Rheaa Rao
- 株は小幅高、四半期ベースで2期連続プラス-米国債は3四半期連続高
- 金はまた最高値更新、OPECプラスの供給増観測で原油は続落
30日の外国為替市場ではドル指数が1週間ぶりの水準に下げた。円は対ドルで3日続伸し、一時147円65銭まで上げた。その後は148円付近に値を削った。労働力の需要低下と消費者信頼感の落ち込みが米国のデータに示された。米政府機関の閉鎖が差し迫り、重要な雇用関連の統計発表が遅れる可能性が高まっている。
| 為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| ブルームバーグ・ドル指数 | 1200.39 | -1.93 | -0.16% |
| ドル/円 | ¥147.95 | -¥0.64 | -0.43% |
| ユーロ/ドル | $1.1734 | $0.0007 | 0.06% |
| 米東部時間 | 16時55分 |
主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は、3日続落し、1週間ぶりの低水準。月間ベースではほぼ変わらず。四半期ベースでは0.9%上昇し、今年初のプラス。7月に大きく伸びたことが反映された。
トランプ米大統領は政府閉鎖となれば、それを機に職員を一斉解雇する意向を示した。
DZバンクのアナリスト、マリオ・シメルズ氏は米政府閉鎖について「ますます現実的になっている。オーバーナイトの取引でドルがさらに下げることを想定しておくべきだ」と述べた。
シティグループのアナリストらは「閉鎖の直前と直後はドルの弱さが顕著となり、その後はレンジ取引となるのが典型的だ」とリポートで指摘。「閉鎖が解消されれば、ドルは強含む傾向がある」と述べた。
米国株
株式相場はほぼ終日軟調に推移した後、小幅高で引けた。米政府機関の閉鎖が差し迫っていることが背景にある。ただし四半期ベースでは2期連続でプラスを達成した。
| 株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| S&P500種株価指数 | 6688.46 | 27.25 | 0.41% |
| ダウ工業株30種平均 | 46397.89 | 81.82 | 0.18% |
| ナスダック総合指数 | 22660.01 | 68.86 | 0.30% |
S&P500種株価指数は9月としては15年ぶりの好調となった。金融緩和と人工知能(AI)に関する楽観が追い風となった。
政府機関が閉鎖されれば、9月の雇用統計が予定通り10月3日に発表されなくなり、政策金利の道筋が見極めづらくなる恐れがある。この1カ月に発表された経済データは労働市場の減速と、上振れ気味なインフレを示してきた。
FBBキャピタル・パートナーズのマイケル・ベイリー氏は「次回連邦公開市場委員会(FOMC)を控え、政府閉鎖で雇用とインフレのデータに空白が生じれば、事態はひどく混乱する恐れがある」と警戒している。「しかも株価とバリュエーションは直近のピークに近いため、ちょっとした悪い材料でも影響が雪だるま式に膨らみ、短期的な調整局面に発展する可能性もある」と述べた。
野村の先進国担当チーフエコノミスト、デービッド・セイフ氏は米経済統計の発表が遅れても、FOMCの決定は少なくとも次回10月会合においては左右されないとみている。
「データが少なければ、その分FOMCは金利予測分布図(ドットプロット)から逸脱する根拠を失う」とセイフ氏はブルームバーグテレビジョンで述べた。「ドットプロットでは10月に0.25ポイント利下げが示唆されていた。データ発表の有無にかかわらず、その通りになるというのが、当社の見方だ」と述べた。

政府機関の閉鎖となれば、投資の機会が大量に生じるとの見方もある。シティ・リサーチは閉鎖の期間が重要だとし、比較的長期の閉鎖の場合には株式が下落し金利が上昇するのが典型的だと述べた。モルガン・スタンレー・ウェルス・マネジメントの米政策責任者、モニカ・ゲーラ氏は過去に起きた閉鎖が実質国内総生産(GDP)とS&P500種の動きに与えたマイナスの影響は軽微だと指摘した。
米連邦準備制度理事会(FRB)当局者の発言も関心を集めている。ボストン連銀のコリンズ総裁は、労働市場の軟化を踏まえると年内の追加利下げが適切となり得ると述べた。一方で、当局者はインフレが根強い可能性に引き続き警戒する必要があるとの認識も示した。

