▽【米国市況】S&P500が最高値、米国債は反落-インフレ指標発表前に

Rita Nazareth

  • 大手ハイテク株がけん引、新製品を発表したアップルは下落
  • 年次改定での雇用統計の下方修正、影響は限定的

9日の米国株市場ではS&P500種株価指数が続伸し、史上最高値を更新した。雇用の減速を受けた利下げへの期待から買いが優勢になった。今週発表されるインフレ指標は市場の強気な見方を試す展開となりそうだ。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数6512.6117.460.27%
ダウ工業株30種平均45711.34196.390.43%
ナスダック総合指数21879.4980.790.37%
US Stocks Drop As Tech Rout Deepens, Hurt By Climbing Yields
ウォール街はインフレ指標待ち出所:ブルームバーグ

  S&P500種は下落する構成銘柄の方が多かったものの、アップルを除く大手ハイテク株がけん引する格好となった。新製品を発表したアップルは1.5%安。

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国債

  米国債相場は5日ぶりに反落。年次改定での雇用統計の下方修正は織り込み済みとみなされ、今週発表されるインフレ指標に焦点が移る中で勢いがなくなった。

  2年債利回りは2022年以来の低水準から上昇した。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.72%3.20.68%
米10年債利回り4.08%4.21.04%
米2年債利回り3.55%6.81.95%
  米東部時間16時40分

  米雇用者数の伸びは2025年3月までの1年間、従来の発表値よりはるかに低いものだった可能性が高い。労働統計局が発表した推計値によれば、3月までの1年間の雇用者増は91万1000人下方修正されそうだ。確報値の発表は来年2月に予定されている。

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  利回りは全般に2~4ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇し、10年債と30年債は数カ月ぶりの低水準から上昇した。5日に発表された雇用統計が予想を下回り、利下げ期待が再浮上したことが、前日までの支援材料となっていた。

US 30-Year Yield Rebounds From Lowest Since May

  3年債入札(規模580億ドル)への需要が強く、国債相場は下げ幅をやや縮小した。落札利回りは3.485%と、ニューヨーク時間午後1時の入札締め切り直前の入札前取引の水準3.492%を下回った。

  バンクレートのスティーブン・ケイツ氏は、消費者物価が予想より上振れすれば、利下げによる景気下支えの圧力が高まる中で、政策判断が一層難しくなると指摘。「5日の弱い雇用統計に加え、今朝発表された年次ベンチマーク(基準)改定での91万1000人下方修正を踏まえると、経済が『板挟み』の状態にあるのは明らかだ。より正確に言えば、労働市場ショックと加熱気味のインフレ圧力の間に挟まれている」と述べた。

  ノースライト・アセット・マネジメントのクリス・ザッカレリ氏は「雇用情勢の悪化が続いており、これにより連邦準備制度理事会(FRB)は今秋に利下げがしやすくなるが、足元の株高には冷や水を浴びせる可能性もある」と述べた。「さらに悪いのは、11日に発表される消費者物価指数(CPI)がインフレ再燃の兆しを示し、市場が『スタグフレーション』を懸念し始めることだ」と語った。

  エバコアのクリシュナ・グハ氏は「現時点では、全体として控えめながらハト派寄りの影響があると見ている。9月、10月、12月に3会合連続で利下げが実施される可能性はやや高まったが、確定的とは言えない」と述べた。

為替

  外国為替市場ではブルームバーグ・ドル指数が上昇。米国債利回りの上昇につれてドル買いが入った。雇用統計の年次改定が発表されると、値動きが荒くなる場面もあった。

  スコシアバンクのチーフ外国為替ストラテジスト、ショーン・オズボーン氏は「雇用統計の下方修正を受けたドル高には、ポジション調整が影響している可能性がある。ただし、今回のドルの反発によって、当面は神経質なレンジ相場に戻るリスクも高まっている」と述べた。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1201.242.690.22%
ドル/円¥147.45-¥0.05-0.03%
ユーロ/ドル$1.1707-$0.0056-0.48%
  米東部時間16時39分

  円はニューヨーク時間の早朝に1ドル=146円31銭まで上昇した。日本銀行は国内政治情勢が混乱する中でも、年内利上げの可能性を排除しない姿勢だとのブルームバーグ・ニュースの報道が買いを誘った。ただ、その後は前日終値の147円台半ばまで伸び悩んだ。

ドル・円相場の推移

原油

  ニューヨーク原油先物相場は小幅続伸。市場は、イスラエルによるカタールでの攻撃により中東からの原油供給にリスクが生じるかどうかを見極めようとしている。中東は、世界の原油供給の約3分の1を占める。

  イスラエル国防軍(IDF)は、イスラム組織ハマスの指導部を標的にカタールの首都ドーハで攻撃を実施。カタールに本拠を置く衛星テレビ局アルジャジーラはハマス幹部の話として、ハリル・アルハヤ氏を中心とするハマス幹部がイスラエルの攻撃を生き延びたと報じた。

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  コロンビア大学グローバル・エネルギー政策センターの上級研究員、カレン・ヤング氏は、6月のイスラエルとイランの武力衝突で原油相場が反応薄だったことから、9日の上昇も長続きしないだろうとみる。

  「石油のインフラや輸送を直接標的にするような事態にエスカレートしない限り、地域紛争リスクは原油価格から切り離されている」と同氏は指摘。その上で「今回の件は、特にエネルギー分野において、イスラエルが地域でパートナーを持つ能力に長期的な影響を及ぼすだろう」と分析した。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物10月限は、前日比37セント(0.6%)高の1バレル=62.63ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント11月限は0.6%上昇の66.39ドル。

  ニューヨーク金先物相場は続伸。米金融当局が年内に複数回の利下げを実施するとの見方が強まり、金への追い風となっている。

  5日発表された8月雇用統計は低調な内容となり、市場では年内少なくとも2回の利下げが織り込まれた。うち1回は来週のFOMC会合での0.25ポイント利下げだ。借り入れコストの低下は通常、利息を生まない金の投資妙味を高める。

  ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は、4.80ドル(0.1%)上昇の3682.20ドルで引けた。

原題:S&P 500 Hits Record as Bonds Fall Before Inflation: Markets Wrap(抜粋)

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