ロシア経済が西側陣営の制裁の影響を受けているようだ。ウクライナ戦争開始し以来すでに3年半強が経過した。この間、EUをはじめ西側陣営はウクライナに対して武器支援を行うと同時に、強力な経済制裁を課してきた。それでもロシア経済は軍事産業を中心に拡大が続いており、プーチンは「制裁によってロシア経済が停滞することはない」と、いかにもこの人らしい強気の発言をくり返してきた。そんな中で昨日、ロイターはロシアで物々交換が拡大しているとの記事を配信した。「ロシアで物々交換拡大、中国車を小麦で決済 西側の制裁受け」とタイトルされている。決済市場の関係者はロイターに、「中国の銀行は2次制裁リストに載ることを恐れており、ロシアからの資金を受け入れていないと語った」とある。物々交換の実態は明らかではないが、部分的だとしてもこれは経済制裁の効果だろう。

記事には「ロシアの対外貿易で1990年代以来初めて物々交換が増加している」とある。「物々交換」と聞いただけで、原始的な経済取引を連想する。人類は貨幣を生み出す前まで、物と物を直接交換することによって経済取引を拡大してきた。交換比率は当事者の合意によって形成されていた。ロシアが中国車を輸入する際、貨幣の代わりをするのは小麦や鉄鋼・アルミ合金などだ。交換比率は重さだろうか、利便性だろうか。想像だが車と小麦の市場価格を一旦ドルに換算し、交換比率を決めるのが合理的だ。ドルではなくルーブルでも人民元でもどちらでもいい。その際強い通貨の方が得をする。中国は人民元での換算を要求するだろうし、ロシアはルーブルを主張する。強力なパートナーシップで結ばれている両国だが、交換比率で揉めることはないのだろうか。余計な心配をする。

記事に戻ろう。ロイターは決済市場の関係者の話を引用している。どうやら物々交換を主張しているのは中国らしい。その裏には2024年にロシア経済省がまとめた「対外物々交換取引の手引き」があるという。これはロシアが企業を対象にまとめた制裁回避のための助言集だ。通貨による決済は取引の証拠が残る。これを回避するための物々交換だろう。ロイターは「最近までこのような取引への関心は薄かったが、先月、少なくとも1社の中国企業がエンジンと引き換えに鉄鋼・アルミ合金を求めざるを得なくなった」と報じている。物々交換の全体像は明らかでないが、こうした取引は着実に増えているようだ。武力行使による他国への侵略も異常だが、仮想通貨による決済が進む中で物々交換に頼らざるを得ないロシアと中国。IT時代に逆行しているとしか言いようがない。