▽「高市で行くから」 自民党総裁選の行方を決めた麻生太郎氏の”号令”<YAHOOニュース>10/5(日) 10:26

 「党員や地方の声を受け止めましょうよ」。自民党総裁選の国会議員投票が差し迫った4日午前、小泉進次郎農相を支持する中堅の電話が鳴った。相手の高市早苗前経済安全保障担当相陣営の議員は、「党内世論」を重視するよう促した。党員・党友票で優位に立つとみられていた高市氏への投票依頼だった。

【写真】自民党総裁選の決選投票で、投票する麻生最高顧問=4日午後2時11分、東京・永田町の党本部(撮影・柿森英典)

 同じ頃。各地の党員・党友票で高市氏が小泉氏を大きく引き離しているとの情報が永田町を駆け巡る。高市陣営は「引き剥がし」の攻勢を強める。林芳正官房長官を支援する議員も同様に揺さぶった。決選投票が「高市-小泉」になれば、政権を共に支えた小泉氏と林氏の両陣営は連携するとの予測があったからだ。

 昨秋の総裁選で高市氏を支援し、非主流派に沈んだ麻生太郎最高顧問も動く。3日夜、票読みを重ねて高市氏に勝ち筋を見いだし、腹を決める。4日朝にかけ、投票先を決めかねていた派閥議員約10人に号令を出す。「党員(票)に合わせろよ。高市で行くから、言うなよ」。決選へ向け“麻生票”を固めにかかった。

 1年越しに雪辱を果たした麻生氏。周辺はほくそ笑んだ。「ばくちに勝ったな」

小泉氏、包囲網に失速

自民党総裁選後の両院議員総会で、候補者らと手を取り合う高市早苗新総裁(左から4人目)=4日午後3時13分、東京・永田町の党本部(撮影・柿森英典)

 4日昼、党員・党友票で高市早苗前経済安全保障担当相の優勢は確定的となった。国会議員投票の直前に集会を開いた小泉進次郎農相は声を張った。「国民のためにひたむきに前向きに働く自民党をつくりあげよう」。党本部そばのビルの一室に集ったのは議員70人ほど。「予想どおり」と陣営幹部は強がったが、出馬の記者会見時より目減り。切り崩しの影響は明らかだった。

 前回総裁選の「失速」を糧に小泉氏は今回、ブレーンの木原誠二元官房副長官らが作った原稿を読む「安全運転」を徹底。切れ味鋭い発信力も、改革志向の政策も影を潜めた。「全く良さを出せなかった」(中堅)。陣営が小泉氏に有利な内容を呼びかける「やらせ投稿」も発覚し、勢いはそがれた。

 「経験や見識の浅さが目立つ」。小泉氏支持から中盤で林芳正官房長官の支持に乗り換えたベテランは、見切りを付けた。

*  

迎えた1回目の投票。小泉氏は地方票で高市氏に35票差をつけられた。議員票も旧安倍派を軸に支持を集めた高市氏64票に対し80票にとどまり、2位に。中堅は「3桁近く取れる想定だったのに」とうなだれた。

 決選投票を前にした両候補による5分間の演説。仲間への感謝を前面に押し出した小泉氏に対し、高市氏は紙に目を落として政策にも触れた。小泉陣営の若手でさえ「非常に練られたものだった」とうなった。

 小泉陣営には決選になれば、3位の林陣営と幹部同士が水面下で票の融通を調整し、「議員票でひっくり返せる」との戦略があった。「右手なら小泉氏、左手なら高市氏」-。林陣営では投票のサインを事前に決定。序盤に投票した議員は実際、右手で投票箱に票を入れて「小泉支持」のサインを送ったものの、一部は高市氏支持に流れた。

 その一人、平井卓也元デジタル相は交流サイト(SNS)で「党員票で第1位となり、地元・香川において最も多くの支持を得た高市候補に一票を投じた」と書き込んだ。

 最終盤で高市氏支持に振り切った麻生太郎最高顧問に対し、昨年は「高市包囲網」を主導し、石破茂政権の後ろ盾となった岸田文雄前首相は最後まで「沈黙」。重鎮の対応の差も作用した。旧岸田派の中堅は「小泉氏がもう少し競っていれば違った。岸田氏も諦めたのだろう」。

 1回目投票4位の小林鷹之元経済安保相も「党員票の多さ」を決め手に、決選では高市氏支持に。5位の茂木敏充前幹事長も「一致団結しよう」と陣営に呼びかけた。気脈を通じる麻生氏に歩調を合わせて高市氏支援に回ったとみられる。

 石破政権で非主流派だった旧安倍派に加え、麻生氏、茂木氏、小林氏らが固まり、女性初の高市総裁の誕生につながった。昨年とは真逆の構図に、党関係者はつぶやく。「立役者の麻生氏や旧安倍派の復権は間違いない」 (岩谷瞬、古川大二、平峰麻由)

