▽【米国市況】S&P500種が連日で最高値、PPI低下で利下げ観測強まる

Rita Nazareth

  • PPIは前月比0.1%低下、年内3回の利下げほぼ織り込む
  • 10年債入札に強い需要、長期債を中心に買い

10日の米国株市場ではS&P500種株価指数が3日続伸し、史上最高値を更新した。生産者物価指数(PPI)が市場予想に反して前月比で低下したため、連邦準備制度理事会(FRB)が9月に利下げを再開するとの見方が強まり、ハイテク株を中心に買いが入った。国債利回りは低下。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数6532.0419.430.30%
ダウ工業株30種平均45490.92-220.42-0.48%
ナスダック総合指数21886.066.570.03%
Traders At The NYSE As S&P Futures Rise As EU-US Deal Eases Trade Fears
出所:ブルームバーグ

  連邦公開市場委員会(FOMC)会合を1週間後に控える中、PPIの4カ月ぶり低下は、インフレ高止まりが金融当局にとって障害になるとの懸念を和らげた。市場はこれに敏感に反応し、年内3回の利下げをほぼ織り込んだ。

  個別銘柄では、オラクルが高い。クラウドインフラ事業について強気の見通しを示したことが好感された。

  PPIは前月比で0.1%低下し、7月の数値も下方修正された。前年同月比では2.6%上昇となった。PPIの一部項目は、FRBが重視するインフレ指標である個人消費支出(PCE)価格指数の算出に使用されるため、エコノミストは注目している。トランプ大統領はこのデータを受け、「大幅な」利下げをFRBに求めた。

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  トレードステーションのデービッド・ラッセル氏は「インフレに関する最悪のシナリオは回避されている」と指摘。「前年比の数値が再び3%を下回ったことはハト派にとって朗報だ。直近の弱い雇用統計と合わせて、利下げへの流れは維持されるだろう。ただ、そのペースと規模は、11日朝に発表される消費者物価指数(CPI)の内容により左右される可能性がある」と語った。

  企業が関税によるコスト増をどの程度消費者に転嫁するかが、今後の金利動向を左右する重要な要素となる。食品とエネルギーを除いたコアCPIは前年比で7月と同じ3.1%上昇がみこまれている。

  モルガン・スタンレー傘下Eトレード・ファイナンシャルのクリス・ラーキン氏は「明日のCPIの方が重視されるだろうが、今日発表されたPPIは、来週の利下げを確実にする内容だった」と話した。その上で「もっとも、先週の雇用統計を受けて市場はすでにFRBが利下げサイクルに入るとの見方を織り込みつつあり、今回の指標が短期的なセンチメントにどこまで影響を与えるかはなお不透明だ」と続けた。

  キャピタル・エコノミクスのスティーブン・ブラウン氏はPPIについて、7月に予想外に拡大していた貿易関連の利益率の縮小が影響しており、その結果、実際以上に物価の弱さが強調されていると指摘。「とはいえ、全体として見れば、関税の影響が経済全体に波及するには依然として時間がかかっている」と述べた。

  ルネサンス・マクロ・リサーチのニール・ダッタ氏は、企業は市場シェアを維持するために価格競争力を重視している可能性があるとし、結果として関税のコストへの転嫁は当初の想定ほどではなかったとの見方を示した。「私はFRBが来週0.5ポイントの利下げを実施すべきだと思っているが、実際にはそうはならないだろう」と述べた。「連邦公開市場委員会(FOMC)のハト派には非常に説得力のある材料がそろっている。一方でタカ派は、失業率が依然として低く、金融環境も緩和的であり、関税の影響で今後もインフレ圧力が残ると主張するだろう」と語った。

国債

  米国債相場は朝方、PPIを受けて短期債主導で上昇。午後の10年債入札に強い需要が見られると、長期債を中心に買いが入り、利回り曲線はブルフラット化した。

  10年債入札(規模390億ドル)では落札利回りが4.033%と、午後1時の入札締め切り時点の入札前取引の利回り4.046%を下回り、需要が強かったことを示した。  

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.69%-4.0-0.84%
米10年債利回り4.04%-4.6-1.12%
米2年債利回り3.54%-1.9-0.53%
  米東部時間16時55分

