自民党総裁選まっただ中で、自・公・立民の3党が「給付付き税額控除」制度の実施案づくりに動きはじめた。政権与党が過半数割れしている混迷政局を背景とした、主導権争いの一つだろう。国民にとっていい制度であれば文句をいう筋合いではないが、ガソリン税の暫定税率(トリガー条項)廃止問題は合意しても具体案づくりは一向に進まない。3党で具体案作りが始まろうとしている給付付き税額控除案も、混迷政局の中で実現した駆け引きに過ぎない。参院選挙で実質的に敗北した立憲民主党は、幹事長の交代による人事の刷新で実質的敗北に伴う責任論を回避した。その党が辞任表明した石破政権下で行う幹事長協議。国民から見れば期待値ゼロのパフォーマンス、そんな印象が付きまとう。
給付金付き税額控除。立憲民主がかねてより主張している減税策である。立民の幹事長が小川氏から安住氏に交代したことを契機に、3党合意が復活し具体案作りが動き出した。幹事長協議といえば昨年の12月には自公と国民民主の3党が103万円の所得控除を178万円に「速やかに」引き上げることで合意している。にもかかわらずこちらの合意については具体案作りはしたものの、最終的には「財源」を理由に自民党が低額所得者を対象とした、スズメの涙のような控除額の引き上げでお茶を濁している。ガソリン税のトリガー条項も「財源」を理由に、いまだに結論が出ていない。そんな中で自公・立民の3党は改めて給付付き税額控除の具体案づくりをやろうというわけだ。誰が見ても国民のためというより、総裁選後の政局で主導権を握ろうとする動きとしか見えない。
自民党総裁候補の中では高市氏がこの案を公約に掲げている。有力候補と見られる小泉氏は「各党の話を聞いて具体案をまとめたい」としており、具体的にどうするか明確にしていない。専門家の間には財源問題に加え「所得や資産を正確に把握する必要があり、実施には時間がかかる」という見方もある。立民は協議結果を次期政権に引き継ぐよう要請しているが、これは自民党の次期総裁に向けたサインなのだろう。いずれにしても過半数を握る政権(連立政権を含め)不在の中で進む政局の混迷。自民党の総裁選挙で誰が新総裁に就任しても、比較第1党である自民党総裁が総理に指名されることは間違いない。だからこそ総裁選の裏で行われる野党主導の政策案づくり、これはパフォーマンス以外の何ものでもない。
