▽【米国市況】円一時150円台半ば、国債下落-半導体主導でS&P最高値

Rita Nazareth

  • 円下落し対ドル一時150円48銭、2カ月ぶり安値-対ユーロでも大幅安
  • S&P500種7日続伸、AIバブル懸念を一蹴-先進国で長期金利上昇

外国為替市場では円が下落。週末の自民党総裁選での高市早苗氏勝利を受けて、欧州時間には対ドルで一時2%安の1ドル=150円48銭と2カ月ぶりの安値を付けた。ただ、その後は下げ幅をやや縮小した。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1204.273.530.29%
ドル/円¥150.37¥2.901.97%
ユーロ/ドル$1.1711-$0.0031-0.26%
  米東部時間16時55分

  円は対ユーロでは1.7%安。アジア時間には一時1.8%安の1ユーロ=176円25銭と過去最安値を付けていた。

  高市早苗自民党総裁の経済ブレーンの1人である本田悦朗元内閣官房参与は、日本銀行の利上げ時期に関して、今月の金融政策決定会合は難しいとする一方、12月会合の可能性はあるとの見解を示した。

  本田氏は6日のインタビューで、日銀の利上げついて高市氏が慎重に進めてほしいと考えており「いつならいいとか、今はだめだとか言うことはない」と指摘。その上で、10月中旬ごろとみられている首相就任から間もない29、30日の会合で利上げに踏み切るのは、「さすがに難しい」と語った。

関連記事:高市ブレーンの本田元内閣参与、日銀は10月利上げ困難-12月の可能性

  ノムラ・インターナショナルの通貨ストラテジスト、宮入祐輔氏は「目先で重要なのは誰が財務大臣になるかだ。高市氏が望むとされる財政拡張的な政策を後押しする人材が選ばれることになれば、市場は円売りを再度進める可能性がある」と指摘。

  一方で「OIS市場は年内の日銀利上げの可能性を37%程度とみており、利上げ期待が回復すれば、円はドルに対して150円より十分円高の水準に戻る」と予想した。

  ドイツ銀行のストラテジストは、自民党総裁選での高市氏勝利を受け、日銀による利上げの時期など政策の優先順位が明確になるのを見極めるまで、円への強気なポジションを手じまう方針を示した。

  同行のティム・ベイカー、マリカ・サチデバ両ストラテジストは「当社の基本シナリオでは、円は一時的に150円近辺まで下落する可能性があるが、円が傾向的にさらに大きく下落するとはみていない」と続けた。

ドル・円の推移

  ブルームバーグ・ドル・スポットは上げ幅を縮小。市場では米政府閉鎖問題が引き続き焦点となっている。上院は6日遅く、11月21日まで政府機関の運営を継続するためのつなぎ予算案について、5回目の採決を行う予定だ。

関連記事:トランプ氏、政府閉鎖の6日決着要求-民主拒否なら職員解雇警告 (1)

  サラ・ビアンキ氏らエバコアISIのアナリストは「激しい応酬の裏では、事態打開に向けて出口を模索する協議が進んでいる」とリポートで指摘。「その結果、当社では政府閉鎖が来週末までに終結する確率を6割、続く確率を4割とみている」と述べた。

  ユーロは対ドルでは下落し、1週間ぶりの安値となった。フランスのルコルニュ首相が辞任したことが背景。マクロン大統領が新内閣を指名してからわずか1日後の辞任となった。

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米国債

  米国債は下落(利回りは上昇)。財政懸念の高まりを背景に欧州やアジア諸国の多くで国債利回りが上昇し、米国債もこうした流れに追随した。

  経済指標が公表されない中、市場では金利見通しの手がかりを得ようと、政府機関の閉鎖がどのくらい続くのかに注目する動きも出ている。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.75%3.80.81%
米10年債利回り4.15%3.50.84%
米2年債利回り3.59%1.20.35%
  米東部時間16時55分

  6日目となった政府閉鎖は過去の例と異なり、トランプ大統領が連邦職員の解雇を警告したことから、協議を一層複雑にしている。ゴールドマン・サックス・グループやHSBCなどのストラテジストは政府閉鎖について、10日以上続く確率が高いとの見方が賭け市場で広がっていると顧客向けリポートで指摘した。

  BMOキャピタル・マーケッツの金利ストラテジスト、イアン・リンジェン、ベイル・ハートマン両氏は「政府閉鎖が長期化する方向に傾くのではないかと、投資家は懸念している」と指摘。「それが1ー2週間にとどまるのか、4ー5週間に及ぶのかは依然として不明だ。今後は政府再開に向けた段階的な進展に焦点が当たり、それに伴って再開への期待が高まったり、後退したりを繰り返す展開になるだろう」と予想した。

  連邦公開市場委員会(FOMC)会合の結果に連動するスワップ取引では、経済指標の発表がないにもかかわらず、依然として今月の利下げ確率を約88%と織り込んでいる。

株式

  米株式市場では半導体銘柄が買われ、S&P500種株価指数は最高値を更新した。アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)とOpenAIが人工知能(AI)インフラ構築に関する契約締結を発表したことを受け、強気相場をけん引してきたAIを巡る熱狂が強まった。

関連記事:OpenAIとAMDが半導体契約、数百億ドル規模-AIインフラの構築で (2)

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数6740.2824.490.36%
ダウ工業株30種平均46694.97-63.31-0.14%
ナスダック総合指数22941.67161.160.71%
OpenAI, DeepSeek And ChatGPT Artificial Intelligence Illustrations
S&P500種は最高値、OpenAIとAMDの契約発表を好感Photographer: Andrey Rudakov/Bloomberg

