高市新総裁就任で自民党は党内役員人事、閣僚人事をめぐって蠢いている。サプライズ劇を演出した麻生太郎氏が副総裁に就任、党内政局をはじめ野党対策の主導権を握った。これに茂木派も参画。高市体制はどうやら麻生・旧茂木派主導の体制になりそうだ。人事の建前は党内団結だが、見えないところで論功行賞に気を配る。これが日本的やり方だ。だが、米国は徹底的に相手を叩き潰すことに重点を置く。政府機関の閉鎖が続く中で、トランプ大統領が2月に指名したラッセル・ヴォート氏が暗躍している。この人は現在、公平・公正・中立を旨とするは議会予算局の局長。同局長は政府予算の赤字削減に向けて数千人に上る職員の解雇も辞さない構えだ。これを大統領が追認している。国際政治アナリストでYouTuberの及川幸久氏は、「トランプ氏は政府機関の閉鎖を利用して政府の効率化を狙っている」と読む。DOGEを率いたイーロン・マスク氏は政権を去ったが、政府機関の閉鎖が続く裏で、“第2のマスク氏”が暗躍しているようだ。
政府機関の閉鎖を回避するために昨日も米議会上院で予算案の採決が続いた。Bloombergによると「米上院は6日、政府機関の閉鎖終了に向けた与野党のつなぎ予算案を否決した。否決は5回目。11月21日までの資金を手当てする共和党案と、医療費削減の撤回を盛り込んだ民主党案のいずれも十分な支持が得られなかった。政府閉鎖は7日目に突入する」とある。共和、民主両党がそれぞれの主張をぶつけ合っているが、どちらも可決できないまま政府機関の閉鎖が続く。トランプ氏の側近の一人ハセットNEC委員長は「法案が否決された場合、トランプ政権が『厳しい措置』を取るだろう」とけん制している。問題はこの厳しい措置の中身だ。共和党寄りのヘリテージ財団出身で保守派のヴォート氏は「これまでなら一時帰休だった政府職員の扱いを解雇にする」方針。加えて政府予算に組み込まれている「プロジェクトの廃止を検討している」と指摘する。
ヴォート氏が取り組んだのが「プロジェクト2025」と題されたレポートだ。中身はUSAIDの解体(予算規模350億ドル、日本円換算約5兆円)、「違法なDEI」に関連する政府資金の検証を徹底する。グリーンエネルギーに関連した詐欺行為の禁止、ニューヨーク市の改修事業の見直しなどが盛り込まれている。要するに政府機関の閉鎖を利用して民主党寄りの案件やプロジェクト解体することが目的だというのだ。おそらく民主党もそれを理解した上でトランプ法案に反対しているのだろう。かくしてて政府機関の閉鎖は長期化する。1日のこの欄で政府機関の閉鎖は米国の民主主義が機能不全に陥っている証拠だと書いた。及川氏の指摘が事実なら、それどころではない。共和党による民主党潰しということになる。3年後の大統領選で民主党が勝てば、今度は共和党潰しが始まるのだろう。いいか悪いかは別にして、日本の政局は何があっても穏健だ。
