▽自民総裁選 茂木前幹事長 立候補正式表明「再生の軌道に戻す」<NHK>2025年9月10日 20時06分 

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自民党の茂木前幹事長は10日午後、国会内で記者会見しました。

この中で茂木氏は「総裁選挙に立候補する決意を固めた。結党以来最大の危機に直面している最悪な状況だからこそ立ち上がる決意をした。党や政府でさまざまな経験をした私のすべてをこの国にささげる」と述べました。

その上で「自民党と日本経済を必ず再生の軌道に戻し、次の世代にしっかりとバトンを渡せる政治をつくる。2年で再生の道筋をつくり、必ず結果を出す」と述べました。

また、野党との連携をめぐり、「個別政策ごとに協力を求めるのでは政治は前に進まない。基本的な政策が一致できる政党と新たな連立の枠組みを追求し、力強い政権基盤を固める。相手もあり、いま結論を出せる問題ではないが、日本維新の会や国民民主党とはしっかりと話をしたい」と述べました。

さらに、茂木氏は小泉農林水産大臣と小林鷹之・元経済安全保障担当大臣の2人の名前を挙げた上で、「自民党には、ほかにもリーダー候補が多くいる。経験に勝るものはない。若手を積極的に登用し次の時代を担う準備を早期に整える」と述べました。

経済政策をめぐっては、2年以内に物価高を上回る賃上げを定着させるとして、地方自治体が自由に使える数兆円規模の交付金を創設する考えなどを示し、国民の年収を確実に上げると強調した一方、参議院選挙の公約に盛り込んだ現金給付は行わない考えを示しました。

また、社会保障制度のあり方をめぐり、年齢ではなく能力に応じた負担を求めることが基本だとした上で、「まず、効率化の余地を徹底的に検証し、保険料の引き下げにつなげていくことが重要だ」と述べました。

茂木氏の総裁選挙への挑戦は去年に続き2回目です。

連携は通常国会までに

自民党の総裁選挙への立候補を正式に表明した茂木前幹事長は10日夜、BS-TBSの番組「報道1930」に出演しました。

この中で茂木氏は10日の記者会見で日本維新の会や国民民主党を念頭に新たな連立の枠組みを追求する考えを示したことについて、総裁選挙のあとに国会で行われる総理大臣指名選挙までに連立の合意を得ることが理想的だとする一方「現実的には難しい」と指摘しました。

その上で「閣外協力になるか連立になるか分からないが、来年の通常国会までに持っていく。段階を踏む必要はあるが、早いに越したことはない」と述べました。

《茂木氏のプロフィール》

茂木敏充氏は衆議院栃木5区選出の当選11回で、69歳。
総裁選挙には去年に続いて2回目の挑戦です。

東京大学を卒業したあと商社や新聞社、外資系コンサルタント会社での勤務を経て、1993年の衆議院選挙で初当選しました。

2003年、小泉内閣で、当選3回で沖縄・北方担当大臣、科学技術担当大臣として初入閣しました。

安倍内閣では、経済産業大臣や経済再生担当大臣、外務大臣を歴任したほか、党でも政務調査会長や選挙対策委員長を務めました。

「タフ・ネゴシエーター」
経済再生担当大臣を務めた際には、1期目のトランプ政権と日米貿易協定の交渉にあたり、トランプ大統領から「タフ・ネゴシエーター」と称されました。

岸田政権で党の幹事長を務め、当時の岸田総理大臣や麻生副総裁と3年間で80回以上会談するなど3人が緊密に連携し「三頭政治」とも呼ばれました。

そして去年9月、初めて総裁選挙に立候補しましたが、1回目の投票で9人中6位となり、決選投票に進めず敗れました。

その後、石破政権では、主要な役職には就かず、YouTubeやTikTokなどのSNSを活用した政策の発信などに取り組んできました。

政治信条は「未来と社会は変えることができる」
茂木氏は「平成研究会」=茂木派の会長を務めていましたが、党の政治とカネの問題を受けて茂木派は、ことし1月に正式に解散しています。

