▽【米国市況】主要株価指数がそろって最高値更新-利下げでリスク選好
Rita Nazareth
- FOMCの利下げが企業業績押し上げるとの見方、リスク選好強まる
- 国債は下落、追加利下げ見通しに疑問-円は下げ一時148円27銭
18日の米国株相場は上昇。米連邦公開市場委員会(FOMC)の利下げが企業業績を押し上げるとの見方が広がった。投資家のリスク選好が強まり、主要株価指数は過去最高値を更新した。
| 株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| S&P500種株価指数 | 6631.96 | 31.61 | 0.48% |
| ダウ工業株30種平均 | 46142.42 | 124.10 | 0.27% |
| ナスダック総合指数 | 22470.72 | 209.39 | 0.94% |
FOMCは前日、今年初となる利下げを決定し、年内の追加利下げも示唆した。S&P500種株価指数、ナスダック100指数、ダウ工業株30種平均、ラッセル2000指数は全て最高値を更新した。ブルームバーグがまとめたデータによると、こうした同時の最高値更新は今世紀に入り、25回しか起きていない。
関連記事:FOMCが25bp利下げ、パウエル議長が労働市場の良い時代終了を宣言 (3)

極めて高いバリュエーションと季節的な弱気要因が重なる中、金融緩和策は株式強気派にとって大きな支えとなっている。LPLファイナンシャルによれば、過去75年間においてS&P500種は9月に平均で0.7%下落。今月はこれまでに2.5%余り上昇している。
ブランク・シャイン・ウェルス・マネジメントのロバート・シャイン氏は「株式相場が最高値水準にあり、経済がなお成長している時期にFOMCは利下げしている」と指摘。「この状況は株式にとって強気材料だ」と続けた。
S&P500種では300銘柄余りが上昇。テクノロジー株がけん引した。ナスダック100は1.1%高。エヌビディアがインテルに50億ドル出資するとの報道を受け、インテル株は23%上昇した。ラッセル2000は2.5%高。

金利が低下基調にあり、FOMCが今後さらに数回の利下げを見込んでいることから、シャイン氏は大型テクノロジー株と金融株に対して一段と強気になっていると説明。
「大型テクノロジー株は低金利環境で相対的に好調なパフォーマンスを見せる傾向がある。また金融株も、利下げに伴うM&A(企業の合併・買収)や住宅ローン活動の活発化から恩恵を受ける可能性がある」と述べた。
ミラー・タバクのマット・メイリー氏は、市場にとってテクノロジー株は重要な存在だとしつつ、9月残りの期間については、小型株が最高値を試す動きをテクノロジーセクター以上に注視していくと述べた。
「今後1、2週間でその水準を大きく上抜けることができれば、極めて強気な材料になる」とメイリー氏。ただ「その水準に届かない(またはわずかに上回る程度だった)場合は、非常に弱気な展開になる」と付け加えた。

S&P500種が最高値を更新し続けることで、バブル醸成への懸念がここ数週間に広がっている。理由として挙げられるのは、同指数の膨らんだバリュエーションだ。
今年の上昇の約半分は大型テクノロジーのわずか5銘柄がけん引している点を、問題視する指摘もある。ただ細かく見ると、テクノロジー大手は利益成長で高いバリュエーションをおおむね正当化している。
シティー・インデックスのファワド・ラザクザダ氏は「今のところ投資家は下落局面ごとに積極的に買い入れている。AIブームの熱気と大手テクノロジー企業の堅調な決算がその大きな理由だ」と分析。「気がかりなのは、テクノロジー株の勢いが冷めた時に、市場全体が現在のバリュエーションを正当化するのが難しくなりそうな点だ」と述べた。
国債
| 国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
|---|---|---|---|
| 米30年債利回り | 4.72% | 3.2 | 0.69% |
| 米10年債利回り | 4.11% | 1.9 | 0.47% |
| 米2年債利回り | 3.57% | 1.5 | 0.41% |
| 米東部時間 | 16時53分 |
米国債相場は下落(利回りは上昇)。新規失業保険申請件数のデータは、年内の追加利下げ見通しに疑問を投げ掛ける内容となった。
今回の失業保険申請件数は大幅減となり、労働市場の底堅さが示唆されたが、これはインフレがなお目標を上回る中で利下げを行うFOMCの論拠と相いれない。
関連記事:米失業保険申請件数、約4年ぶりの大幅減-継続受給者数も減少 (2)
一方、この日の10年物インフレ連動債(TIPS)入札は需要が低調となり、物価安定を回復させるFOMCの能力に市場が引き続き自信を持っていることが示唆された。
ナティクシス・ノースアメリカの米金利戦略責任者、ジョン・ブリッグス氏は「FOMCはきのう、雇用の責務の優先度を高めた。よって失業保険申請件数は今後より重要になる」と指摘。10月3日に発表される次の雇用統計まで、米国債は「利回りに上昇バイアスがかかるだろう」と予想した。
為替
外国為替市場ではブルームバーグのドル指数が上昇。新規失業保険申請件数の大幅減に反応した。ポンドは下落。イングランド銀行(英中央銀行)が政策金利を据え置き、年内の追加利下げの可能性に慎重な姿勢を示したものの、ポンドは売られた。
関連記事:英中銀が政策金利据え置き-QT縮小ペース減速、長期債売却を抑制 (3)
| 為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| ブルームバーグ・ドル指数 | 1195.91 | 5.08 | 0.43% |
| ドル/円 | ¥148.01 | ¥1.02 | 0.69% |
| ユーロ/ドル | $1.1783 | -$0.0030 | -0.25% |
| 米東部時間 | 16時54分 |
ブルームバーグ・ドル・スポット指数は一時0.6%上昇し、日中ベースでは2日以来の大幅な上げとなった。
BMOキャピタル・マーケッツの米金利戦略責任者、イアン・リンジェン氏は「全体として堅調な経済データがそろい、『会合ごとに判断する』というパウエル議長のメッセージを裏付けた。もっともわれわれは、10月の0.25ポイント利下げが最も可能性の高いシナリオだとなおみている」と述べた。
円は対ドルで下落。一時0.9%安の148円27銭を付けた。
三井住友信託銀行米州部マーケットビジネスユニットの山本威調査役はドル・円相場について、「前回7月の日銀会合では、植田総裁が利上げ姿勢を維持しつつも時期などで具体的な言及をせず、円売りを招いた」と指摘。
今回も同様の展開となった場合、「円は対ドルで一時的に149円程度まで大幅に下げる可能性もある」と述べた。
ただ、中期的なドル安志向、将来的には日銀の利上げも控える中、ドルが大きく上昇した場面ではドル・円の売り場となって、円が徐々に値を戻す展開を想定すると語った。