  応札全体に占めるプライマリーディーラーの割合は4.2%と、10年債の入札としては過去最低を記録。一方、間接入札者の割合は83.1%に上昇し、直接入札者が12.7%に低下した分を吸収した。

  応札倍率は2.65倍と、過去6回の銘柄統合入札の平均(2.60倍)を上回った。

為替

  外国為替市場では、ドルが主要通貨の多くに対して下落。予想を下回るPPIを受けて米国債利回りが低下し、ドル売りが優勢になった。対円ではPPI発表直後に1ドル=147円13銭まで下げる場面もあった。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1200.90-0.34-0.03%
ドル/円¥147.44¥0.030.02%
ユーロ/ドル$1.1696-$0.0012-0.10%
  米東部時間16時55分

  アンドルー・ホレンホースト氏、ベロニカ・クラーク氏、ジゼラ・ヤング氏らシティグループのエコノミストはリポートで「PPIにおけるインフレ圧力は全体として穏やかなようだ」と指摘。「今回の統計(あるいはコアPCE価格指数への影響)には、FRBが9月に25ベーシスポイントの利下げを実施し、その後の会合でも毎回25ベーシスポイントずつ引き下げる方針を思いとどまらせるような要素は何も見当たらない」と述べた。

原油

  ニューヨーク原油先物相場は3日続伸。ウクライナとの戦争を続けるロシアに対し、トランプ大統領が次にどのような制裁措置を取るかを市場は見極めようとしており、同地域からの原油供給を巡り懸念が強まっている。

  トランプ氏は、ロシアのドローン(無人機)がポーランド領空に侵入したことに対し、ソーシャルメディアで「ロシアがポーランド領空をドローンで侵犯するとはどういうことか」と反応。この投稿後、原油相場は反射的に動いた。投稿2行目には「さあ始まるぞ!」とあり、米国がロシア産エネルギーへの制裁を近く発動する可能性を意識させ、トレーダーがショートポジションを買い戻す動きにつながった。

Oil Advances as Trump Questions Russia | WTI rose to the highest in a week amid geopolitical unrest

  CIBCプライベート・ウェルス・グループのシニア・エネルギー・トレーダー、レベッカ・バビン氏は「ここで読み解くべきことは、トランプ氏とプーチン氏の関係が改善ではなく悪化しているという点だ。何らかの対応が取られる可能性が高まっている」と分析した。

  原油トレーダーはこのほか、イスラエルによるカタールの首都ドーハでの攻撃の余波や米金利見通しも注視している。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物10月限は1.04ドル(1.7%)高の1バレル=63.67ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント11月限は1.7%上昇の67.49ドル。

  金スポット相場は上昇。米PPIの予想外の低下を受け、FOMCが来週の会合で利下げに動くとの見方が強まった。金は通常、低金利環境で投資妙味が増す。

  ANZグループ・ホールディングスのアナリスト、ソニ・クマリ氏とダニエル・ハインズ氏はリポートで、「労働市場へのリスクの高まりを受け、FOMCは2026年3月まで緩和スタンスを維持する公算が大きい」と分析。年末の金相場予想を200ドル引き上げ1オンス=3800ドルとした。

  両氏はさらに、「中国やインドを含む主要市場で金保有の拡大が続くと見込んでいる。25年残りの期間に上場投資信託(ETF)を通じて200トンの追加投資があると予想される」と記した。

  金は今年に入り40%近く上昇。中央銀行による買い入れや地政学的な不確実性、さらに米関税の世界経済への影響に対する懸念が背景にある。金連動型FTFへの資金流入も相場を下支えしており、ゴールドマン・サックス・グループなど多くの銀行は、FOMCの利下げが見込まれる中で金価格はさらに上昇すると予想している。

  金スポット価格はニューヨーク時間午後3時6分現在、18.16ドル(0.5%)高の1オンス=3644.79ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は、20セント安の3682ドルちょうどで引けた。

原題:Stock Rally Builds as Inflation Drops Before CPI: Markets Wrap(抜粋)

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