▽【米国市況】政府閉鎖を警戒、株小幅高で週スタート-円は対ドル堅調

Rheaa Rao

  • トランプ氏と議会指導部が協議、閉鎖となれば雇用統計の発表延期
  • 米国債相場は上昇、月末要因も追い風-金はオンス3800ドル台最高値

29日の米国株式相場は小幅高。米政府機関が閉鎖される可能性が高まり、今後の利下げペースを左右する重要経済指標の発表が遅れるリスクが懸念されている。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数6661.2117.510.26%
ダウ工業株30種平均46316.0768.780.15%
ナスダック総合指数22591.15107.080.48%

  S&P500種株価指数は午前の取引では0.5%高となっていた。ナスダック100指数は一時1%近く上げた後、0.4%上昇で終えた。

  米政府機関が閉鎖され、米経済の現状判断に不可欠な重要統計の発表が遅れる可能性を投資家は心配している。特に10月3日に予定されている9月の雇用統計は、労働市場がどの程度持ちこたえているか示唆を与え、年内利下げの回数を左右しかねない。

  シュワブのチーフ債券ストラテジスト、キャシー・ジョーンズ氏は「雇用市場がFRBの利下げ決定に与える影響の重要性を考えると、9月の雇用統計発表が遅れるというリスクは、金融政策の方向性を巡る市場の不安をさらに深める恐れがある」と述べた。

  通商政策を巡る不確実性も根強い。トランプ米大統領はこの日、米国の映画および家具産業を支援するため、新たな関税を課すと表明した。ハーグリーブス・ランズダウンの投資戦略責任者エマ・ウォール氏は、関税がインフレに与える影響がまだ適切に統計に表面化していないことを投資家は留意すべきだと語る。

  「先週発表された医薬品に対する100%関税といった、さらなる税率引き上げは価格圧力を強める可能性が高い」と述べた。

  金融政策に視点を戻すと、マイラン連邦準備制度理事会(FRB)理事による22日の講演は、「疑問点が多い」内容とエコノミストらは受け止めた。同理事は理事就任後初の政策スピーチで、トランプ政権の政策がインフレ警戒のために必要な金利水準を大幅に引き下げたと主張。連邦公開市場委員会(FOMC)は急速な利下げに動かないことで、経済を損なうリスクを冒していると持論を展開した。

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  労働市場関連の統計では雇用統計以外にも、8月の求人件数が30日に発表されるほか、10月1日には9月の米民間雇用者数も明らかになる。月次雇用統計の雇用者数が最近下方修正されたことから、3日発表の9月統計はなおさら重要性を増すとストラテジストらはみている。

  ドイツ銀行のマクロ調査・テーマ戦略グローバル責任者、ジム・リード氏は「この先、こうした統計発表の前後はボラティリティーがやや顕著になる可能性がある。というのも、景気を刺激も減速もさせない、いわゆるブレークイーブンな雇用者増加ペースは現在、月間5万人程度、あるいはそれ以下とみられているようだ」と述べた。「われわれはこうした誤差の範囲でもマイナスの数字にあまり慣れていないため、市場は合理的ではない反応を見せる可能性がある」と続けた。

  セントルイス連銀のムサレム総裁は、追加利下げにオープンな姿勢を示しつつ、インフレ率が当局目標を依然として上回っていることを踏まえると、政策運営は慎重に進めるべきだとの見解を示した。ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は一方、インフレリスクは低下したが失業は増えていると指摘。10月の連邦公開市場委員会(FOMC)で追加利下げを支持するかどうかについては、示唆を与えなかった。 

  政府機関の閉鎖期限が迫る中、トランプ大統領と議会指導部による初の協議がこの日行われている。つなぎ予算が成立しなければ、10月1日から政府機関の一部が閉鎖に追い込まれる恐れが出ている。

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  個別企業のニュースでは、ゲーム大手のエレクトロニック・アーツ(EA)がプライベート投資家グループに売却することで合意した。同社の企業価値を550億ドル(約8兆1700億円)と評価する取引で、過去最大のレバレッジドバイアウト(LBO)となる。

  中国の華為技術(ファーウェイ)は来年、最先端の人工知能(AI)半導体生産を大幅に拡大する準備を進めている。関係者が明らかにした。

米国債

  米国債相場は上昇。原油価格の軟調と英国債相場の堅調に支えられたほか、月末の指数リバランシングを控えた買い期待も追い風となった。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.70%-4.4-0.93%
米10年債利回り4.14%-3.7-0.88%
米2年債利回り3.62%-2.3-0.62%
  米東部時間16時48分

  10年債利回りは一時、4.13%まで下げた。30年債利回りは一時、4.7%を割り込む場面も見られた。この水準を下回るのは9月18日以来となる。

  10月1日から政府機関が閉鎖される可能性も、米国債相場に影響を及ぼしている。経済運営が抑制される潜在性から、政府閉鎖時は米国債相場が上昇すると考えられている。

  ウェルズ・ファーゴ・セキュリティーズの金利ストラテジスト、アンジェロ・マノラトス氏は「この日は世界的に利回り低下の動きがあった」と指摘。「四半期末の資金フローによる作用に、米政府閉鎖の可能性が加わったからだろう。少なくとも5日続くような政府閉鎖時には、利回りが大抵小幅低下するものだ」と述べた。

