米国は政府機関の閉鎖に追い込まれそうだ。政府機関が閉鎖されると3日に予定されている9月雇用統計の発表は延期される。トランプ大統領は政府職員を大量に解雇すると脅しをかけているが、それでも民主党は妥協を拒んだようだ。これまでも何回か政府機関の閉鎖の危機があった。それでも最後の最後に共和党と民主党がギリギリの段階で妥協し、最悪の事態を回避してきた。今回はそれも機能しなかったようだ。あと1日あるが回避できないだろう。トランプ氏も「おそらく閉鎖になるだろう」と諦め気味だ。というより閉鎖の責任を民主党に押し付けようとしている。「われわれは彼らにとって不都合なこと、不可逆的なことをすることができる」「取り返しのつかない変更を行うことが可能だ」と民主党に警告する。これは論争ではない。恫喝だ。米国の民主主義は崩壊しつつある。

Bloombergの記事から両党の主張を引用する。共和党下院議長のジョンソン氏、「医療関連の税額控除の延長を巡って民主党が政治的な駆け引きをしている。この問題は、税額控除が失効する年末まで解決する必要はない」と民主党の主張は論外と牽制する。一方、民主党のジェフリーズ下院院内総務は、「(共和党は)われわれのやり方に従うか、さもなくば出て行けという姿勢だ」と反論。さらにシューマー上院院内総務は29日夜、「共和党の法案には民主党の意見が一切反映されていない」、「政府閉鎖を望むか否かは共和党次第だ」と非難している。第三者から見れば「どっちもどっち」にしか見えない。大事なのは国民の意向だが、どちらの政党からもそんな声は聞こえてこない。自分たちの権益を守るだけの権力闘争でしかない。やがて国民が世論調査などを通してどちらの主張が正しいか、民意が明らかになるだろう。

政府機関の閉鎖は第1次トランプ政権で2度あった。1回目は2018年1月20日にスタートして、70時間弱という短時間で終了した。そして2回目が2018年12月22日深夜にスタートして、2019年1月25日までの35日間。この時の争点はメキシコ国境に壁を構築するための財政資金をめぐる争いだった。この時はトランプ氏が関連予算を削除するとこで折り合った。だが、壁建設資金は国家非常事態宣言を発令して大統領権限で賄っている。これが議会を無視し始めた最初のケースではないか。いずれにしても政権にとって最も重要な予算をめぐる駆け引きが原因で政府機関が閉鎖に追い込まれれる。これが政治といえばそれまでだが、そもそも妥協なき政治は民主的なのか。現実はそれが罷り通っている。民主主義に未来はあるのだろうか。