  S&P500種はこれで7営業日続伸し、5月以来の長期上昇局面となった。AMDは24%高。一方、同業のエヌビディアは下落。フィラデルフィア半導体株指数は3%値上がりした。大型株ではテスラの上げが目立った。ソーシャルメディアへの一連の投稿で新製品発表の可能性を示唆し、投資家の期待が高まった。

  今年に入って、大型データセンター投資が相次いでまとまっており、先月にはエヌビディアがOpenAIに最大1000億ドル(約15兆円)を投じ、少なくとも10ギガワットの電力供給能力を持つAIインフラと新たなデータセンター構築を後押しするとしていた。

  ナベリアー&アソシエーツのルイス・ナベリアー最高投資責任者(CIO)は「半導体セクターは絶好調だ」と指摘。「AI関連のテーマは勢いを増し続けている」と述べた。

  ミラー・タバクのチーフマーケットストラテジスト、マット・メイリー氏は、AIブームを巡るアニマルスピリッツがまたも再燃する中、米政府機関の閉鎖といった問題に対する市場の反応が限定的なのも不思議ではないと話した。

  ウォール街のベテラン・ストラテジスト、ヤルデニ・リサーチのエド・ヤルデニ氏は「1999年の株式市場でハイテクバブルが膨らんでいた当時、現在のようにバブルという声がこれほど多く上がっていた記憶はない」と指摘。逆張り(コントラリアン)の視点からすれば、バブル懸念が存在すること自体が安心材料だと語った。

  アモーヴァ・アセットマネジメントのフィンク直美氏は、足元のハイテク株の高いバリュエーションは1990-2000年代のITバブル期に見られた「根拠なき熱狂」とは性質が異なると指摘。今回の設備投資は、高い収益性に支えられたフリーキャッシュフローによって賄われていると続けた。

  ゴールドマン・サックスのストラテジストらは、堅調な経済とAI分野の明るい見通しを背景に、米企業は当初予想を上回る好決算シーズンを迎えるとの見通しを示した。

  デービッド・コスティン氏率いる同社のチームは、7-9月期について「四半期中の経済データを踏まえると、コンセンサス予想は過度に慎重すぎる」として、いわゆる「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる大型ハイテク株グループも、市場予想を上回る業績を示すと見込んでいる。

原油

  ニューヨーク原油先物は上昇。石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成するOPECプラスは、11月に小幅増産を行うことで合意した。市場で広がっていた大幅な増産への懸念が払拭された。

  OPECプラスは5日の会合で日量13万7000バレルの増産で合意した。増産規模は決定前に報じられていた一部の想定を大きく下回った。

関連記事:OPECプラス、11月の日量13万7000バレル増産で合意-立場の差解消 (1)

  ロイター通信は6日、ロシアのキリシ製油所が、4日のドローン攻撃と火災を受けて生産能力の最も高い装置の稼働を停止したと報道。この報道も原油相場の上昇を後押しした。ウクライナによるロシアのエネルギー施設への攻撃が激化する中、トレーダーはここ数週間、ロシアの供給動向を注視している。

  BOKファイナンシャルのトレーディング担当バイスプレジデント、デニス・キスラー氏は「ウェストテキサスインターミディエート(WTI)先物については、1バレル=60ドル近辺で下値を固めつつある可能性がある」と指摘。ウクライナによるロシア石油インフラへの攻撃とOPECプラスによる小幅増産をその理由に挙げた。

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  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物11月限は、前週末比81セント(1.3%)高の1バレル=61.69ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント12月限は94セント上昇の65.47ドル。

  金相場は続伸し、過去最高値を更新。1オンス=4000ドルに迫った。米利下げ観測と連邦政府機関の閉鎖長期化への懸念から、安全資産としての金の需要が高まっている。

  金スポット価格は一時2.2%高の3970.08ドルに達した。年初来の上昇率は50%を超えている。週間ベースでは前週まで7週続伸を記録。金連動型の上場投資信託(ETF)の保有残高も先週再び増加した。

  またオプション市場では、ETF「SPDRゴールド・シェアーズ」において強気のポジションをさらに積み増す動きが続いた。

  金相場は今年、各国中銀のドル離れに伴う金の買い増しを背景に上昇してきた。トランプ政権下での経済・地政学的な不確実性や米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げも追い風となっている。法定通貨への信頼低下を背景に、「ディベースメント取引(通貨価値切り下げトレード)」と呼ばれる動きが強まる中、投資家は金や銀、ビットコインといった資産に資金を移している。

関連記事:金最高値、ビットコインも上昇-「ディベースメント取引」が通貨圧迫

  個人投資家による金連動型ETFへの資金流入も直近の上昇を支えている。9月の保有残高は約3年ぶりの大幅増となり、10月に入っても流入の勢いは衰えていない。

  ペッパーストーン・グループのアナリスト、アーマド・アッシリ氏は「労働市場の弱含みに伴うFRBの追加利下げ見通しで、金相場を取り巻く環境は良好だ」と指摘。一方で「リスクリワードのバランスが変化しつつあり、短期的な調整局面は長期上昇トレンドの中で健全と受け止められるだろう」と述べた。

  金スポット価格はニューヨーク時間午後2時57分現在、前週末比71.49ドル(1.8%)高の1オンス=3958.03ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は67.40ドル(1.7%)上昇の3976.30ドルで引けた。

原題:Yen Plummets on LDP Vote with 150 Level in Focus: Inside G-10(抜粋)

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