▽自民党総裁選、文字で読む公開討論会<読売新聞オンライン>2025/09/25 11:00
24日に行われた日本記者クラブ主催の自民党総裁選候補者の公開討論会では、小林鷹之・元経済安全保障相、茂木敏充・前幹事長、林芳正官房長官、高市早苗・前経済安保相、小泉進次郎農相が政策論争を交わした。5氏は、物価高や経済対策のほか、外交・安全保障、社会保障などをテーマに持論を展開した。日本記者クラブで行われた自民党総裁選の討論会(24日、東京都千代田区で)=武藤要撮影
中間層 しっかり支援…小林鷹之氏
世界をリードする日本をつくる。そのビジョン(展望)を掲げて昨年の総裁選に挑戦した。自民党総裁選の討論会で、主張を述べる小林鷹之氏
それから1年、全国を回ったが、肌で感じたのは、世の中の 閉塞 感と、「こんなに頑張っているのに暮らしが全然良くならない」という現役世代の不安、諦めの声だった。小林氏は「有志竟成(きょうせい)」と揮毫(きごう)した
現役世代、中間層をしっかり支援していくことで、頑張れば報われると実感を持ってもらうことが、次なる成長につながり、社会がさらに強くなると信じている。日本には可能性が大いにある。日本の力はこんなもんじゃない。世界の真ん中に日本を立たせるために頑張りたい。
経済好循環で賃上げ…茂木敏充氏
国民の求める結果を出す。まずは当面の物価高対策として、ガソリン税の暫定税率の廃止をはじめ、スピーディーで効果のある政策を実行に移す。自民党総裁選の討論会で、主張を述べる茂木敏充氏
その上で、なによりも経済成長だ。まずは成長分野への投資を拡大する。それによって企業の収益性も上がり、賃上げができるようになる。賃上げが定着すれば消費も拡大する。市場が大きくなり、新しい投資が呼び込まれる。茂木氏は「知命立志」と揮毫した
こういった経済の好循環を作っていく。それによって物価高を上回る賃上げを確実に実施する。これが国民の求めていることではないか。速やかに実行に移していきたい。
国民の意見 耳傾ける…林芳正氏
経験と実績で未来を切り 拓 く。
我が党や日本を取り巻く状況は、決して明るいものではない。しかし、夜明け前が最も暗い、この言葉を信じたい。みんなでこの暗い状況を一致団結して乗り越えていく。そのことで、この言葉が本当になる。夜明けは近い。林氏は「仁」と揮毫した
岸田政権、石破政権と2年にわたって官房長官として支えてきた。共同責任も感じている。少なからずこの間の政策に携わってきたのも事実だ。国民の意見に耳を傾けながら、(これまでと)全く同じではなく、いいところをしっかり継承し、変えるところはしっかり変えていきたい。
日本の技術力 世界へ…高市早苗氏
「戦略的な危機管理投資」で経済成長を実現する。世界の潮流は、様々なリスクを最小化するために、官民でしっかりと投資を行う方向に向かっている。日本もそうあるべきだ。
幸い、日本には世界共通と言われる課題を解決できるだけの技術力がたくさんある。きら星のような技術をしっかりと製品、サービスにして、国内市場はもちろん、世界の市場に展開していくことによって、日本はまだまだ成長できる。高市氏は「崇高雄渾(ゆうこん)」と揮毫した
国民の安全を守るとともに、「成長を未来へ」と訴えている。必ずできる。
「日本を世界のてっぺんへ」、こう訴えながら頑張っていく。
成長の可能性 地方に…小泉進次郎氏
いま日本経済の状況はデフレからインフレの局面にあるため、インフレ対応型の経済運営に転換する必要がある。
まずは物価高対策として、ガソリン税の暫定税率を廃止する。所得税も基礎控除等を物価や賃金の上昇にあわせて引き上げていく。公的支出のあり方もインフレ対応型に進めることによって、物価を上回る国民所得の上昇を実現する。小泉氏は「異志(いし)統一」と揮毫した
これからの活躍、成長の可能性は地方にある。投資や企業を呼び込み、産業の拠点を作り、日本の生産力や供給力を拡大していく。設備投資の即時償却の拡大や研究開発税制の強化など政策を総動員していく。