茂木氏の政治信条は「過去と自然は変えられないが、未来と社会は変えることができる」だということです。

《総裁選で訴える予定の主な政策》

茂木前幹事長が総裁選挙で訴える予定の主な政策です。

【野党との連携】
個別政策ごとに野党に協力を求めていては政治は前に進まないとして、外交・安全保障やエネルギー政策、憲法など基本的な政策が一致できる政党と新たな連立の枠組みを追求し、力強い政権基盤を固めるとしています。連立を組む具体的な政党として日本維新の会と国民民主党を例示し「しっかりと話をしたい」としています。

【経済政策】
(物価高対策)
2年以内に物価高を上回る賃上げを定着させるとして、地方自治体が課題やニーズに応じて自由に使える数兆円規模の「生活支援特別地方交付金」を創設するとしています。必要となる財源は税収の上振れなどで十分にまかなえるとしています。一方、参議院選挙の公約に盛り込んだ現金給付は行わないとしています。

(貯蓄から投資)
個人の金融資産や企業の内部留保を投資に振り向ける政策を実行し、賃上げにつながる経済の好循環の早期実現を図るとしています。

(地方活性化)
AIや半導体などの成長産業の地方への集積と拠点化を加速するとともに、関連するスタートアップ企業や研究機関の近隣への立地を支援するとしています。これにより、地方の成長力を高めるとともに企業や大学などの東京一極集中や賃金格差を是正するとしています。

(労働)
ハローワークを抜本改革し、求人と求職のベストマッチを図るとしています。また高収入を得るための労働移動を全面支援し、現場の声に即した働き方改革の見直しも進めるとしています。

(年収など目標)
こうした経済政策を実行することで、国民の平均年収は3年で500万円を超えるとしています。また、名目のGDP=国内総生産は3年後に670兆円、5年後に700兆円を突破するとしています。

【外交・安全保障】
「経済で失敗すれば政権が倒れるが、外交で失敗すれば国が傾く」と指摘し、力強くしたたかな外交を展開していくとしています。アメリカ・トランプ政権の関税措置については、自動車などへの関税の15%への引き下げが最優先だとした上で、さらなる引き下げの余地があるか見極めていくとしています。

【社会保障制度】
「人生100年時代」を迎える中、年齢ではなく能力に応じた負担を求めることが基本だとしています。その上で、▽まず効率化の余地を徹底的に検証し、保険料の引き下げにつなげることが重要だとしています。また、▽ジェネリック=後発医薬品の業界再編を促し、価格を大幅に引き下げるとしています。

【コメ政策】
需要に見合った生産量の拡大は重要だとする一方、生産者が安心して営農できるよう中長期的に農政のあり方を確立する必要があるとしています。また、中山間地域での営農の維持に向けた支援策を講じるとしています。

【外国人労働者】
人手不足が深刻な業種の課題やニーズを洗い出し、外国人労働者に依存しなくてもよい対策をとっていくとしています。

【ガソリン税の暫定税率廃止】
廃止をめぐる与野党による協議を加速し、来年度=2026年度の税制改正に盛り込むことが望ましいとしています。

【年収の壁】
自民・公明両党と国民民主党がいわゆる「年収103万円」の壁を見直し「178万円を目指す」などと合意していることについて基本的には賛成だとする一方、必要となる財源を検討する必要があるとしています。

【「副首都」の実現】
東京一極集中の是正や首都直下地震が発生した場合のバックアップ機能の観点から大切だとした上で、日本維新の会が検討している具体案を見極めたいとしています。

【党改革】
党の規律や財務体質をゼロベースで見直す努力を続けるとともに、若手や女性の登用、人事のプロセスの透明化を進めるとしています。

【中堅若手の登用】
小泉農林水産大臣や小林鷹之元経済安全保障担当大臣をはじめ自民党には多くのリーダー候補がいるとして、積極的に登用し、次の時代を担う準備を早期に整えるとしています。

【企業・団体献金】
「禁止よりも公開」で、透明性を高めることが重要だとしています。政党助成金と個人献金、企業・団体献金のバランスをとることが望ましいとしています。

【選択的夫婦別姓】
旧姓の通称使用の拡大で不便を解消できるかなどを見極めながら、検討をさらに深めていく必要があるとしています。

【靖国神社参拝】
総理・総裁になった時点で適切に判断していくとしています。