者会見<時事ドットコム>2025年09月03日19時00分

記者会見する経済同友会の新浪剛史代表幹事=2025年9月3日、東京都千代田区

 サプリメント購入を巡り捜査を受け、サントリーホールディングス(HD)会長を辞任した新浪剛史氏(66)が3日、東京都内で記者会見し、「法を犯しておらず、潔白だ」と主張しました。10年以上にわたって海外事業を中心にグループの成長をけん引し、率直な物言いで政財界でも発言力のあった新浪氏は、大麻成分が含まれるサプリを米国から購入した疑いで警察の捜査を受けています。詳細な経緯や違法性の認識の有無など、経済同友会代表幹事としての会見で新浪氏が語った内容を詳報します。(時事ドットコム取材班) 

*主な発言をまとめました

【過去の特集▶】時事ドットコム取材班 

冒頭発言:深く反省、適法と認識

 この度は私のことで皆様をお騒がせして申し訳ありません。深く反省しております。

 まず、私の方から事実関係の話をしたい。私は適法な商品と認識して、米国で売っているCBDサプリを購入した。市販されており、4月の出張時に自ら持ち帰る予定だったが、米国からドバイ経由でインドに出張し帰国する予定で、これらの国々でCBDを持ち込むことが厳しい、難しいとニューヨークの知人から助言を受け、(知人が)持っていってくれるということになったので、お願いすることにした。この方は大変著名な方で、私や著名な方の身体の健康をアドバイスされる方で、日本国内でも適法で、堂々とハンドキャリーで持っていくと言い、私の自宅に送る手配をしたと聞いている。

 ご案内と思うが、私自身、海外出張が多いので、家族との取り決めをしている。送り主がよく分からないものが送られたら、廃棄すると決めている。(サプリは)おそらく私の手元には届いていない。廃棄したものと考えている。

 しかし、発覚後に分かったことは、(知人が)ハンドキャリーで持ち帰ったサプリを私の家に送り、米国に帰った先月、2回目として(サプリを)福岡県在住の弟に送り、私の自宅に送るよう言っていたところ、弟が逮捕された。2回目の送付は私には想定外で、全く知らされておらず、私が買ったCBDサプリかどうかも不明だ。まさにこの2回目について疑義が生じている。

記者会見で頭を下げる経済同友会の新浪剛史代表幹事=2025年9月3日、東京都千代田区

法を犯しておらず、潔白

  私の自宅に送るように(知人が)弟に依頼していたので、警察の捜査が及んだと理解している。しかし、以上の事実関係から、2回目については以下のことが明確になった。

 一つは、私が日本国内で所持も使用もしてないことが分かった。日本国内で輸入指示をしたものではないことも分かった。1回目も結果的に日本国内で手にすることはなかった。 米国で適法と認定して購入したサプリと同一かも分からない。適法と認識して購入したサプリと同一か分からないものについて、警察の捜査があったと理解している。

 故に、私は法を犯しておらず、潔白であると思っています。

 しかしながら、結果的に私がCBDサプリを購入したことに端を発して、このようなことになったのは私の不注意であり、お騒がせしたことについて、おわび申し上げたい。真相が解明され、その中で、皆様に納得いただけるものと信じている。調査に全面的に協力し、本日は(捜査に)影響がないようなコメントを申し上げていきたい。

仲間に迷惑かけたくない、と辞任判断

 続いて、サントリーについてお話ししたい。

 昨日ご案内の通り、サントリーで会見があったが、9月1日付で代表取締役を辞任している。サプリを販売する会社にもかかわらず、国内での合法性に疑義が持たれるサプリを買ったことは役職に堪えないと。捜査の結果を待つことなく、要職に堪えないということだったので、協議をした。私は法令に触れる行為を取った覚えはないが、自ら辞することにした。

 振り返ってみると、どうしてこういう判断を下したかというと、鳥井(信宏)社長とお話ししたが、10年強、一緒になって本当に頑張って現場を回って、アメリカのビーム社を一緒になってインテグレーションをやり、泣き笑い、アメリカでハイボールを広めることをやった仲間。その仲間やお客様にご迷惑をおかけしてはいけない。大好きなサントリーに絶対迷惑をかけてはいけない、私はそう思い、サントリーを辞することにした。

  なんといっても、社員の皆さんが、よりサントリーを発展させてくれる、これを強く強く祈念し、私が辞することがプラスになると判断した次第だ。

同友会に判断委ねる

 サントリー以外の身の処し方については、同友会には会員倫理制度などしっかりとしたガバナンスの仕組みがある。私は潔白だと思うが、透明性の高い同友会の仕組みに判断を委ね、私自身は活動を自粛し、岩井(睦雄)筆頭副代表幹事に代理をお願いする。 