原油
ニューヨーク原油先物相場は続落。トランプ米大統領がウクライナでの戦争終結に向けロシアに圧力をかける手段として、制裁よりも低価格を望むと示唆したことなどを受け、荒い値動きとなった。
トランプ氏は原油価格を低く抑える方針を改めて示し、ロシア産原油の流通を抑制する国際的取り組みへの期待が後退した。米政府は欧州が同調しない限り、ロシア産原油に対する制裁を実行しない考えをこれまで示している。
トランプ氏がこの日、「原油価格を下げれば戦争は終わる」と記者団に述べると、原油は一段安となった。ロシアの戦費となる石油収入を絶つ戦略を、同氏が重視していることが示唆された。トランプ氏はまた、ロシア産原油の購入をやめるよう各国に改めて呼びかけた。

A/Sグローバル・リスク・マネジメントの調査責任者、アルネ・ローマン・ラスムッセン氏は前日の米利下げを通過して、「市場の関心は需給ファンダメンタルズの弱さよりも、制裁や地政学要因に戻っている」と述べた。
ウクライナはロシアのエネルギー施設への攻撃を強化しており、18日には新たに製油所2カ所を攻撃した。稼働停止の動きが広がれば、世界の原油需給を逼迫(ひっぱく)させ、ロシアの戦費を圧迫する可能性がある。
CIBCプライベート・ウェルス・グループのシニア・エネルギー・トレーダー、レベッカ・バビン氏は「供給リスクや現物市場の逼迫と、予想される余剰との間で綱引きが続いており、原油価格はレンジ内にとどまっている。他の資産を押し上げているリスク選好の動きにも反応が鈍い」と述べた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェストテキサス・インターミディエート(WTI)先物10月限は48セント(0.75%)安の1バレル=63.57ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント11月限は0.75%下落の67.44ドル。
金
金スポット相場は続落。FOMCが前日に追加利下げに関して慎重姿勢を示し、ドルが上昇したことが背景にある。
ブルームバーグのドル指数が上昇する中、金は一時0.9%下げた。金はドル建てで取引されるため、ドルが上昇すると金にはマイナスとなる。

金は年初来では約39%上昇しており、値上がり率でS&P500種を上回り、1980年に記録したインフレ調整後の最高値も超えた。貿易摩擦や地政学不安を背景に安全需要が高まったほか、各国・地域の中央銀行による購入や、上場投資信託(ETF)への資金流入も金の上昇を支えた。
中銀の独立性への政治的介入は金をさらに押し上げる可能性がある。ドイツ銀行は17日、金への強気見通しを示し来年の平均価格予想を1オンス=4000ドルに引き上げた。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時40分現在、17.16ドル(0.5%)安の1オンス=3642.74ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は39.50ドル(1.1%)下落の3678.30ドルで引けた。
原題:S&P 500, Nasdaq, Dow, Russell 2000 Set for Records: Markets Wrap(抜粋)
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