自民党総裁選が今週末に投開票される。長期にわたる政治空白の割に議論は盛り上がりに欠けている。理由は簡単。各候補とも「解党的出直し」「自民党の危機」と口にするものの、具体策はほとんどなし。挙げ句の果てに自民党の危機とか再建は積極的に語るが、「日本の危機」には誰も触れようとしない。この人たちにとっては日本の危機よりも「自民党の危機」の方が大切なのだ。そんな人たちが昨日フジテレビの「日曜報道」に出演し、これまでの主張を繰り返した。そんな中で珍しく「80兆円問題」が議論された。際立ったのは高市氏。Bloombergによると⽇本の国益を損なう⾮常に不平等な部分が出てきた場合、「しっかり物を申していかなければいけない。再交渉の可能性もある」と述べた。与党の政治家として再交渉の可能性に言及したのは初めてではないか。他候補は軒並み現状追認である。

「80兆円問題」については依然として不透明な部分が多く、現時点でトランプ関税を含めた日米交渉の成否を判断できるわけではない。そのことは百も承知している。だが、これまでに明らかになった情報によれば、交渉そのものが「不平等条約」だ。80兆円の資金は誰が出すのか、赤沢担当大臣は「全体の投資額には融資、融資保証が含まれており、出資部分は全体の1-2%にとどまる」との見解を示している。はてさて、意味不明の発言だ。80腸炎は誰が負担する?小林候補は「ウインウインの関係をどうやって作っていけるのか、そこが知恵の⾒せ所」と言う。以下、小泉候補「日本が全く関知していないようなプロジェクトを挙げられる仕組みではない」。茂木候補「日米双方に利益が出るプロジェクトを作る協議をしっかり進める」、林候補「土地とか水とか電気代とか、売り先まで(米国側が)全部確保するとの前提だ」。どの候補も「不平等条約」への言及はなし。依然として資金負担を誰がするのか、まったくわからない。

高市候補だけは冒頭に挙げた通り、控えめながらも総裁候補として初めて関税交渉の中に不平等な部分が含まれている可能性があることを認めている。ことの本質は自民党とこれに同調する官僚、学者、評論家、メディアの対米意識が「従属、服従、隷属」にあるということだ。投資の果実である収益の分配が日本10%、米国90%と明記されていても、誰も「これは不平等だ」とは言わない。米国の言いなり。これを“土下座外交”と言わずしてなんといえばいいのか。ラトニック商務長官やトランプ大統領の意のままに動く。自尊心も独立心もない。主要メディアがこれに追随する。だから参政党の「日本人ファースト」が国民に支持される。逆に同党はヘイトだ外国人は排斥だと非難される。小泉氏の「ステマ問題」も同列だろう。政権党内主流派の意識は、政権を維持するためのだけの“ステマ戦略”にある。これでは誰が総裁になっても自民党の再生はない。