ジェファーソンFRB副議長はインフレ圧力が高まる一方で労働市場が軟化していると警告し、金融政策の見通しを複雑にしていると述べた。
「雇用に対するリスクは下振れし、インフレに対するリスクは上振れしているとみている」と述べ、「われわれの2大責務はいずれも圧力にさらされている」と続けた。
個別企業のニュースとしては、AI向けクラウドサービスを手がけるコアウィーブが、メタ・プラットフォームズに最大142億ドル(約2兆1000億円)相当の計算能力を供給する契約を結んだ。
ベライゾン・コミュニケーションズは米衛星ネットワーク運営会社エコスターの一部無線周波数帯の取得について協議を進めていることが、関係者によって明らかになった。
エクソンモービルは全世界で約2000人の人員削減を計画している。長期的な再編計画の一環として、小規模なオフィスを地域の拠点に集約する。
米国債
米国債相場は小幅高。米政府機関の閉鎖が差し迫り、経済成長が脅かされる中で米国債を買う論拠が強まっている。
| 国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
|---|---|---|---|
| 米30年債利回り | 4.73% | 2.9 | 0.62% |
| 米10年債利回り | 4.15% | 1.3 | 0.33% |
| 米2年債利回り | 3.61% | -1.0 | -0.28% |
| 米東部時間 | 16時55分 |
米国債は四半期ベースでは3期連続高。ブルームバーグの指数によれば、四半期では1.5%のリターンをもたらした。年初来9カ月のリターンは5%を上回り、このままのペースだと年間ベースでは2020年以来の好調となる勢いだ。
この日の深夜に設定された期限を過ぎれば米政府機関は閉鎖され、重要統計の発表は先送りされ、経済成長を抑制する可能性が生じる。過去に起きた長期の政府閉鎖では、長期債相場が上昇した。
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ブリーン・キャピタルの債券戦略責任者、スコット・ブクタ氏は今週の相場上昇について「小規模な質への逃避」を反映していると指摘。「政府閉鎖が長期化し経済を減速させる可能性がある中で、市場では国債に関して前向きな見方が増えている」と述べた。
FRBの次の一手を探ろうと、投資家の関心は雇用ペースに集中している。最近のデータでは労働市場の軟化が示唆されている。
労働統計局(BLS)がこの日発表した8月の求人件数は、ほぼ変わらずだった一方、採用は低調。労働需要が徐々に減退していることを示唆している。
関連記事:米求人件数ほぼ変わらず、採用は抑制-労働需要緩やかな減退示唆 (2)
9月の雇用統計は10月3日に発表される予定だが、政府機関が閉鎖されれば延期される可能性がある。
ナティクシス・インベストメント・マネジャーズ・ソリューションズのポートフォリオストラテジスト、ジャック・ジャナシウィック氏は成長とインフレに関して経済が「重大な岐路」に立たされている時に、経済データ収集に遅れが生じることは不確実性をあおると指摘。
「そのように不確実性が高まると、大抵の場合は金融市場でボラティリティーが上振れするものだ」と続けた。
先行きをさらに曇らせているのは、トランプ政権が政府閉鎖を機に職員の一斉解雇に動く構えを見せていることであり、その合法性が問われるだろうとジャナシウィック氏は指摘した。
FOMCの日程に連動した金利スワップは、10月会合で0.25ポイントの追加利下げがある確率をおよそ80%と示唆している。12月の同幅利下げが実施される可能性も高いとされている。
原油
ニューヨーク原油先物相場は続落。石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成するOPECプラスが、10月5日の会合で生産回復の加速を検討すると伝わり、相場の重しとなった。
関連記事:OPECプラス、10月会合で生産回復の加速を協議へ-関係者
OPECプラスは3カ月にわたって供給を月当たり日量約50万バレル引き上げ、市場シェアの回復を目指すと加盟国の代表が明らかにした。

フランス石油大手トタルエナジーズは29日、来年第1四半期に原油が大幅な供給過剰になることを推計値で示した。
米エネルギー情報局(EIA)は30日、米国の原油生産が7月に初めて日量1360万バレルを超えたと発表した。EIAが従来示していた見通しを上回り、市場心理は一段と弱気に傾いた。
ウォーレン・パターソン氏らINGグループのアナリストは「当社の需給見通しは、追加供給が必要ないことを明確に示している」とリポートで指摘。「市場は第4四半期に大幅な供給超過となり、2026年いっぱいその状態が続く」と予想した。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物11月限は、前日比1.08ドル(1.7%)安の1バレル=62.37ドルで終了。
ロンドンICEの北海ブレント11月限は1.4%安の67.02ドルで引けた。11月限はこの日が最終取引。12月限は1.6%下げ、66.03ドルで引けた。
金
金スポット価格は小幅に続伸して最高値を更新。一時は下げていたが、その後に切り返した。
米政府機関閉鎖の可能性が高まる中、政治的な行き詰まりは、逃避先資産としての金の魅力を高めている。
スポット価格はニューヨーク時間午後3時16分現在、前日比16.91ドル(0.4%)高の1オンス=3850.46ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は18ドル(0.5%)高の3873.20ドルで引けた。

原題:Stocks End Strong Quarter With Moderate Gains: Markets Wrap(抜粋)
原題:US Treasuries Wrap Up Third Quarter of Gains as Shutdown Looms(抜粋)
原題:Dollar Weakens Amid Shutdown Worries; Aussie Leads: Inside G-10(抜粋)
原題:Oil Drops in Choppy Trade as OPEC+ Signals Faster Output Hikes(抜粋)
原題:Gold Wavers as Traders Assess Potential US Government Shutdown(抜粋)
