By Dan Peleschuk

モルドバ議会選、親EU与党が過半数に近づく

[キシナウ 29日 ロイター] – 東欧の旧ソ連構成国モルドバで28日、議会(定数101)選挙が行われ、親欧州連合(EU)の与党「行動と連帯」がロシア寄りの野党連合「愛国者ブロック」に圧勝した。EUに加盟しロシアの影響から脱却することを目指す与党の取り組みが支持された。

選挙管理委員会によると全ての票が開票され、行動と連帯の得票率は50.2%と、愛国者ブロックの24.2%を大幅に上回った。選挙前の世論調査では与党と野党連合が接戦とみられ、いずれも過半数に達する可能性は低いと予想されていたが、選挙結果を受けモルドバは2030年までのEU加盟という目標の達成に向けて前進する見通しとなった。

与党「行動と連帯」は、今回の選挙は1991年の旧ソ連からの独立以降で最も重要な選挙だったと指摘。サンドゥ大統領は「(われわれの)政党の勝利だけでない。モルドバの勝利だ。欧州への道こそ、われわれが進むべき道だ」とXに投稿。EUのコスタ大統領は「モルドバ国民はロシアの圧力に直面しながらも民主主義、改革、そして欧州の未来を選んだ」と投稿した。

独仏ポーランドの首脳は共同声明で「前例のないロシアの干渉の中でも、選挙が平穏に実施された」として、選挙結果に祝意を表明。ウクライナのゼレンスキー大統領も選挙結果を歓迎し、ロシアはモルドバを「不安定化」させることに失敗したと述べた。

サンドゥ政権はロシアが偽情報の拡散や票の買収を通じて選挙への介入を試みているとして、国民に警告していた。

選挙結果を受け、議会前に野党支持者約100人が集結。野党連合を主導する親ロシア派のドドン前大統領は、中央選挙管理委員会に投票違反を示す文書を提出したと明らかにした。ドドン氏は、欧州の他の国で暮らす多くのモルドバ国民を念頭に、与党は「在外投票によって政権にしがみついている」と述べたほか、モルドバ東部の親ロシア派トランスニストリア地域の住民20万人超が投票の機会を奪われたとも主張した。ただ、根拠は示さなかった。

サンドゥ氏はこうした見解に対し、政府はトランスニストリア地域の住民が投票できるよう最大限の環境整備に努めてきたとし、投票は可能だったと指摘。モルドバ政府の統治が認められていない地域に影響を及ぼすことはできないと述べた。

ロシアはモルドバ選挙への介入を否定しており、モルドバの親EU派が選挙結果を操作しようとしていると非難。ロシア議会国際問題委員会のレオニード・スルツキー委員長はテレグラムで「選挙権と自由の侵害、政治空間の大規模な粛清、露骨な改ざん」があったと指摘。「サンドゥ政権はモルドバをウクライナの道へと導いている」と述べた。ロシア外務省のザハロワ報道官は、今回の選挙結果で「モルドバ社会に深い分断が生じていることが裏づけられた」とし、モルドバがバランスの取れた姿勢を取り、「北大西洋条約機構(NATO)の反ロシア的な付属物」にならないことを望んでいると述べた。

欧州安全保障協力機構(OSCE)は今回のモルドバ議会選に選挙監視団を派遣。不備はあったものの、選挙は不正なく実施されたとの見解を示した。

モルドバはロシアの全面侵攻を受けているウクライナとNATO加盟国ルーマニアの間に位置する人口240万人の小国。長らくロシアと欧州の間で揺れ動いてきた。ドイツ外交評議会のアナスタシア・ポチウンバン氏は、モルドバの与党「行動と連帯」は国内の分断を埋め、EU加盟の利点を懐疑的な国民に的確に伝えていくという大きな課題に直面しているとの見方を示している。