トランプ大統領がきのう国連総会で演説した。内容は国連批判の雨あられ。Reutersによると以下のような発言が同氏の口から飛び出した。「国連の目的は何なのか。国連は非常に大きな可能性を秘めている。しかし、その可能性を十分に発揮していない」、「非常に強い言葉を使って手紙を書くだけで、その後何のフォローアップもしていない」「空虚な言葉ばかりだ。それでは戦争は解決しない。戦争を解決する唯一の方法は行動だ」などなど。トランプ氏の発言は時に過激で、高圧的な批判に満ちていることが多い。ディールと称する駆け引きを得意としているが、取引を成功に導くための手段が圧力だ。相手を居丈高に脅迫した後、怯んだすきに圧力を緩和して妥協する。交渉が終わるといつの間にかトランプ氏に有利だ条件でディールが成立している。凡人には理解しがいたい手法だ。
国連批判もその手を使ったのかもしれない。「私は7つの戦争を終結させ、関係各国の指導者と交渉したが、国連から合意の締結に協力するとの電話を受けたことは一度もない」と強調する。Bloombergによると国連を「空虚な言葉」ばかりだと強く非難した。そのうえで、気候変動対策を「信用詐欺」、「国境開放は国の破壊を招く」と述べるなど、数々の不満を並び立てた。これにジョークも加わる。メラニア夫人が乗った直後にエスカレーターが故障し、自分の演説用プロンプターも壊れたと責め立てた。「20年前に国連本部の改修計画に入札したものの却下された」と個人的な恨みもぶちまけている。和平への後押しはなかったが「国連から2つ受け取った、壊れたエスカレーターと壊れたプロンプターだ」。ジョークを交えて最後は「どうもありがとう」と締めくくっている。
こうしたやり取りを見ていると、トランプ氏は“いやみな人だ”との印象を受ける。グテレス事務総長に同情を禁じ得ないが、Reutersによるとそうでもないようだ。演説後の事務総長との会談ではトーンを和らげ、「米国は国連を100%支持している」「時に賛同できないこともあるが、私は国連を強く支持する。国連が平和を実現する可能性が非常に大きいと考えているからだ」と強調する。トランプ氏の本音がどこにあるのか、凡人には測りかねる。同氏の発言を真正面から受け取ってはいけないようだ。脅迫や圧力、目眩しがふんだんに散りばめられている。そうした中から“真意”を見つけ出すのは簡単ではない。異常なのか正常なのか、常識では判断つかない。それでも時々、「なるほど」と思うことがある。いいか悪いかは別にして、メディアの世界はトいまトランプ発言で溢れている。
