ジェームズ・メーガ

  • 中国の貿易黒字、過去最大の1兆2000億ドルに達しようとしている
  • 中国のインド・アフリカ・東南アジア向け輸出拡大-製造業後退せず

中国の習近平国家主席による輸出攻勢は、トランプ米大統領の関税措置が5カ月間にわたり続く中でも衰えていない。中国の貿易黒字は過去最大となる1兆2000億ドルに達しようとしている。

  米国市場へのアクセスが制限される中でも、中国の製造業は後退していない。8月にはインド向け輸出が過去最高を記録し、アフリカ向けでは年間ベースで過去最高に達する見通しとなっている。東南アジア向けも新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)時のピークを越えた。

  こうした広範な輸出急増は各国に警戒感を広げている。各国政府は、自国産業への打撃と中国を敵に回すリスクとの間で対応を迫られている。中国はすでに世界の半数以上の国にとって最大の貿易相手国となっている。

  今年に入り、自動車や自動車部品、鉄鋼などの中国製品に最大50%の関税賦課する方針を明らかにしたなど、公に対抗措置を示したのはメキシコのみだが、他の国々への対応を求める圧力は高まっている。非公開情報を理由に事情に詳しい関係者が匿名で明かしたところによると、インド当局はここ数週間、中国やベトナムなどからダンピング(不当廉売)に関する調査の申請を50件受理したという。

  それでも各国が本格的な措置に踏み切る可能性は限定的だ。すでにトランプ政権との関税交渉で手一杯の国々は、中国との新たな貿易戦争に乗り出すことを避ける傾向にある。これにより中国は、かつてエコノミストらが年間成長率を半分に押し下げると懸念していた米国の関税措置に対して、ある程度の猶予を得ている形だ。

  調査会社ガベカル・ドラゴノミクスの中国調査担当副ディレクター、クリストファー・ベドー氏は「(各国の)抑制された反応は、米国との貿易交渉の影響を受けている可能性が高い。世界貿易システムの崩壊に加担するように見られたくない国もあるし、自国の貿易交渉において米国への譲歩として提示するために、対中関税を控えている国もあるかもしれない」と述べた。

  中国は各国の対抗措置を抑え込むため、外交的な懐柔と経済的脅威の双方を駆使している。今月には習氏が主要新興国「BRICS」の首脳会議で反保護主義を訴えたほか、中国商務省の当局者はメキシコに対し、行動を起こす前に「よく考える」よう警告し、こうした措置には非難が伴うことを明確にした。

  一方、トランプ氏は北大西洋条約機構(NATO)諸国に対し、ロシアへの支援を理由に最大100%の対中関税を課すよう圧力をかけている。

  ブルームバーグ・エコノミクスの舒暢氏らは、もし米国が他国を取り込んで中国包囲網を築けば、不動産不況や高齢化といった国内課題への対応は一層難しくなると指摘。「中国は即座に報復関税を課すだろうが、同盟国を必要としている時に、パートナー国との関係を悪化させるリスクがある」との見方を示した。

原題:China Floods the World With Cheap Exports After Trump’s Tariffs(抜粋)