質疑応答:時差ぼけ多く、購入

-同友会の代表幹事は通例で企業の社長や会長が就いてきた。サントリー経営から離れており、自身で(対応を)判断できたのでは。

  私も一時は辞めなきゃいけないかなと思った。しかし同友会はこういう時の仕組みを持っている。私は社外取締役をやったりしているので、経営の一部はやっており遂行する要件はあるが、同友会の仕組みに委ねることが重要だと思った。透明性の高いガバナンスに委ねるのが正しいと判断した。

-なぜこのサプリを適法と判断したのか。

 CBDという商品の書いてある内容を読んだし、違法性のある物が入っているという表記もない。知人には身体をみてもらっていて、その人やその人の娘さんも飲んでいる。そういうことを聞き及び判断した。

-このサプリをこれまでも使ったことがあるのか。なぜ購入に至ったのか。

 このサプリを日本国内に持ち込んで、飲んだことはなかった。日本では許されていて、大丈夫であるという認識があったので購入に至った。1回目に知人が持ってきた商品はハンドキャリーで通関しているので、適法だったと思っている。

-何のために購入したか。

  出張が多く、時差ぼけが多いので、健康を守ってもらっている知人から勧められた。日本より米国の方が安いということで、経済的な意味合いだ。

-サントリー以外のサプリを購入したこと、不注意で役職に堪えないと言われたことについて感じることは。会長辞任は納得しているのか。

  サントリーですべてのサプリを作っているわけではないので、買うことはある。でも十分に注意しないといけない。私自身は(サプリは)手元にないし、飲んでもいないが、世間をお騒がせしたのでそういう意味では辞任は納得している。 

-米国やそれ以外の国ではサプリを使用したことがあるか。これまでこの件以外で警察の捜査は。

 今回の言われている商品は飲用していない。実は国内で買っていたので、その商品を飲んでいた。アメリカでは大変安いと聞いていたので、同じもので安いという風に言われ(購入を)判断した。他の件で警察にお世話になったことはない。

捜査受けたら辞める事例、作ってはいけない

-なぜサントリーで潔白を証明しないのか。既得権益層に厳しく意見を言ってきたあなたが、同友会代表に居座る意味は。

 居座るという趣旨は、先ほど説明した。サントリーで辞任するのはサプリをやっている会社だからだとも説明した。サントリー、同友会、どちらがガバナンスの力が強いかという話ではなく、その目的にあったガバナンスがあるかどうかだと思う。その意味でサントリーのガバナンスにおいては、サプリをやっているということに重きを置いた取締役会の辞任勧告であり、それは十分理解した。

 経済界として考えた時に、私は法を犯してはいない、潔白だと思っている。こういう人が、まずガバナンス機構でしっかり審査をされる。警察から尋問された人が、みんな辞めなきゃいけないのでしょうか、そういう事例を作ってはいけない。今回の件を同友会がしっかりした機能をもって、やはりまずいよね、いやいいんじゃないか、とかんかんがくがく議論してもらい、それに私は応じていきたい。

サントリーホールディングスの社長に内定した時の新浪剛史氏(右)と佐治信忠会長=2014年7月1日、東京都

―サントリーでの10年間はなんだったか。

 この10年間は大変な激務だった。しかし日本の食品会社が世界で戦える、評価される、それは、日本で培われたこのサントリーという文化、商品、そしてサービスが世界に通じるモノになる。それが私自身に課された課題であり、それを実現していった。日本で培われたサントリーの文化が世界に根付いた。ここからもっともっと花開く、この基礎を作ったんだと思う。サントリーの文化、サントリーイコール「日本丸」。それが世界に根付いたのが私のやったことだという自負と共に、一緒にやってくれた社員に感謝する。

長年サントリーの企業価値向上に努力してきたが、最終的に自身がブランドリスクになってしまったことをどう受け止めるか。自身をサントリーに引き入れた佐治信忠会長とやりとりはあったか。鳥井社長が「辞めるべきだ」言い、新浪さんは最初は納得できなかったが最後は応じたということか。

 社長から会社に傷が付く前に辞めるようにと勧められた。(サントリーで)作ってきたものを自分自身が壊すことはできない。傷を付けないために辞することにした。

 佐治会長からは「自分も大変辛い」ということをいただいている。しかし、非常に辛い中でも私のサントリーとそのブランドに対する愛する心を理解していただいたと思っている。

