▽【米国市況】S&P500最高値、AIに一段と強気-円上昇し147円台後半

Rita Nazareth

  • エヌビディアがOpenAIに最大1000億ドル投資へ、楽観強まる
  • ドル指数は小反落、米国債は短期中心に利回り上昇-週内にPCE発表

22日の米株式相場は続伸。米半導体大手エヌビディアの大型投資報道を受け、人工知能(AI)に対する楽観論が一段と強まった。円は対ドルで上昇し、147円台後半での推移となった。 

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数6693.7529.390.44%
ダウ工業株30種平均46381.5466.270.14%
ナスダック総合指数22788.98157.500.70%

  テクノロジー株がけん引する形で、S&P500種株価指数は終値ベースで今年28回目の最高値更新となった。

  エヌビディア株は一時、前週末比4.5%上昇した。同社はChatGPTを展開する米OpenAIに最大1000億ドル(約14兆7900億円)を投資する。

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   ゴールドマン・サックス・グループのヘッジファンド担当責任者トニー・パスクァリエッロ氏は、大型ハイテク企業を中心に株式相場が再び最高値を更新している中、投資家は「責任ある強気姿勢」を取るべきだとリポートで指摘

  「米国の巨大ハイテク株という貨物列車の前に立ちはだかるべきかと問われれば、それは違うと考えている」と述べた。

Traders On The Floor Of The New York Stock Exchange As S&P 500 Holds At Record
米国株はまた最高値更新Photographer: Michael Nagle/Bloomberg

  この日は米金融当局者による発言機会が複数あった。セントルイス連銀のムサレム総裁は、インフレが高止まりする中で追加利下げの余地は限られているとの見解を示した。クリーブランド連銀のハマック総裁は、景気過熱を避けるため利下げに慎重な姿勢を強調した。

  モルガン・スタンレーのストラテジストらは、2026年には市場の関心が、労働市場軟化への懸念から根強いインフレに対する連邦準備制度理事会(FRB)の許容度へと移っていく公算が大きいと指摘。

  マイケル・ウィルソン氏率いる同社のチームは「もし政権が来年、高圧経済を志向する一方、FRBが利下げを行うなら、売上高と利益の伸びは予想よりずっと強くなる可能性が高い」とリポートに記した。

  RGAインベストメンツのリック・ガードナー氏は、9月は株式相場が軟調となる傾向にあるが、これまでのところはそうなっていないと指摘。その理由として米利下げと力強い企業業績、堅調な経済成長、抑制されたインフレという極めて有利な環境のおかげだと述べた。  

  「株式相場の上昇が力強いため、バリュエーションが高まり、新規資金を投じるのが難しくなっている。銘柄選別とボトムアップ型のアプローチがますます重要になってくる」と述べた。

  UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのマーク・ヘーフェル氏は「現在の水準が長期平均と比べて高いことを踏まえると、当然のことながら、慎重さが必要になる理由が複数ある」と指摘。「最近の力強い上昇相場の後で、調整局面が訪れても驚きではないと考えている」と述べた。

  同氏は基本シナリオとして、S&P500種が2026年6月までに6800に達すると予想。強気シナリオでは7500を付けるとみている。

外為

  外国為替市場ではドル指数が反落。週内に発表される主要な経済指標や米金融当局者の発言を見極めたいとのムードが広がる中で、小幅に下げた。 

  円は対ドルで上昇し、一時0.2%高の1ドル=147円66銭を付けた。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1195.97-2.53-0.21%
ドル/円¥147.73-¥0.22-0.15%
ユーロ/ドル$1.1802$0.00560.48%
  米東部時間16時55分

  UBSインベストメント・バンクは、ドル・円相場の年末予想を1ドル=143円とした。従来予想は130円だった。

  同社ストラテジストらは、インフレリスクが高まっているにもかかわらず、政治的な不確実性を一因として、日銀がハト派的姿勢を維持すると市場が見込んでいると指摘した。

  マイランFRB理事はこの日、政策金利が高過ぎるとして、労働市場を守るために今後数カ月で積極的な利下げを実施すべきだと主張した。

  マッコーリーのティエリー・ウィズマン氏は「ムサレム、ボスティック、ハマック各連銀総裁は、一段とタカ派寄りの姿勢を示している」と指摘。「ドルが下落し、株式相場が上昇していることに驚いている。市場が今後4、5回の追加利下げを見込んでいることをFRBやパウエル議長が戒めても、誰も本気で信じていないようにみえる」と述べた。

  アビバ・インベスターズのシニアエコノミスト兼ストラテジスト、バシレイオス・ギオナキス氏は「連邦公開市場委員会(FOMC)決定を受け、為替相場は上下両方向に一段と振れやすくなったかもしれない」とリポートで指摘。現在の循環的および構造的要因は、ドルの一段安を促していると述べた。