  クリーブランド連銀のハマック総裁は利下げを正当化するにはインフレ率がなお高過ぎるとの見方をあらためて示したが、米国債相場は堅調さを増した。同総裁は来年、連邦公開市場委員会(FOMC)での議決権を得る。先物市場では向こう12カ月で約100ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の追加緩和がなお想定されている。

   米債券市場で今後数日の最大の焦点は、早ければ10月の追加利下げの観測が月次の雇用統計の発表後にさらに揺らぐかどうかだ。9月雇用統計は政府機関が閉鎖されない場合、3日に発表される予定になっている。

関連記事:米国債市場、焦点は雇用統計-政府機関閉鎖なら発表遅延の恐れ

外為

  外国為替市場のドルは軟調。年内利下げの継続を左右しかねない9月の雇用統計発表を控えているほか、米政府機関が閉鎖されるリスクが高まっていることもセンチメントを暗くした。円は主要10通貨の中でも比較的好調。対ドルで148円台後半で推移している。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1202.32-2.66-0.22%
ドル/円¥148.63-¥0.86-0.58%
ユーロ/ドル$1.1726$0.00230.20%
  米東部時間16時48分

  円は朝方の取引で、一時対ドル148円47銭まで上昇。日本銀行の野口旭審議委員は29日、金融政策運営について、経済・物価の上方リスクに言及した上で、利上げの必要性が高まりつつあるとの認識を示した。

  自民党総裁選を10月4日に控えたポジション調整で、リスクリバーサル(1週間ベース)は7月以来のドル買いに傾いた。

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  主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は、一時0.35%下げた。前営業日には0.3%下落していた。

   米政府機関の閉鎖期限が迫る中、トランプ大統領と議会指導部による初の協議がこの日行われている。

  米労働統計局(BLS)を管轄する労働省は、政府機関が閉鎖された場合、BLSは全ての業務を中断し、データ収集も停止すると明らかにした。これにより、10月3日の9月雇用統計を含め、予定されているデータの公表は延期される。 

  マネックスのアナリストらは29日付のリポートで「ドルは弱いレンジで今週をスタートした。雇用市場が注目される中で政府機関閉鎖の場合に起こり得る混乱が意識されている」と述べた。

原油

  ニューヨーク原油先物相場は3カ月ぶりの大幅安。石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成するOPECプラスは11月も増産する可能性が高いとの報道が意識された。

関連記事:OPECプラスは11月も増産の公算大、市場シェア回復狙う-関係者

  ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は一時4%下落した。先週末26日は8月以来の高値で引けていた。計画について知る複数の関係者によれば、OPECプラスは10月に予定している日量13万7000バレルと同程度かそれ以上の増産を11月に行うことを検討している。

  ヘリマ・クロフト氏らRBCキャピタル・マーケッツのアナリストは「最も可能性が高いのは、11月に再び日量13万7000バレルの増産を行うことだと考える」とリポートで指摘。10月5日のOPECプラス会合で決定される公算が大きいとの見方を示した。

  「サウジアラビアを除く多くの産油国が事実上、生産能力の上限に達していることを踏まえると、OPECプラスの将来的な供給増は、発表されるヘッドラインの数字を大幅に下回ることになるだろう」とも述べた。

  OPECプラスは市場価格の管理より市場シェア奪回を目指す戦略を進める。国際エネルギー機関(IEA)は、2026年に見込まれている記録的な供給過剰はさらに拡大するとの見通しを示している。

  一方、中国による在庫積み増しのための積極的な買いや、ロシアのエネルギーインフラに対するウクライナの攻撃など地政学的緊張の高まりが原油相場を支えている。

  サクソバンクの商品戦略責任者オーレ・ハンセン氏は、「主要な予測機関は向こう数カ月に原油相場が弱含むと依然見込んでいる。ロシアを巡る関心が実際の供給混乱につながらない限り、少なくとも短期的には強気シナリオを構築するのは難しいだろう。OPECプラスによる追加増産リスクを考慮すれば、なおさらだ」と述べた。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物11月限は、前週末比2.27ドル(3.45%)安の1バレル=63.45ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント11月限は3.1%下げ、67.97ドルで引けた。

  金スポット価格は1オンス=3800ドル台に上昇し、史上最高値を更新した。米政府機関閉鎖の可能性が意識される中、ドルの下落が金相場押し上げにつながった。

  スポット価格は一時、前週末比2%高の3833.59ドル。先週23日に付けたこれまでの最高値を更新した。週間ベースでは先週末まで6週連続で上昇している。

  金など貴金属を裏付けとする上場投資信託(ETF)への資金流入が相場を支えている。

Gold Rally Powered By Strong ETF Demand
出所:ブルームバーグ

  テミストクリス・フィオタキス氏らバークレイズのストラテジストは金価格について、ドルや米国債に比べると割高にはみえないと28日のリポートで指摘した。

  スポット価格はニューヨーク時間午後3時11分現在、64.74ドル(1.7%)高の1オンス=3824.72ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は46.20ドル(1.2%)高の3855.20ドルで引けた。

原題:Stocks Kick Off Week With Small Gains; Yields Dip : Markets Wrap(抜粋)

原題:Treasuries Gain as US Government Shutdown May Follow Month-End(抜粋)

原題:Dollar Falls as Federal Shutdown Looms; Yen Gains: Inside G-10(抜粋)

原題:Oil Dips as Traders Zero in on Prospect of More OPEC+ Supplies(抜粋)

原題:Gold Surges to Record on Weaker Dollar, Risk of US Shutdown(抜粋)