▽【米国市況】株・国債上昇、労働市場減速で利下げ観測-雇用統計控え

Rita Nazareth

  • 民間雇用者数が予想下回る、失業保険申請件数は6月以来の高水準
  • 非農業部門雇用者数は7万5000人増の予想、S&P500種は最高値
雇用統計に備えるトレーダー
雇用統計に備えるトレーダー 出所:ブルームバーグ

4日の米金融市場では、株式と国債が上昇。5日の雇用統計発表を前に、労働市場の減速を裏付ける経済指標を受けて利下げ観測が強まり、ともに買いが優勢になった。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.85%-4.8-0.99%
米10年債利回り4.16%-6.0-1.42%
米2年債利回り3.59%-3.1-0.85%
  米東部時間16時40分

  8月の米民間雇用者数は予想を下回り、先週の新規失業保険申請件数は6月以来の高水準に増加した。ブルームバーグのエコノミスト調査では、非農業部門雇用者数は7万5000人増と予想されている。実際にそうなれば、雇用の伸びは4カ月連続で10万人未満となる。

関連記事:米雇用統計、4カ月連続で低調な伸び続く見通し-利下げ観測後押しへ

  2年利回りは約1年ぶりの低水準付近に低下した。短期金融市場は今月の利下げをほぼ完全に織り込み、年内少なくとも2回の利下げがあるとみている。

株式

  S&P500種株価指数は続伸し、過去最高値を更新した。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数6502.0853.820.83%
ダウ工業株30種平均45621.29350.060.77%
ナスダック総合指数21707.69209.960.98%

  昨年後半に政策金利を計1ポイント引き下げた連邦公開市場委員会(FOMC)は、関税がインフレ圧力を再燃させる可能性を懸念し、今年は利下げを見送ってきた。しかし、労働市場のリスクがより鮮明になる中、利下げ再開の見通しが広がっている。

  インタラクティブ・ブローカーズのチーフストラテジスト、スティーブ・ソスニック氏はFOMCの二大責務を踏まえれば、8月雇用統計は「最も重要な経済指標」になる可能性があるとの見方を示した。

  「多くの投資家が利下げを望んでいるのは明らかだが、何を願うかには注意が必要だ」と指摘。「緩やかに減速しているが、深刻ではないといった内容のデータが、利下げ期待にとっては理想的だろう。逆に、極端に悪化した数字が出れば、FOMCは追加利下げに傾く可能性があるが、同時に対応が後手に回ったのではないかとの懸念も浮上しかねない」と語った。

  その上で、前者であれば「ゴルディロックス」のシナリオが続くが、後者の場合は「停滞」や「スタグフレーション」の懸念が強まると指摘した。

  トランプ米大統領が連邦準備制度(FRB)理事に指名したマイラン米大統領経済諮問委員会(CEA)委員長は、上院銀行委員会で開かれた承認公聴会で、FRBの独立性を守る決意を示した。

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  FHNファイナンシャルのウィル・コンパノル氏は「金融緩和に懐疑的な当局者でさえ、労働市場の軟化リスクが高まっていることは認めざるを得ないはずだ」と述べた。「この傾向が今後数カ月、続くようだと、新規採用よりも人員削減のペースが上回り、雇用減に転じるだろう」と警告した。

  ハリス・ファイナンシャル・グループのジェイミー・コックス氏は「米金融当局が労働市場の軟化を見過ごす時期は終わった」と指摘。「9月会合ではリスクバランスの軸足を利下げの方に移すだろう」と語った。

  モルガン・スタンレー傘下Eトレード・ファイナンシャルのクリス・ラーキン氏は、5日発表の雇用統計が決定的な材料となるが、今週これまでのデータは労働市場の減速を裏付けていると述べた。「短期的には、利下げの確率を高めるため、こうしたデータを市場は歓迎する可能性がある。ただし、数値があまりに悪化すれば、経済状況への懸念が強まる恐れがある」と指摘した。

  コメリカ・ウェルスマネジメントのエリック・ティール氏は、雇用指標が弱いほど、近く予想される利下げの論拠が強まる点が希望の兆しだと指摘。「下半期の下支えは、金融緩和と財政刺激策によってもたらされるはずで、さらなる景気悪化を回避するために必要だ」と述べた。

為替

  ドル指数は上昇。労働市場の減速を示す新たな統計が発表され、今月の米利下げ観測が一段と強まったが、ドル買いが優勢になった。

  円相場は下落。一時は1ドル=148円78銭まで下げた。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1207.041.520.13%
ドル/円¥148.49¥0.390.26%
ユーロ/ドル$1.1651-$0.0011-0.09%
  米東部時間16時41分

  TDセキュリティーズのストラテジスト、ジャヤティ・バラドワジ氏は「市場が9月の利下げを織り込まない方向に動くには、高いハードルがある」と述べた。一方、「失業率が大幅に上昇し、0.5ポイントの利下げ観測が強まらない限り、ドルを強く圧迫することはない」と話した。

原油

  ニューヨーク原油相場は続落。年末にかけての供給超過見通しに、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成される「OPECプラス」が週末の会合で再び供給増を決定するとの懸念が加わった。

  朝方は予想より弱い雇用関連の米統計を受けて下落。需要先細り不安がさらに深まった。前日はOPECプラスが供給増加を検討するとの報道を受けて、相場は大きく下げていた。

  ロシアのノバク副首相はOPECプラスでは決定前に「現在の状況全体に目を向ける」と話した。その他複数の加盟国代表も、まだ会合の方針は決定していないと述べた。

  アルゴリズムを取引に用いる商品投資顧問業者(CTA)の売りも、この日の相場下落に影響した可能性がある。TDセキュリティーズの商品ストラテジスト、ダニエル・ガリ氏によれば、CTAは1バレル=65ドルの水準で「買い疲れ」の状態に達して以来、一貫して売りを出している。これが「わずかながら市場にさざ波を立て、価格を圧迫している」という。 「次にやってくるのは潮目の変化だ」とガリ氏は述べた。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI10月限は、前日比49セント(0.8%)安い1バレル=63.48ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント11月限は0.9%下げて66.99ドル。

  ニューヨーク金は反落。過去最高値を更新してきた前日までの勢いは、5日発表の米雇用統計を前に失速。利益確定の売りが出た。

  金価格を押し上げてきた米利下げ観測が、雇用統計で補強されるかどうかに注目が集まっている。米雇用者数は4カ月連続で弱い伸びになると予想されている。金利の低下は利息を生まない金投資の追い風と受け止められている。

  金はこのところ6%近く上昇してきたが、テクニカル分析は上げ過ぎの可能性を示唆している。14日ベースの相対力指数は今週に入り、買われ過ぎの領域に入った。

  サクソ・キャピタル・マーケッツのストラテジスト、チャル・チャナナ氏は「きょうの反落は戦術的なリスク調整のようだ。実質金利とフロスの兆候を踏まえ、投資家は雇用統計によるイベントリスクを低減している」と指摘。それでも「長期の強気シナリオに変わりはなく、利下げ期待のほか、中央銀行による金需要、FRBの独立性に対する不安などがこれをしっかりつなぎ止めている」と述べた。

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上段:金スポット価格と50日移動平均、100日移動平均、200日移動平均 下段:14日ベース相対力指数出所:ブルームバーグ

  金スポット価格はニューヨーク時間午後2時5分現在、前日比14.25ドル(0.4%)安い1オンス=3545.17ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は、28.80ドル(0.8%)安の3606.70ドルで終えた。

原題:S&P 500 Hits All-Time High Before Key Jobs Report: Markets Wrap(抜粋)

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