▽米国市況】政府閉鎖2日目も株上昇、ハイテク勢い衰えず-ドル反発
Cristin Flanagan
- 重要統計の不在が不安助長も、政治リスクへの警戒は引けまでに後退
- 金反落、ドル高受けた利益確定の売り-原油は4日連続安
政府閉鎖2日目となった2日の米金融市場では、米国株式相場が続伸。トランプ米大統領が「数千人規模の」連邦職員削減を検討していることが、相場の重しとなったものの、ハイテク株の強気モメンタムは健在だった。
| 株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| S&P500種株価指数 | 6715.35 | 4.15 | 0.06% |
| ダウ工業株30種平均 | 46519.72 | 78.62 | 0.17% |
| ナスダック総合指数 | 22844.05 | 88.89 | 0.39% |
ハイテク株の比重が高いナスダック100指数は、2日連続で最高値を更新した。OpenAIの企業価値は5000億ドルに膨張。世界最大のスタートアップ(新興企業)となり、AIに対する楽観が強まった。フィラデルフィア半導体指数は1.9%上昇。アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)とインテルが特に買われた。S&P500種は一時0.3%下げていたが、下げを埋めて引けた。
トランプ政権の計画に対する投資家の警戒は、取引終了までには大方消失。共和党は政府職員の解雇計画を武器に、民主党議員から造反を誘い、政府閉鎖の解除につなげたい構えだ。トランプ氏は行政管理予算局(OMB)のボート局長と会談し、政府職員の解雇について協議する予定。
毎週木曜に発表される失業保険統計がこの日は発表されず、トレーダーらは経済統計の空白期間に入った。この状況が続けば、追加利下げの見通しにも影響が及ぶ恐れがある。
米民間再就職会社チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスのデータによれば、9月の企業人員調整計画では採用と解雇の両方で縮小が見られた。
3日に予定されている9月の米雇用統計も、発表が延期される可能性が高い。
シュワブのトレーディング・デリバティブ戦略責任者ジョー・マッツォーラ氏は「短期の閉鎖で統計発表が数日遅れる程度なら大きな問題にはならない。だが、今月中旬のインフレ統計発表が危ぶまれるほど長引けば、今月下旬の連邦公開市場委員会(FOMC)ではデータが揃わないため、利下げの意欲が低下することもあり得る」と話す。「与野党の対立が長引く兆候はある。ベッセント財務長官は長期の閉鎖となれば経済成長が損なわれかねないと指摘している」と続けた。

個別銘柄では、テスラが5.1%下落。7-9月(第3四半期)販売台数は電気自動車(EV)向け税額控除の終了を前にした駆け込み需要が寄与し、市場予想を上回った。
だが、バイタル・ナレッジのアダム・クリサフルリ氏は販売台数について「公表されていた予想よりかなり良かったが、実際の期待値はこれよりずっと高かった」と指摘。弱気派はEV市場が下降期に向かっているとみているという。テスラ株の下落は主要株価指数の重しになった。
この他、ウォーレン・バフェット氏率いる米保険・投資会社バークシャー・ハサウェイが、オクシデンタル・ペトロリアムの石油化学部門オキシケムを、約97億ドル(約1兆4200億円)の現金で買収することで合意した。
米国債
米国債相場は小動き。経済統計の発表に遅れが生じ始め、投資家はFRBの次の手を見極めるにも、労働市場のデータが得られない状況となった。
| 国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
|---|---|---|---|
| 米30年債利回り | 4.69% | -2.0 | -0.41% |
| 米10年債利回り | 4.08% | -1.3 | -0.33% |
| 米2年債利回り | 3.54% | 0.4 | 0.12% |
| 米東部時間 | 16時49分 |
10年債利回りは一時4.12%まで上昇した後、前日を下回る水準に下げた。前日の利回りは民間雇用者数が予想外に大幅減少したことに反応し、大きく下げていた。
規模29兆ドルの米国債市場では、雇用促進を狙った利下げをFOMCが続けざるを得ないとの想定から、労働市場のデータに投資家の関心が集中している。この日は毎週木曜に発表される週間の失業保険統計が発表されなかった。3日予定の9月雇用統計の発表も延期される可能性が高い。
UBSインベストメント・バンクのストラテジスト、エレナ・アモルソ氏は政府機関の閉鎖が長期化し、経済に打撃を与えるようであれば、それ自体が利下げ観測を後押しする可能性があると指摘する。
「閉鎖は経済活動の足かせとなる可能性があるため、金利にとってはいくらか強気(利下げ方向)の要素となり得る」と述べ、前日の米供給管理協会(ISM)統計も米経済の軟化を裏付けたと続けた。