―長年、二人三脚でやってきたサントリーHDの鳥井社長との関係性は終わったか。

 全くそんなことはないと思う。今回、辞することで、私のサントリーに対する思いは十分ご理解いただいたのではないかと思っている。

サプリ名は。なぜ服用していたのか。

 睡眠を取る上で非常に役立つと、買っていた。商品名は捜査上の関係があるので控えさせていただく。

―違法なTHCの成分が含まれるのではないかという捜索。国内では入手できないものだったのか。

記者会見する経済同友会の新浪剛史代表幹事=2025年9月3日、東京都千代田区

 国内で入手できるものかは分からない。できないと思う。結果的に(知人が送付したサプリは)通関している(ので)合法である。そういう風に認定ができる。それが私の家に送られた。わたしは1回目で所持せず、2回目は知らなかったが、今回の捜査の対象になったのは2回目。2回目は私のものではない可能性が高いと認識している。1回目で全部送られたと認識していたので、2回目に来た物が私の物であるわけがない、という認識。ただ、彼女が問題があったと教えてくれた。弟さんが捕まったと。ただ、詳細が伝わったわけではなく、それ以上は理解していない。

―知人の弟は起訴されていないのか。1回目に送られたものは、警察が違法性を認定できていないのか。

 警察がどう認定しているか全く分からない。起訴されているかも知らない。

送り主不明の物は家族が廃棄

―送り主が分からないものは破棄する取り決めは、いつ、どういう理由でできた。

 私は海外出張することが多く、いない時にいろいろな物が来るので、とりわけ生ものや送り先、名前が分からない物が来た場合、危険な可能性があるので、こういう取り決めを従来からしている。

―家族は中身を見ずに処分したと説明しているのか。

 そういう物が来たかどうかも記憶にないと。知人が送ったと言っているので、来たんだろうなと私は想像しているが。家族はニューヨークの知人を知らない。九州の方の名前も知らない。合理的に言うと、廃棄したんだろうと想定し、手元にないので、中身を見ずに捨てたんだろうと想像している。

 ―送り主から、こうした物が送られてくると家族に伝えなかった理由は。

 直接、送ってくれれば何か言っていた可能性もあるが、送る手はずが何も伝わっていなかったので。ハンドキャリーで持ってきて、どういう風にするか、コミュニケーションがなかった。2回目に関しては何も知らず、家族に伝えるあれもない。ニューヨークの知人の名前も家族に言っていない。

 (捨てるのは)このケースだけですかというと、多々ある。あれをどうした、こうしたということが場合によってはあるが、その方が安全であるとの認識を家族は持っている。

 ―捜査対象になっただけで辞める前例ができたら大変というが、サントリーを辞めたことにじくじたる思いがあるのでは。(辞任直前に)海外出張に行く必要があったのか。

 私自身は法を犯していない、潔白であると思っていたし、取締役に十分コミュニケーションができると思っていた。海外出張の目的の方が重要だと思った。米国での販売が大変厳しくなっていく中で、取引先を集め、方向性を私が話をしなければいけないと認識していた。

クーデターにはめられたとの発言報道があるが。

 全くそんな発言もしていないし、そうも思っていない。サントリーが発展することを願っております。

―月末にサントリー側に捜査対象になっていると連絡し、米国に出張したそうだが、出張先で「知人」とは会ったか。

 全くありません。知人との接点はしてはいけないと思っていたので、ありません。

サントリーホールディングスの新浪剛史氏の会長辞任を受けた記者会見で記者の質問を聞く鳥井信宏社長=2025年9月2日、東京都港区

―真のグローバルカンパニーになるとリーダーシップを取っていたが、辞任による影響は。辞任でお願いしたい、と言われた時どう思ったか。

 海外事業が今後どうなるか、これは鳥井社長が必死になってやってくれると期待している。どんな事業でも心配だ。自分自身がやってきたことなので、もっともっといろいろなことをやりたかったということはすごくある。その中でも一応、種はまいてきた。種をまいたところに意思を持った人たちがいるから、ぜひともその人たちが、最終的に大きな樹に花が開くようにやっていってもらいたいなと強く思う。

 二つ目は、辞任によって私の意思を示して下さいということだと思った。解任だと意思とは反することになる。なぜ辞めなきゃいけないかという意思を統一して、ある意味では取締役会全員一致ということになる。そういう会社なんだと思う。10年以上いて、みんなが同じ方向に向くと言う意味で、私がその方向へ向くことになるんだなと思った。外から来た社長として、みんなと一緒に最後は同じ方向性を向いてやるんだ、それが会社の発展につながるんだ、そのように思った。

 お騒がせをして、すみませんでした。本日はありがとうございました。

【ミニ解説・THCとは▶】

 「THC(テトラヒドロカンナビノール)」は、大麻成分の一つで幻覚作用をもたらすなど有害性がある。2024年12月の改正法施行により麻薬取締法上の「麻薬」に位置付けられ、所持や使用が規制されている。一方、同じく大麻成分の「CBD(カンナビジオール)」は国内で規制されておらず、CBDを配合したオイルや食品といった製品がリラックス効果などをうたい販売されている。

 CBDを抽出する過程でTHCが残留することがあり、THCが残留限度値を超える製品は麻薬に該当する。25年5月、「CBDグミ」として販売されていた製品から残留限度値を超えるTHCが検出されたとして、厚生労働省は注意喚起を行っている。