▽【米国市況】株が下落、最高値更新の勢い鈍る－FOMC決定控え慎重姿勢
Rita Nazareth
- 米国債は上昇、小売売上高が堅調でもFOMC利下げ予想は揺るがず
- ドル売り強まる、ユーロは4年ぶり高値－円上昇し一時146円28銭
16日の米国株は下落。米連邦公開市場委員会（FOMC）の政策決定を前に、大きな取引は手控えられた。向こう数カ月の市場を左右する金利の道筋に関し、トレーダーらは手掛かりを待っている。
| 株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| Ｓ＆Ｐ500種株価指数 | 6606.76 | -8.52 | -0.13% |
| ダウ工業株30種平均 | 45757.90 | -125.55 | -0.27% |
| ナスダック総合指数 | 22333.96 | -14.79 | -0.07% |
朝方発表された８月の米小売売上高は堅調な内容だったものの、相場の動きは限定的で、過去最高値付近でやや勢いを失った。
８月の小売売上高は前月比0.6%増。７月も0.6%増だった。データはインフレ調整を加えていない。国内総生産（GDP）の算出に使用される飲食店と自動車ディーラー、建設資材店、ガソリンスタンドを除いたコア売上高（コントロールグループ）は、8月に0.7%増加。7－9月（第3四半期）がこれまでのところ、健全な勢いを維持していることを示唆した。
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モルガン・スタンレー・ウェルス・マネジメントのエレン・ゼントナー氏は「米消費者は前向きな姿勢を維持しているようだ」と指摘。「経済にとっては良いニュースだが、FOMCがどの程度積極的に利下げすべきかを巡る議論を活発にさせる可能性がある」と述べた。
FOMC当局者は依然としてインフレを目標水準に下げることに注力しているものの、労働市場の一段の悪化を防ぐために利下げを実施すると広く予想されている。
トレードステーションのデービッド・ラッセル氏は「労働市場が弱くても、消費者にはまだ悪影響は及んでいない」とした上で、「これらの数字があすのFOMC利下げを妨げることはないが、長期的なハト派期待をやや後退させる」と述べた。
eToro（イートロ）のブレット・ケンウェル氏は、最近の労働市場のデータを踏まえ、小売売上高は今週を迎える上で大きな焦点になっていたと指摘。
「言い換えれば、最近の雇用の弱さが消費支出に影響するのかということだ。短く答えるとすれば『ノー』のようだ」と同氏は述べた。
ケンウェル氏はまた、企業の利益予想の上方修正が続いており、消費支出も堅調を維持していると指摘。こうした追い風が続く限り、株式市場は一時的に足踏みする場面があっても良好なパフォーマンスを継続できるとの見方を示した。
LPLファイナンシャルのジェフ・ローチ氏は「歴史的に見て、景気後退局面ではない環境でFOMCが利下げを開始すると、リスク資産が良好なパフォーマンスを示すというのは重要なポイントだ」と指摘した。
ロンバー・オディエ・インベストメント・マネジャーズのフロリアン・イエルポ氏は、小売売上高統計は経済にとって明るいニュースが一つ増えたことを意味するが、最近の株式相場の上昇の多くは、今後12カ月に利下げが6回行われるとの期待に支えられていると指摘。
「そうした6回の利下げは、労働市場の悪化が顕著な場合にのみ実現し得るものだが、これまでの株価上昇はその前提に依存している」とイエルポ氏は述べた。
米国債
米国債相場は上昇（利回りは低下）。米小売売上高は市場予想を上回ったものの、FOMCが軟化する労働市場を支えるための利下げに踏み切るとの市場の見方は揺るがなかった。
| 国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
|---|---|---|---|
| 米30年債利回り | 4.65% | -1.2 | -0.25% |
| 米10年債利回り | 4.03% | -1.0 | -0.24% |
| 米２年債利回り | 3.51% | -2.9 | -0.83% |
| 米東部時間 | 16時44分 |
金融政策の変化に敏感な短期債の利回りが最も低下。2年債は一時3ベーシスポイント（bp、1bp＝0.01%）下げた。20年債入札が堅調な需要を集めたことを受け、ニューヨーク時間午後の取引では7年債から30年債にかけて、利回りが少なくとも1bp低下した。
予想を上回る8月の小売売上高を受け、米国債利回りは一時、この日の最高に達した。小売売上高のデータは、今回のFOMC会合で見込まれる利下げ幅が0.25ポイントを超える可能性が低いことを裏付けた。
TDセキュリティーズの金利ストラテジスト、ヤン・ネブルジ氏は「FOMCのシナリオが大きく変わることはないだろう。予想されているのは0.25ポイントの利下げであって、0.5ポイントの可能性は極めて低かった」と分析。「基調的な勢いは崩れておらず、きょうのデータの減速予想を根拠に大幅利下げを期待していた向きにとっては、その裏付けは得られなかったことになる」と述べた。
