▽【米国市況】S&P500最高値6600も突破、利回り低下-米利下げ確実視
Rita Nazareth
- 利下げが来年も続くという観測を米当局が追認するかどうかに注目
- ドル指数ほぼ2カ月ぶり安値、円は上昇し147円台前半で推移
15日の米国株は上昇。市場では今週の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合での利下げ決定は確実視されており、一連の利下げが来年に入ってからも続くという観測を当局が追認するかどうかに注目が集まっている。
| 株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| S&P500種株価指数 | 6615.28 | 30.99 | 0.47% |
| ダウ工業株30種平均 | 45883.45 | 49.23 | 0.11% |
| ナスダック総合指数 | 22348.75 | 207.65 | 0.94% |
14兆ドル(約2060兆円)という時価総額の拡大をもたらした米国株の上昇相場は転換点に向かいつつある。FOMCが利下げを決定した場合、トランプ大統領の2期目がスタートしてから初めてとなり、注目が集まる。今週はまた、主要10通貨の半分の国・地域で政策設定が決まる重要な週だ。
S&P500種株価指数は6600を突破。テスラは3.6%上昇し、年初来での下げを埋めた。イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が約10億ドル(約1470億円)相当の自社株を購入したことが明らかになった。アルファベットは時価総額が初めて3兆ドルの大台を突破した。
この日はまた、米中がTikTokの米国内での運営を維持するための枠組みで合意したことも市場のセンチメントを押し上げた。トランプ氏は、中国の習近平国家主席と19日に話すと述べた。
関連記事:トランプ大統領、中国の習主席と19日会談-TikTokの枠組みで合意 (3)
労働市場の軟化を示す最近の兆候や、直近のインフレ指標でサプライズがなかったことから、大半のエコノミストは0.25ポイント利下げを確実視している。今後の大きな焦点は、その後の緩和ペースだ。物価指標は依然として当局の目標を上回っている。
モルガン・スタンレー傘下Eトレード・ファイナンシャルのクリス・ラーキン氏は「今後の焦点はFOMCがどれほど積極的に動くかだ」とし、「現在は雇用に重点を置いているものの、もう一つの責務を忘れたわけではないと、FOMCは強調するだろう」と述べた。

FOMCは17日、政策決定のほかに四半期ごとの経済・金利予測も発表する。この予測には、金利予測分布図(ドットプロット)が含まれる。その後、連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が記者会見を開く。6月会合の時点では、年内2回の利下げ見通しが示された。
シティー・インデックスのファワド・ラザクザダ氏は、トレーダーが特に注目しているのはパウエル議長の記者会見でのトーンとドットプロットだとみる。
「私は、インフレが『しっかり抑制されている』ないし、労働市場が『予想以上に冷え込んでいる』といった言及があった場合に市場がどう反応するかを注視する」とラザクザダ氏。「そうした発言はドルの弱気派には好材料となる。一方、FOMCが慎重姿勢で『様子見』のアプローチを示唆するようであれば、相場の上昇は少なくとも一時的には停滞する可能性がある」と述べた。
ラザクザダ氏はまた、FOMC会合前後に発表される指標が市場を活気づかせる材料になると指摘。16日発表の小売売上高は、軟着陸シナリオを裏付けるのか、あるいは消費需要を巡る新たな懸念を引き起こすのか注目されると述べた。
またソーンバーグ・インベストメント・マネジメントのロン・エリクソン氏は、利下げサイクル開始時にFOMCが実施したような50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の追加利下げは年内は時期尚早だとの見方を示した。
「インフレが予想をやや上回ったことを踏まえると、FOMCは慎重姿勢を維持するだろう」とエリクソン氏。「不確定要素は依然としてインフレだ。年内にインフレがどう展開し、厳しいスタグフレーションのような状況に陥るのかどうかが重要な問題だ。スタグフレーションとなれば、FOMCは非常に難しい立場に置かれることになる」と述べた。
エリクソン氏は、労働市場が軟化する中、年内残りの期間は会合ごとに利下げが実施されるとの見方に傾いていると語った。
国債
米国債相場は上昇(利回り低下)。利回りは全年限で下げ、期間が短めの国債利回りは今年の最低水準付近となった。雇用ペースの減速を受け、FOMCが粘着性のあるインフレや関税による物価上昇圧力に対する優先度を下げて、景気下支えに動くとの見方が強まっている。
| 国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
|---|---|---|---|
| 米30年債利回り | 4.66% | -2.4 | -0.52% |
| 米10年債利回り | 4.04% | -2.9 | -0.71% |
| 米2年債利回り | 3.54% | -1.9 | -0.53% |
| 米東部時間 | 16時53分 |
金利スワップ市場では、今週のFOMC会合での0.25ポイント利下げが確実視されているほか、10月と12月の会合でも同様の利下げが高い確率で織り込まれている。先物市場などでは、さらに積極的な一連の利下げを見込むポジションも見られた。
ただリスクは、パウエル議長が会合後の記者会見でより慎重な姿勢を示し、雇用とインフレのデータを注視する必要性を強調する可能性がある点だ。
マッコーリー・グループの世界通貨・金利ストラテジスト、ティエリー・ウィズマン氏はリポートで、「パウエル氏はバランスを取ろうとするだろう」と指摘。「雇用の伸びの下振れリスクを改めて強調するだろうが、10月以降に長期の利下げ局面があると示唆することは控えるとみられる」と記した。

