日向貴彦
自民党総裁選候補の高市早苗前経済安全保障担当相は28日、日米関税合意に盛り込まれた5500億ドル(約80兆円)の対米投資について、再交渉も辞さない姿勢を示した。他の候補者と出演したフジテレビ「日曜報道」で発言した。
高市氏は、⽇本の国益を損なう⾮常に不平等な部分が出てきた場合、「しっかり物を申していかなければいけない。再交渉の可能性もある」と述べた。トランプ米大統領が設置する投資委員会が具体的な投資案件を決める構造に言及し、首相になった場合は実施過程を注視する考えを示した。
トランプ大統領が「これまでで最大のディール(取引)」と呼ぶ7月の日米関税合意には、日本側が巨額の対米投資基金を設立する内容が盛り込まれている。出資から得られる利益は日米で1対9になることから、日本の国益を害するとの懸念がある。

これに対し、赤沢亮正経済再生相は、全体の投資額には融資、融資保証が含まれており、出資部分は全体の1-2%にとどまるとの見解を示してきた。また日本に利益をもたらさない事業に資金は提供されないとしている。
小林鷹之元経済安保相は、令和の不平等条約との指摘もあるが、「むしろウインウインの関係をどうやって作っていけるのか、そこが知恵の⾒せ所」だと発言した。
その上で、台湾積体電路製造(TSMC)が米国内で工場を作る際に東京エレクトロンの製造装置を入れるなどの具体例を挙げ、「⽇本がもっと能動的にどんどん⽟を放り込んでいけばいい」と発言した。
その他の候補者の発言:
- 米国が、日本が全く関知していないようなプロジェクトを挙げられる仕組みではないと指摘-小泉進次郎農相
- 80兆円が自動的に米国に流れるわけではなく、経済安全保障などを踏まえ日米双方に利益が出るプロジェクトを作る協議をしっかり進める必要-茂木敏充前幹事長
- 米国側が案件実施に必要な「土地とか水とか電気代とか、売り先まで全部確保する」との前提に言及-林芳正官房長官
租特見直し
また、同日のNHK「日曜討論」では、5人の候補者が物価対策や財政規律について議論した。高市氏は「赤字国債の増発もやむなし」とし、物価対策は赤字国債で機動的に賄うとの考えを改めて示した。一方で、恒久的な施策は借り入れに依存せず、租税特別措置(租特)の見直しなどで恒久財源を確保するべきだと語った。
一方、小泉氏は、基本的な財政運営は「経済あっての財政だ」と強調。経済成長を維持して債務残高の対GDP比を安定的に引き下げることによって財政の信認をしっかり確保したいとし、「財政規律に対する目配りは重要」と述べた。
その他の候補者の発言:
- プライマリーバランス黒字化と債務残高の対GDP比の抑制を掲げ、「財政は臨機応変にやる」と述べ、財政余力の確保を主張-林氏
- 税収上振れで当面対応、PB黒字化と債務対GDP比低下を重視、増税ゼロ方針は維持-茂木氏
- 経済を財政に優先する立場を示し、定率減税の財源として租特の整理合理化を提唱、負担能力ある高齢者の一定の負担で世代間格差是正も-小林氏
関連情報
▽自民総裁選“首相としてトランプ氏に最初にかける言葉”5人の候補が考え披露 日米関税合意など議論<FNNプライムオンライン>9/28(日) 10:21

自民党総裁選の5人の候補者が28日、出演したフジテレビ「日曜報道 THE PRIME」で、“首相になった場合、トランプ大統領に最初にかける言葉”を明かした。
アメリカのトランプ大統領は、10月末にも日本を訪問する方向で調整している。
5人の候補は、“首相になった場合にトランプ氏に最初にかける言葉は何か”と問われ、それぞれ自身の考えを示した。
小林鷹之元経済安保相「真に自立した日本を目指す」
茂木敏充前幹事長「日本が最も頼りになる」
林官房長官「石破首相同様、日米同盟を堅持していく」
高市前経済安保相「日本は米国の対中戦略やインド太平洋戦略に不可欠の存在だ」
小泉農水相「日本は最高のパートナー」
一方、アメリカの関税措置を巡る日米合意について議論した際には、高市氏が“合意に不平等な部分がある”と指摘。
高市氏は、日本円で約80兆円の対米投資の決め方を巡り、「運用の過程でもし日本の国益を損なう非常に不平等な部分が出てきた場合には、しっかり物を申さなければいけない。再交渉の可能性もある」と述べた。
小泉氏は、関税合意について「私は評価するべきだと思っている」と述べ、対米投資の中身は「日米でしっかりと協議をした上で、最終的に大統領が選ぶといった形になっているので、課題が出てくるとしたら、そこで話すことだ」と語った。
林氏は、投資の収益の配分について「投資回収までは50%となっている」点を強調し、「その先、利益が出た場合はアメリカが90%で、トランプ大統領がSNSで国内向けに『これだけ勝ち取ったぞ』という表現になっている」と説明した。
茂木氏は、日本が関与しない形で投資を押し付けられる懸念に対し「それはないと思う」として、「枠組みから見て、80兆円が自動的にアメリカに流れるということではなく、経済安全保障などを考え、分野別、案件ごとに、日米双方にとって利益が出てくるプロジェクトを形成していくということだ」と述べた。
小林氏は、「今回、不平等条約という方もいるが、そんなことを言っても仕方がなく、むしろウィンウィンの関係をどうやって作っていけるのかが知恵の見せ所だ」と指摘し、「サプライチェーンとの関連では、対中国で日米の協力関係をさらに深めていく枠組みに使うべきだ」と語った。