為替
外国為替市場では、ドル売りが強まる中でユーロが4年ぶり高値に上昇した。今週のFOMC会合では0.25ポイントの利下げが見込まれている。
| 為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| ブルームバーグ・ドル指数 | 1188.90 | -6.03 | -0.50% |
| ドル／円 | ¥146.48 | -¥0.92 | -0.62% |
| ユーロ／ドル | $1.1863 | $0.0102 | 0.87% |
| 米東部時間 | 16時45分 |
クレディ・アグリコルCIBのG10為替調査・戦略責任者、バレンティン・マリノフ氏は「パウエル議長率いるFOMCが市場の極端なハト派予想を裏付けられなかった場合、市場参加者はハト派観測で買い、事実で売るという為替相場の値動きに巻き込まれるリスクを抱えている」と分析した。
ユーロは1%近く上昇し、1ユーロ＝1.1878ドルを付けた。日中ベースでは2021年9月以来のユーロ高水準。
円も対ドルで上昇。ニューヨーク時間の午後に一時146円28銭を付けた。これは8月14日以来の円高・ドル安水準。
原油
ニューヨーク原油先物相場は続伸。ロシアの石油業界に対する圧力が強まっていることや、中東での紛争再燃が材料視された。
ロイター通信によれば、ウクライナによる相次ぐドローン攻撃を受け、ロシアのパイプラインを運営する国営企業トランスネフチは国内の石油生産者に対し、貯蔵用に受け入れる原油量を削減する方針を伝えた。トランスネフチはロシア産原油の80%余りを取り扱う。同社はその後、この報道を否定したが、価格は高止まりした。
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ウクライナはロシアのボルガ地方にあるサラトフ製油所を攻撃したと、ウクライナ参謀本部が16日に発表。欧米諸国はロシアのプーチン大統領を交渉の場に引き出そうと、新たな制裁を検討している。
ウクライナ軍はここ数週間、ロシアのエネルギー関連施設へのドローン攻撃を強化しており、同国最大のバルト海沿岸の石油ターミナルであるプリモルスクも標的となった。
ナターシャ・カネバ氏らJPモルガン・チェースのアナリストはプリモルスクに言及し、「この攻撃は国際石油市場を混乱させる意思の強まりを示唆しており、原油価格に上振れ圧力を加える可能性がある」と指摘。ロシアの製油ペースは日量500万バレルを下回り、2022年4月以来の低水準になっていると付け加えた。
イスラエル軍は長らく予告していたパレスチナ自治区ガザのガザ市中心部に対する侵攻を、ついに開始した。中東での対立が一層激化すれば、世界市場で原油供給の約3分の1が脅かされる恐れがある。
関連記事：イスラエル軍、ガザ市中心部に侵攻－ジェノサイドと国連調査委 (2)
ニューヨーク商業取引所（NYMEX）のウェストテキサス・インターミディエート（WTI）先物10月限は1.22ドル（1.9%）高の1バレル＝64.52ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント11月限は1.5%上昇の68.47ドル。
金
金スポット相場は続伸し、連日で最高値を更新した。市場は今週の米利下げを見込んでおり、今後数カ月に予想される追加金融緩和の規模を意識する展開となった。
スポット価格は一時1オンス＝3700ドルを突破した。ブルームバーグのドル指数が約10週間ぶりの安値に下げたことが追い風になった。今週の利下げは既に織り込まれているが、四半期の経済予測やドットプロット（金利予測分布図）が公表され、パウエル連邦準備制度理事会（FRB）が記者会見を開く。
一連の雇用関連データが弱い内容となり、主要なインフレ指標で大きなサプライズがなかったことから、年内のさらなる利下げ観測が広がっている。金利低下は利息を生まない金投資に追い風となる。
トランプ米大統領がクックFRB理事解任に動くなど、FRBに前例のない圧力をかけていることも、よりハト派的な金融政策への期待につながっている。マイラン大統領経済諮問委員会（CEA）委員長はFRB理事に就任。FRBの報道官によると、同氏は今回のFOMC会合に出席している。
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金スポット価格はニューヨーク時間午後2時58分現在、11.85ドル（0.3%）高の１オンス＝3690.84ドル。ニューヨーク商品取引所（COMEX）の金先物12月限は6.10ドル（0.2%）上昇の3725.10ドルで引けた。
原題：Stocks Halt Record-Breaking Rally in Fed Countdown: Markets Wrap（抜粋）
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