為替
外国為替市場ではドルが下落。ブルームバーグのドル指数はほぼ2カ月ぶりの安値に下げた。市場では、FOMC会合を含む主要中央銀行の政策会合に注目が集まっている。
| 為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| ブルームバーグ・ドル指数 | 1194.93 | -3.41 | -0.28% |
| ドル/円 | ¥147.40 | -¥0.28 | -0.19% |
| ユーロ/ドル | $1.1762 | $0.0028 | 0.24% |
| 米東部時間 | 16時53分 |
ドル指数は一時0.3%下げ、7月24日以来の低水準を付けた。FOMCがハト派的なシグナルを示せば、ヘッジファンドはドル安の動きに追随する構えだと、複数のトレーダーは指摘する。

円は対ドルで上昇し、1ドル=147円台前半で推移した。

原油
ニューヨーク原油先物相場は続伸。年内に供給過剰になると予想されているものの、ロシア産原油に対する制裁強化の動きが意識された。
ウクライナはロシアの石油インフラへの攻撃を強化しており、週末には同国最大級の製油所をドローン(無人機)で攻撃した。この数日前には、バルト海の主要輸出港プリモルスクを標的に攻撃を実施していた。
トランプ米大統領は欧州に対して、ロシア産原油の購入をやめるべきだとあらためて訴えた。同氏は週末に、ロシア産原油に対する「大規模な」制裁に踏み切る用意があると表明。北大西洋条約機構(NATO)加盟国が同様の措置を講じることが前提としていた。ベッセント米財務長官はその後、欧州が同調しない限り、米国はロシア産原油に対する制裁措置を実行しないと述べた。
関連記事:トランプ氏、ロシアに対する「大規模な」制裁の用意-NATOが同調なら

原油は8月初旬以降、バレル当たり約5ドルのレンジで推移している。地政学的リスクと弱気な需給要因が交錯するなか、ヘッジファンドは米国産原油に対する強気ポジションを過去最低水準に縮小した。石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成するOPECプラスは予定前倒しで新たな増産を開始しており、国際エネルギー機関(IEA)は来年に過去最大の供給余剰が生じると予測している。
フォレックス・ドット・コムの市場アナリスト、ラザン・ヒラル氏は、ここ最近のウクライナによるロシア石油関連施設へのドローン攻撃が「原油価格の61ドル超えを支えた」と指摘。その上で「強気な見方は維持されているものの、需要リスクや貿易の不安定さが投資家心理を圧迫しており、チャートはまだ明確な上昇トレンドを示していない」と述べた。
市場は今週のFOMC会合に注目している。FOMCは利下げサイクルを再開するとおおむね予想されている。利下げが実施されれば、経済活動を刺激し原油需要を押し上げる可能性があるが、効果の度合いについては市場で見解が分かれている。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェストテキサス・インターミディエート(WTI)先物10月限は61セント(1%)高の1バレル=63.30ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント11月限は0.7%上昇の67.44ドル。
金
金スポット相場は続伸し、最高値を更新した。市場は今週予想される米金融緩和に備え、年内の追加利下げに関する手掛かりを求めている。
スポット価格は一時1オンス=3685.64ドルを付けた。先週まで週間ベースで4週続伸していた。労働市場の弱さが示される中、市場では今週の0.25ポイント利下げが見込まれている。金利スワップ市場は少なくとも年内あと1回の利下げを織り込んでおり、3回目の利下げが行われる可能性も高いとみている。
ANZグループ・ホールディングスのダニエル・ハインズ氏とソニ・クマリ氏は「関税関連のニュースに代わって、今後はマクロ経済指標が相場を主導する可能性が高い」とリポートで指摘した。

トランプ大統領がFRBのクック理事解任に動くなど、FRBに前例のない圧力をかけていることが、新たな材料となっている。ゴールドマン・サックス・グループは、民間が保有する米国債のわずか1%が金に流れるだけで、金価格は5000ドル近辺にまで上昇する可能性があるとみている。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時19分現在、35.44ドル(1%)高の1オンス=3678.58ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は32.60ドル(0.9%)上昇の3719.00ドルで引けた。
原題:S&P 500 Tops 6,600 as Bond Yields Fall Before Fed: Markets Wrap(抜粋)
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