▽イスラエルがハマス幹部狙い攻撃、5人死亡 カタール首都<ロイター日本語版>2025年9月10日午前 6:22 GMT+9

[ドーハ/ドバイ/ワシントン 9日 ロイター] – イスラエルは9日、カタールの首都ドーハでイスラム組織ハマス指導部を狙った空爆を実施した。イスラエル当局者によると、パレスチナ地区ガザの停戦交渉チームを率いるハリル・アル・ハイヤ氏を含むハマス幹部らが標的だった。
関係筋によると、ハイヤ氏は生き延びたもよう。ハマスは、攻撃でハイヤ氏の息子を含む5人が死亡したと発表。ただ、イスラエルによる停戦交渉チーム暗殺の試みは失敗したと言明した。イスラエルは情報を収集中という。
米ホワイトハウスのレビット報道官は、イスラエルの利益を増進しない一方的な攻撃で、非NATO(北大西洋条約機構)同盟国であるカタールで攻撃が行われたことは遺憾という認識を示した。
ガザ停戦交渉で仲介役を務めているカタールは、イスラエルの攻撃を「卑怯」かつ国際法の重大な違反と非難した。さらに国連安全保障理事会に対し「イスラエルの無謀な行動と地域の安全保障の継続的な混乱を容認しない」と表明した。
イスラエルのネタニヤフ首相は、この日の攻撃は「完全に正当化される」と言明。8日にエルサレム郊外のバス停で起きた攻撃や、ガザでイスラエル兵士が死亡したことを受けて攻撃を命じたと明らかにした。
さらに「テロの指導者がいかなる形であれ免責も享受できる時代は終わった。私はそのような免責の存在を許さない」と述べた。
イスラエル当局者は、攻撃について米国に事前に通知したとし、イスラエルメディアは、トランプ大統領が攻撃を承認したと報じた。
この点について、ホワイトハウスのレビット報道官は、米政権が攻撃の「直前」に警告を受けたが、米軍からのものだったとし、イスラエルが米軍に通知したかどうかについてはコメントを控えた。
レビット氏はさらに、トランプ大統領がイスラエルの攻撃が差し迫っていることをカタールに警告するようウィットコフ中東担当特使に指示したと述べたものの、カタール政府はこれに反論。攻撃前に警告を受けたという情報は誤りで、米当局者から電話がかかってきた時点で、ドーハではすでに爆発音が聞こえていたと述べた。
レビット氏によると、攻撃後、トランプ大統領はネタニヤフ首相とカタールのタミム首長と個別に電話会談を行い、タミム首長に対しては「カタールの領土で二度とこのようなことは起こらない」と保証した。
トランプ大統領は自身の交流サイト(SNS)「トゥルース・ソーシャル」に、イスラエルによるカタール攻撃の決定は自分ではなく、ネタニヤフ首相の決定だったと強調。「カタールは主権国家で、米国の緊密な同盟国であり、平和の仲介のためにわれわれと共にリスクを負って尽力している。カタール国内への一方的な空爆は、イスラエルや米国の目標の達成にはつながらない」と述べた。同時に「ガザの人々の苦しみから利益を得てきたハマスを壊滅させることは価値のある目標だ」とした。
今回のイスラエルの攻撃は、中東地域内外から反発を招いている。
サウジアラビアは、カタールの主権に対する「イスラエルによる残忍な侵略」と非難。カタールと共に仲介役を担ってきたエジプトは、危険な前例となるという認識を示した。
国連のグテレス事務総長も攻撃を非難したほか、通常即時のコメントを控えるローマ教皇レオ14世は「状況全体が非常に深刻だ」という懸念を表明した。
ハマスが2023年10月に仕掛けたイスラエル奇襲以降、イスラエル軍はガザのほか、レバノン、シリア、イラン、イエメンで空爆などを実施。軍事行動は中東地域全域に拡大しつつある。
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