◆討論◆
物価高対策
高市氏 7月の参院選で公約したことであっても、国民からノーと言われたことについてはおわびして政策を見直す。そういう姿勢も「解党的出直し」だ。特に、1人当たり2万円の現金給付は要らないという声をたくさん聞いた。その代わりに、即効性のあるガソリン税の暫定税率廃止など色々な話を出している。
茂木氏 現金給付は修正ではなく、転換すべきだ。物価高対策はそれぞれの地域で課題やニーズが違うので、各地方が自由に使える、いままでと(金額が)1ケタ違うような新しい交付金を創設するのが有効だ。
林氏 現金給付に固執するつもりはないが、約束したことをベースにしながら、即効性のある物価高対策ということで、暫定税率廃止は年内にもできると思う。
小林氏 所得の低い人には暫定税率廃止などで、中間層の人には定率減税で対応する。定率減税は、働いて給料が上がっただけ恩恵が大きい仕組みだ。高所得者優遇という批判があり得るので、キャップ(上限)を設けて対応する。
高市氏 私は2021年以来、給付付き税額控除を訴えている。中・低所得者層に絞った対応で、給与収入に応じて手取りを増やす内容だ。
小泉氏 所得税の基礎控除などを物価や賃金に合わせて引き上げていくことを、野党と協議を進めながらスピーディーに実現をしていきたい。
外交・安全保障
小泉氏 日米関係は日本外交の基軸だ。首相になったら、できる限り早期にトランプ米大統領との会談を実現したい。日米関税合意の履行が、ウィンウィンの関係を構築する上でも非常に重要だ。過度に中国に依存したサプライチェーン(供給網)を構築することのないよう、戦略を持ちながら進めていきたい。
茂木氏 首脳同士の信頼関係を築くことは極めて重要だ。同時に、米国が中国に立ち向かっていくためには、日本が一番重要なパートナーであることを強調し、一緒にやっていこうという姿勢を示すことが重要だ。
小泉氏 我が国自身が強くなければ国民の安全・安心を守ることはできない。防衛費の対国内総生産(GDP)比2%を着実に実現すべきだ。
小林氏 防衛力を抜本強化しなければならない。戦い方も変わってきた。2%では到底足りないと思っているが、その先のことはこれからの分析の中で積み上げていくべきだ。中国は東・南シナ海で一方的な現状変更をし、経済的な威圧もしている。邦人が拘束されるリスクも存在し続ける。スパイ防止法のようなものを対抗手段として持っていることが、中国に対する一定の抑止になるかもしれない。
エネルギー政策
小林氏 太陽光発電は不安定で、調整電源が必要となる。また、太陽光発電パネルは特定国に(製造などを)依存しているという経済安全保障上のリスクもある。
小泉氏 日本はエネルギーの自給率が極めて低く、海外依存度が高いので、再生可能エネルギーや原子力発電といった国産のエネルギーをいかに増やしていくかが基本的な立場だ。太陽光発電の経済安保上のリスクはもちろん留意しなければいけない。地域の環境破壊につながるとか、希少種の保護と逆行するといったことについては必要な規制、対応が不可欠だと思っている。
経済・財政政策
高市氏 将来世代への最大のツケは借金ではなく、経済成長の喪失だ。将来の財源を生む投資をいま始めるべきだ。日本の国債は9割以上を国内投資家が保有していて、最も世界で安定した債券の一つだ。名目成長率が国債金利を上回る状況をしっかり維持できれば、債務残高の対GDP比は自然に安定していく。
茂木氏 投資の拡大を起点として経済を拡大し、必要な財源を生み出す具体的な政策が求められている。
小泉氏 2030年度までの国内投資135兆円、平均賃金100万円増を達成するため政策を総動員する。賃上げ税制の促進や、中小企業・小規模事業者の生産性向上などに加え、地方自治体の発注の見直し、医療や介護など公定価格で働く人たちの処遇改善をする。
地方への投資