西日本新聞

▽高市新総裁、トランプ関税再交渉目指せば「大きな摩擦に」…米WSJ紙で専門家警告<読売新聞オンライン>2025/10/05 09:42 

 【ワシントン=阿部真司】米国務省は4日の声明で、自民党の新総裁に高市早苗・前経済安全保障相が就いたことを受け、「相互の安全保障と経済利益を増進するため、引き続き日本と協力していくことを楽しみにしている」とコメントした。日米同盟について「インド太平洋地域と世界全体の平和、安全、繁栄の礎であり、かつてないほど強固だ」と強調した。

 米国笹川平和財団シニアディレクターのジェームズ・ショフ氏は4日、読売新聞の取材に、高市氏の当面の課題としてトランプ政権が求める防衛費増額を挙げ、「トランプ氏に対し、日本に時間的猶予を与えるよう説得するのは簡単ではない」と指摘。高市氏が「自民党を結束させ、政策を前進させる強力な連立政権を樹立する必要がある」と述べた。

 一方、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は4日、高市氏が総裁選中、関税を巡る日米合意の再交渉の可能性に触れたことを指摘し、仮に高市氏が再交渉を目指せば「大きな摩擦を引き起こすことになる」と警告する専門家の声を紹介した。

▽高市氏総裁選勝利の核心、麻生太郎氏を納得させた「安倍路線継承」と政策・人事 有元隆志<産経ニュース>2025/10/5 15:00有料会員記事

有元 隆志

自民党総裁選の決選投票に勝利し、新総裁に選出された高市早苗前経済安全保障担当相 =4日午後、党本部(春名中撮影)
自民党総裁選の決選投票に勝利し、新総裁に選出された高市早苗前経済安全保障担当相 =4日午後、党本部(春名中撮影)

自民党総裁選(4日投開票)は、「小泉進次郎農水相が有利」という当初の予想を覆して、高市早苗前経済安保相が勝利した。「勝敗のカギ」を握ったのは党内で唯一派閥として残る麻生派(43人)を率いる麻生太郎最高顧問(元首相)の動向だった。

総裁選を通じて、政治ジャーナリストの田崎史郎氏が、麻生氏の小泉氏に対する評価について、「(昨年の総裁選とは)かなり変えてきた」と述べるなど、「麻生氏が高市氏を支援しない」との情報がメディアを中心に流れた。

昨年秋の段階では、麻生氏は小泉氏を評価していなかったものの、小泉氏が衆院の政治改革特別委員会の理事として、野党が求める企業・団体献金の廃止を防いだとして、「麻生さんは小泉さんのことを『成長した』と。初めて褒めた」(田崎氏のテレビ朝日番組での発言)というわけだ。

▽立民・安住幹事長「自民内が混乱している」…臨時国会の召集時期、変更の可能性ありと自民が伝達<読売新聞オンライン>2025/10/05 16:23

立憲民主党の安住幹事長

 立憲民主党の安住幹事長は5日放送のBSテレ東の番組で、自民党総裁選を受けた臨時国会の召集時期を巡り、自民側から日程変更の可能性があると伝えられたことを明らかにした。

立憲民主党の安住幹事長

 政府・自民は15日にも臨時国会を召集し、首相指名選挙を行う方向で調整していた。安住氏は複数の自民幹部から「今までの路線が白紙に戻るかもしれない」と連絡があったと説明した。新政権発足までの準備に時間がかかり、召集時期が遅れる可能性がある。

 安住氏は「自民内が混乱している」とも指摘した。番組は4日に収録された。

▽麻生氏が出した「高市氏支持」の号令 派閥政治が幅利かす<毎日新聞>2025/10/4 21:00

自民党の総裁室の椅子に座る高市早苗新総裁=同党本部で2025年10月4日午後7時2分、渡部直樹撮影
自民党の総裁室の椅子に座る高市早苗新総裁=同党本部で2025年10月4日午後7時2分、渡部直樹撮影

 「解党的出直し」を掲げた自民党が総裁選で選んだトップリーダーは、高市早苗前経済安全保障担当相(64)だった。最大の勝因は党員・党友票での優勢を背景に、最終盤で麻生太郎元首相が高市氏支持の「号令」を麻生派内にかけたことだった。各陣営も追随し、劣勢とみられていた国会議員票を引き寄せた。大敗した参院選総括に「解党的出直し」を明記したことを受けて「#変われ自民党」の標語を掲げたが、際立ったのは旧態依然とした派閥政治が幅を利かせる「変わらない自民党」の姿だった

勝負を分けた各地の知らせ

 「決選投票では党員票の多い方に投票を」

 投票を直前に控えた4日昼、党内で唯一、派閥として残る麻生派(43人)の所属議員に一斉に指示が回った。…