Molly Smith

  • 多くの幹部職員、自主退職プログラムを受け入れて退職
  • インフレ調整後のBLS実質予算は長年にわたって減少傾向

雇用やインフレに関する主要統計を作成する米労働省労働統計局(BLS)では、深刻な人手不足が続いている。

  BLSのウェブサイトによると、同局の上級職のうち3分の1が空席となっている。局長職は暫定的に埋められているものの、雇用統計の各分野や地方事務所の運営を監督する複数の幹部ポストがいまだ空席のままとなっている。

  事情に詳しい関係者によると、長年にわたりBLSに勤めてきた幹部職員の多くが、ここ数カ月の間にトランプ政権から提示された自主退職プログラムを受け入れた。これにより、約2000人のキャリア職員を抱えるBLSにとっては、トランプ大統領が先月局長を解任する前から、すでに大きな課題を抱えていたことになる。

  オバマ政権下でBLS局長を務めたエリカ・グロッシェン氏は「優先順位を決めたり、どの業務に取り組むべきかを導くリーダーが不在で、業務リソースも限られている場合、最初に後回しになるのは業務改善だ」と述べた。たとえば、調査の近代化や回答率の向上といった取り組みがこれに該当するという。

  こうした問題は、最近BLSが厳しい監視の目にさらされている背景でもある。リーダーシップの欠如自体が課題の根本的な原因ではないものの、BLSが必要な改革や研修を実施する上での大きな障害となっている。

  トランプ大統領は先月、マッケンターファーBLS局長を解任した際、雇用統計の大幅な改定やデータ精度の問題を理由に挙げた。確かに今回の改定は異例の規模だったが、BLSでは調査回答の収集が進むにつれて、雇用統計が定期的に修正されるのは通常の手続きだ。

  ホワイトハウスのロジャース報道官は声明で、「BLSは何年にもわたり、米国の企業、政策決定者、一般家庭に対して、著しく不正確な雇用統計を発表し続けてきた。以前のBLS指導部は、回答率の向上やデータ収集手法の近代化といった、精度向上に向けた取り組みを怠ってきた」と批判。「こうした問題は長年放置されてきたが、トランプ大統領こそがその是正に向けて実際に行動を起こしている」と述べた。

  BLSの擁護団体の共同議長を務めるグロッシェン氏は、幹部ポストの空席を埋めることが次期局長にとって「極めて重要な優先事項」になると指摘した。同氏によれば、トランプ大統領就任以降、BLS全体の人員はおよそ20%減少している。

  ただ、連邦政府の新規採用凍結措置が10月15日まで続いている中で、データ収集や分析にあたる下級職員の補充がいつ実現するのかは依然として不透明だ。

  トランプ政権は現在、BLSで唯一の政治任命ポストである局長職の補充に向けた動きを進めており、ヘリテージ財団のチーフエコノミストを務めるEJアントニー氏を指名した。アントニー氏は上院の承認公聴会を待っている段階で、それまではBLSのベテランであるウィリアム・ウィアトロウスキ氏が暫定的に局長を務めている。

  8月1日に発表された7月の雇用統計では、前の2カ月分のデータに大幅な下方修正が加えられた。これはコロナ禍以降で最大の規模だった。1990年代にBLSで月次雇用統計プログラムを統括していたロン・ヘトリック氏は、この修正に関するBLSの声明に疑問を呈した。声明は修正が「通常より大きかった」とし、追加回答と季節調整要因の再計算が理由だと記すにとどまった。

  現在は労働市場データを提供するライトキャストで首席エコノミストを務めるヘトリック氏は「BLSは状況説明が驚くほど不十分だったという事実を認めるべきだ。私が代わりに説明していたようなものだ」と語り、「それは適切ではないと感じた」と続けた。

  グロッシェン氏によれば、BLSは経験豊富な幹部職員の退職に直面しているだけでなく、トランプ大統領が見習い期間中の職員を解雇したことで、技術的スキルを持つ若手職員の流出も招いている。

  こうした問題の一部はトランプ政権以前から存在しており、インフレ調整後のBLSの実質予算は長年にわたって減少傾向にある。

  労働省のパレラ報道官は「バイデン政権下での大規模な統計改定を受けてBLSのデータの信頼性が疑問視されたが、今その責任を追及している人々は、長年にわたりリソース不足を非難し続けながら、実際には業務改善の取り組みを何もしてこなかった同じ人々だ」と述べた。

  長年の専門知識を持つ職員が減少する中、トランプ氏はBLSを含む連邦機関の諮問委員会を廃止しており、今後どのような方針で米国の「ゴールドスタンダード」とされる経済統計の質を守り、向上させていくのかは不透明だ。

  グロッシェン氏は「BLSには、時間をかけて築き上げてきた独自の文化がある。それは模範となるリーダーシップと人材育成に大きく依存している」と述べた。そのうえで、「長期的な準備や訓練を受けていない人が、突然重要な役割に就かされる状況は大きなリスクをはらんでいる」と警鐘を鳴らした。

原題:BLS Leadership Vacuum Extends Beyond Head as Key Roles Sit Empty(抜粋)