今月のFOMCで0.25ポイントの利下げが決定する確率は、およそ90%というのが市場の見方だ。
ブルームバーグのマクロストラテジスト、アリス・アンドレス氏による分析は以下の通り。
レヴェリオ・ラボズによれば、9月の非農業部門雇用者数は6万人増を上回っていた。公式統計の発表が遅れているため、こうした民間データの重要性が増している。FOMCが労働市場の弱さに焦点を絞っている現在、債券市場はそれに対して極めて敏感になっている。
関連記事:米政府閉鎖が2日目、打開の兆し見えず-トランプ氏と民主党の対立激化
9月の米消費者物価指数(CPI)は15日、生産者物価指数(PPI)は16日に発表が予定されている。次回FOMCは28-29日に開催。
雇用統計が発表される確率が極めて低くなっているため、市場は雇用減速を確認する手がかりとして来週の地区連銀経済報告(ベージュブック)に注目するだろうと、INGのストラテジストらはみている。8月の同報告では雇用市場について「かなり悲観的」な見方が示されたと指摘した。
JPモルガン・アセット・マネジメントのグローバル金利ポートフォリオマネジャー、キム・クローフォード氏は過去の閉鎖を例に、2週間続いても経済への「打撃は一時的なものだった」とブルームバーグテレビジョンで指摘。
「しかしそれ以上長くなれば、影響が加速度的に広がるだろう」と同氏は述べた。政府職員への給与支払いが滞れば、消費の下押しを通じて景気はさらに減速に向かうと続けた。
閉鎖の長期化に伴い、来週の債券市場に影響波及が表面化し始める可能性がある。
ウェルズ・ファーゴ・セキュリティーズの金利ストラテジスト、アンジェロ・マノラトス氏は「5日以上の政府閉鎖の場合、金利は小幅に低下する傾向がある」と述べた。
外為
外国為替市場のドルは反発。ワシントンの与野党対立による政治リスクに、重要統計の発表延期が加わり、ドルの上値は重い。主要10通貨の中では原油安の影響でノルウェー・クローネが安い。
| 為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| ブルームバーグ・ドル指数 | 1201.75 | 1.60 | 0.13% |
| ドル/円 | ¥147.28 | ¥0.21 | 0.14% |
| ユーロ/ドル | $1.1715 | -$0.0017 | -0.14% |
| 米東部時間 | 16時50分 |
円はドル買いの流れが強まる中で下げに転じ、一時は1ドル=147円51銭まで売られた。欧州時間の取引では146円60銭まで上昇していた。
4日の自民党総裁選は結果次第で日本の財政および経済の道筋に影響を与えるとして、市場で注目されている。イベント予測市場のポリマーケットは、小泉進次郎農相が次期首相になる確率を77%としている。

主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は、一時0.4%近く上昇する場面もあった。前日までは4営業日連続で下げていた。
TDセキュリティーズの通貨戦略責任者、ジャヤティ・バラドワジ氏は「3日の統計発表はなさそうだ」と語る。「統計のためのデータは収集済みだが、閉鎖が続いていれば発表されないだろう。これが長期化すれば、15日のCPIも危ない」と述べた。
マニュライフ・インベストメント・マネジメントのグローバルマクロ担当シニアアナリスト、エリカ・カミレリ氏は「米政府閉鎖は、ドルのリスクプレミアが上昇する必要性があるという当社の見解を一層強めるものだ」と述べた。
原油
ニューヨーク原油相場は4日続落し、およそ5カ月ぶりの安値となった。石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成するOPECプラスが5日の会合で、一段の生産量回復で合意するとの見方が引き続き弱材料となった。米政府機関の閉鎖でリスクオフの心理も広がっている。
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)は5月上旬以来の安値で引けた。北海ブレントも5月下旬以来の安値となった。
ホワイトハウス報道官が、政府閉鎖に絡んだ連邦職員の削減が数千人規模に上る可能性があると述べたことなどを受け、政治的な不透明感が強まった。また、これにより米経済の健全性、石油消費の見通しに対する懸念も深まった。

エミレーツNBDのチーフエコノミスト、エドワード・ベル氏は「原油市場の関心は週末のOPECプラス会合に集まっている。2026年に在庫が高水準で積み上がると予想されている中でも、OPECプラスは増産継続で合意するだろう」と述べた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物11月限は、前日比1.30ドル(2.1%)安の1バレル=60.48ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント12月限は1.9%下げ、64.11ドルで引けた。
金
金スポット相場は6営業日ぶりに下落。ドルの上昇が重しとなったほか、これまでの最高値更新を受けて利益確定売りが優勢となった。
金はこの1カ月、買われ過ぎの領域にあり、利食いが出やすい状態だった。
ただ、スポット価格はニューヨーク時間午後に下げ幅を縮小している。午後3時19分現在は前日比8.84ドル(0.2%)安の1オンス=3856.90ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は29.40ドル(0.75%)安の3868.10ドルで引けた。
原題:Tech Stock Buyers Emerge as Shutdown Extends: Markets Wrap(抜粋)
原題:Treasuries Lose Momentum as US Government Shutdown Delays Data(抜粋)
原題:Dollar Rebounds; Norwegian Krone Lags on Oil Prices: Inside G-10(抜粋)
原題:Oil Sinks Near 5-Month Low on OPEC Signals, Government Shutdown(抜粋)
原題:Gold Drops as Dollar Gains, Investors Take Profits After Rally(抜粋)