茂木氏 AI(人工知能)、データセンター、デジタル関連の企業による地方への設備投資は、大幅に伸ばすことができる。研究機関や教育機関が近隣に立地をすることで、産業の拠点化も図る。これにより東京一極集中を是正し、地方の成長力を高めたい。
社会保障政策
林氏 (低・中所得世帯などに絞った支援策となる)「日本版ユニバーサル・クレジット」を実施したい。まずモデル世帯を抽出して、保険料や税、子育ての負担と収入について把握する。その上で、どういう目的でいくらぐらいを給付するかを考える。その時に生活保護や児童手当などいまある制度をどれだけ統合できるか、設計していく。そして、実行する際に財源をしっかり考えていきたい。
◆質疑◆
政治姿勢
――昨年の総裁選で防災省設置は不要ではないかと言っていた。今回は石破内閣を継承すると言っているが、なぜ変わったのか。
小林氏 当時の構想は指揮命令系統が不明確だった。政府の構想の方がだんだん変わってきて、いまは問題ないと受け止めている。
――失敗して退陣せざるを得なかった石破政権を継承するのはいかがなものか。
林氏 一つひとつの政策が全部否定されたかというと必ずしもそうではなかった。変えるべきところは変えるし、継承すべきものは継承する。
――あれほど靖国神社参拝にこだわっていたが、今回は言及を避けている。
高市氏 心静かに、しっかりと最後は適宜適切に判断をしなければならない。外交問題には絶対にされるべきことではない。互いに相手国のために命をささげた方に敬意を払い合える環境作りに力を注ぎたい。
――選択的夫婦別姓制度で主張を封印している。
小泉氏 昨年の総裁選で(導入を)訴えたが、その後、自民党の中で結論は出なかった。野党も一つの案にまとまることはなかった。国民の理解、与野党の合意をどうつくっていくか、より努力をしなければいけないという思いに至った。責任ある立場の者は適切な慎重さを兼ね備えるべきだ。
野党との連携
――野党と本当に連立を組めるのか。
茂木氏 自公連立の枠組みを広げていきたい。その前に選挙区調整から入っていたら枠組み拡大はできない。できればするに越したことはないが、必ずしもそれがなければ連立できないということではない。
小泉氏 政権の枠組みを強化して、強い安定した政権をつくらなければ推進力は生まれない。連立は一つの選択肢だが、社会保障や物価高の対策でしっかりと向き合う中で信頼関係を構築したその先にある。
高市氏 一刻も早く連立政権の枠組みを自公を基軸につくるということを心に秘め、いろいろと頭の中で考えている。
小林氏 憲法や安全保障など国家運営の軸となる考え方をある程度共有しなければいけない。太い軸を共有して、個々の政策で 真摯 に向き合う中で信頼関係が生まれ、その結果として連立がある。
林氏 (政策ごとの)部分連合と同時並行で連立交渉も進める。石破政権で少数与党の苦労を痛感した者として、全てのオプションをしっかりとやっていく。
年収の壁
――国民民主党が主張する所得税の非課税枠「年収の壁」の178万円への引き上げに賛成か。
小泉氏 インフレ時代に合わせた所得税の基礎控除等の引き上げは、国民民主も含めて協議をする。我々だけでは少数与党で実現できないので、協議の中で、どこだったらお互いの一致点を見いだせるのか誠実に協議させてもらいたい。
高市氏 与党と国民民主の3党の幹事長が合意をした点はしっかりと守るべきだ。引き上げには賛成だ。
消費税減税
――野党に歩み寄る可能性は排除しないか。
小泉氏 消費税減税を訴えている野党もあるので、選択肢を否定せずにまずは協議をする。ただ、国民が求めるスピード感のある負担軽減につながるかどうかは課題がある。しっかりと与野党で議論をすべきだ。
高市氏 国民をいまの生活苦から救っていくという意味では排除するものではないが、問題もある。自民党内で合意ができないと他党とも話ができない。