  ドイツ銀行はドル軟調の展開が続き、年末までに1ドル=140円を割り込む可能性があるとの予想を示した。

  同行の外為調査責任者ジョージ・サラベロス氏はリポートで、「ここ数カ月で貿易戦争が融和的になり、外国投資家が米国資産に戻るなど、ドルにとってある程度前向きな動きが見られた」と指摘。その上で「しかし本質的には弱気の見方を維持している」と述べた。

関連記事:ドル安続き年末までに140円割れ、円には長い上昇余地-ドイツ銀行予測

  一方、円については、「非常に割安な水準から始まっているため、この後の自民党総裁選後に政治的な環境が整えば、円には長い上昇余地がある」との見方を示した。

  この日、主要通貨中で米ドルに対して最も下げたのはカナダ・ドルだった。

米国債

  米国債相場は短期ゾーンを中心に下落(利回り上昇)。週内に短中期債の入札を控える中、この日は社債発行も多かった。

  23日には2年債入札が予定されている。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.76%1.90.39%
米10年債利回り4.15%1.90.47%
米2年債利回り3.60%2.90.82%
  米東部時間16時55分

  26日に発表される8月の米個人消費支出(PCE)コア価格指数は、前月比0.2%上昇の予想。7月の0.3%上昇に比べて伸びが鈍化する見通しで、労働市場の弱さへの対処を迫られる政策当局にとっては、一息つく余地が与えられそうだ。

  ただ前年同月比では2.9%上昇と、インフレの高止まりが示される見通し。

  TDセキュリティーズのオスカー・ムニョス氏は「8月PCEでは、関税の財価格への段階的な転嫁が示される一方、サービス分野のインフレは鈍化する可能性が高い」と指摘。「個人所得と個人消費支出も伸びが鈍る公算が大きい」と述べた。

原油

  ニューヨーク原油先物相場はほぼ横ばい。市場では、欧州連合(EU)によるロシア産エネルギーへの新たな対応などが意識された。

  EUが準備する対ロシア追加制裁は第三国に拠点を置く石油関連企業を対象とする方針であり、中国企業やインド企業が影響を受ける見通しだ。

  トランプ米大統領は20日に欧州各国に対し、ロシア産原油の購入停止を改めて呼びかけた。一方でマクロン仏大統領は、EUによるロシア産エネルギー輸入は「ごくわずかだ」と述べた。

  原油価格は8月初め以降、5ドルの狭いレンジで推移。市場参加者は年内の供給過剰見通しと地政学的リスクの両方を意識している。BOKファイナンシャル・セキュリティーズのシニアバイスプレジデント、デニス・キスラー氏は、このレンジを抜け出すには、米国とEUが歩調を合わせ、ロシア産原油購入国に一段と厳しい措置を講じる必要があると指摘。「ロシアだけに厳しい制裁を課しても効果は限定的だ」と語った。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェストテキサス・インターミディエート(WTI)先物10月限は、4セント(0.1%未満)安の1バレル=62.64ドルで終了。同限月はこの日が最終取引日。中心限月の11月限は0.2%安の62.28ドル。ロンドンICEの北海ブレント11月限は0.2%下落の66.57ドル。

  金相場は上昇し、スポット価格は過去最高値を更新した。金を裏付けとする上場投資信託(ETF)への資金流入は3年ぶりの高水準に達した。投資家の間には、米利下げ局面がさらに続くとの見方がある。

  金は今年、主要商品の中でも有数の好パフォーマンスを見せている。米利下げや各国中銀による金購入、地政学的緊張による安全資産需要など複合的な要因が背景にある。ゴールドマン・サックス・グループなど大手銀行はさらなる上昇を見込んでいる。

  ANZバンキング・グループの商品ストラテジスト、ソニ・クマリ氏は「テクニカル指標はかなり強気の動きを示しており、より大幅な利下げへの期待も高まっている」とし、金価格が今後さらに上値を伸ばす可能性が示されていると語った。

  一方で、金相場の急伸を警戒する声も一部に出ている。

  ヘレウス・プレシャス・メタルズのアナリストは「金価格は直近5週間で10%余り上昇し、買われ過ぎの状態にある」と22日付のリポートで指摘。「値固めの局面に入る可能性が高まっており、当面は横ばいから下落基調で推移するかもしれない」と付け加えた。

  金スポット価格はニューヨーク時間午後2時現在、61.30ドル(1.7%)高の1オンス=3746.60ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は69.30ドル(1.9%)高の3775.10ドルで引けた。

原題:Stocks Get Tech Lift as Nvidia Rekindles AI Wagers: Markets Wrap

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