注目された米国の8月消費者物価指数(CPI)は、食品とエネルギーを除いたコアCPIが前月比0.3%上昇(予想0.3%上昇)、前年同月比3.1%上昇(同3.1%上昇)と予想通りの結果だった。総合CPIは前月比0.4%上昇(同0.3%上昇)と小幅上昇にとどまった。トランプ関税の影響がそろそろCPIに現れるのではないか、市場関係者が固唾を飲んで見つめていたがほとんど影響なし。これを受けて米国ではNYダウをはじめS&P500種株価指数、ナスダック総合指数など主要な株価指数が軒並み史上最高値を更新した。米国の株式市場には「9月相場は軟調」との格言がある。そんな前例を無視するように株価は急騰を続けている。1980年代後半、日本はバブル相場に沸いていた。それも束の間、90年代入りと同時にバブルが弾けた。その影響をいまだに引きずっているが、米国の場合はその心配はないのか、他人事ながら心配になる。

米国に連動するように日本でも日経平均株価が連日史上最高値を更新している。今日は朝方から久しぶりに売りが先行している。連日の急騰でしこたま儲けた投資家が、とりあえず利益を確定しようと利食い売りを入れているのだろう。日本市場を取り巻く環境に大きな変化はなく、石破政権の退陣に伴う政局混迷など意に介する様子もない。同政権の経済政策に近未来を先取りするようなパンチのある施策があったわけではない。それ以前にトリガー条項の撤廃に伴うガソリン価格の値下げや消費税減税など、先の参議院選挙で国民が求めた物価対策は「財源をどうする」の一言で葬り去られようとしている。にもかかわらず米市場に盲従するかのように株価だけが急騰している。株価の上昇は日米だけでなく世界的な現象だが、どうして投資家と称する人たちは経済の先行きを恐れないのだろうか。

以前にこの欄でも書いたが、おそらくインフレに伴って名目の成長率が伸びているため、投資家は相場の先行きを楽観的に見ているのだろう。米CPIには関税に伴うインフレが着実に忍び寄っている。いまのところ米企業の多くが価格転嫁を控えているため、物価への影響は軽微にとどまっている。価格転嫁すれば同業他社に顧客を奪われかねない、これが企業にとって目先の最大の懸念だ。要するに我慢比べしている。だが、こうした状況は長続きしない。業績悪化に耐えかねて、いずれは価格転嫁に踏み切らざるを得なくなる。その時、消費者物価の上昇に賃上げが追いつくか、これが目先最大のポイントになる。賃上げの前提条件は売上増だ。関税とインフレ、価格転嫁の遅れで賃上げの原資も枯渇しつつある。人員整理も本格化するだろう。これはスタグフレーションへの道だ。それを回避する方策は大幅減税しかない。果たしてトランプ政権はそこに行き着くのだろうか・・・。