茂木氏 消費税減税はレジのシステム改修などで時間がかかる。直近の物価高対策としては、食料品にかかる消費税の減税は効果が出ない。ただ、最初から議論しないということではなく、各党によって政策の優先順位は違うので、そういったものを見極めながら協議を進めたい。
外国人政策
――自民党本部の所見発表演説会で、外国人観光客がシカを蹴り上げたというような批判をしていたが、根拠はあるのか。
高市氏 自分なりに確認をした。静かに沸々と多くの日本人の中に芽生えている不安や怒りをどう改善していくか、そこに取り組みたいという思いを申し上げた。
――歴代の自民党政権は外国人を受け入れる政策を推し進めてきた。
高市氏 働き手不足で外国人を受け入れなくてはやっていけないところがある。ただ、ルール、法律は守ってもらう。外国人問題の司令塔を強化、拡充する。
コメ政策
――首相になったらコメの増産方針は続けるか。農家への所得補償を導入するか。
小泉氏 石破政権の農相なので、農政の方向を引き継いでいく。コメは適正な価格水準に持っていかなければならない。そして、安心してこれからもコメ作りを営めるようなセーフティーネットをどうするかについては、必ず進めていく。
党改革
――閣僚の平均年齢を10歳若返らせ、女性を3割登用するという方針を掲げた。
茂木氏 目標2年という形で進める。(当選すれば)総裁任期は2年なので、基本はそこでバトンタッチする道筋をつけていきたい。
▽「命捧げた方に敬意払い合う環境つくる」自民高市氏 靖国参拝明言は「言う必要なかった」<産経ニュース>2025/9/25 11:20

自民党総裁選(10月4日投開票)に立候補した高市早苗前経済安全保障担当相は24日、日本記者クラブ主催の討論会で、昨年9月の総裁選の際に首相として靖国神社を参拝すると明言したことについて、「別にまだ総理大臣になっていないのに、言う必要はなかったと思う」と振り返った。その上で、靖国参拝するかどうかは「心静かに、最後適宜適切に判断しなければならない」と語った。
昨年の総裁選で高市氏が表明した首相就任後も靖国神社参拝を続ける考えは、保守系の支持層を中心に歓迎された一方、党内には韓国や中国が猛反発するのではないかという懸念が広がった。
24日の討論会で、高市氏は首相就任後に靖国神社を参拝すると明言しなかったが、改めて「世界中の慰霊施設、それが日本を攻撃した国であっても、行くたびに慰霊を続けている」と語り、「お互い、相手の国のために命を捧げた方に敬意を払い合える環境づくりに力を注ぎたい」と強調した。
▽国民・玉木氏、スパイ防止法案を臨時国会で提出意向「自民総裁候補も考え方明らかにして」<産経ニュース>2025/9/25 10:48

国民民主党の玉木雄一郎代表は24日の記者会見で、国の重要情報を守るためのスパイ防止法案について、秋の臨時国会での提出を目指す方針を表明した。党の考え方を自民党総裁の投開票日である10月4日までに取りまとめる。「総裁選に出ている候補者も、スパイ防止法についてどう考えるのかということを是非明らかにしてほしい」とも語った。
スパイ防止法について検討している国民のワーキングチーム(WT)が今月中に報告書を取りまとめ、党安全保障調査会で結論を得る。玉木氏は会見で、「秋の臨時国会での法案提出を目指して、さらに作業を加速していきたい」と強調した。
内容の概要に関して玉木氏は「大きな3原則のもとにやっていく。国益をしっかり守る。国民の権利もしっかり守る。インテリジェンスの最前線で活動している人をどう守っていくか、だ」と説明した。
自民総裁選の候補者5人による24日の日本記者クラブ主催の公開討論会では、小林鷹之元経済安全保障担当相が覇権主義的な海洋進出の動きを強める中国との向き合い方について「スパイ防止法的なものを対抗手段として持っていることが、中国に対する一定の抑止になるかもしれない」と述べた。高市早苗前経済安保担当相は総裁選の主要政策に盛り込んだ。










