▽【米国市況】円安加速で152円台、「高市トレード」に勢い-株息切れ
Rita Nazareth
- 対ドルの円相場は今年初の4営業日続落、一時1.1%安の152円04銭
- S&P500種は反落、連日の最高値更新で高揚感は警戒感に変化

ニューヨーク外国為替市場では円の下げが目立った。対ドルの円相場は今年初の4営業日続落。一時1.1%安の1ドル=152円04銭まで売られ、2月以来の安値を付けた。
| 為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| ブルームバーグ・ドル指数 | 1209.29 | 5.02 | 0.42% |
| ドル/円 | ¥151.97 | ¥1.62 | 1.08% |
| ユーロ/ドル | $1.1655 | -$0.0056 | -0.48% |
| 米東部時間 | 16時41分 |
外為市場では、円を調達通貨とするキャリー取引が復活し、レバレッジをかけた新たな円売りの圧力が強まっている。
景気刺激策に前向きな高市早苗氏を首班とする内閣が発足する見通しとなり、日本銀行の早期利上げの可能性が後退したとの見方が広がった。
BoFA証券の山田修輔主席FX・金利ストラテジストは、自民党総裁選で高市氏が勝利したのを受け、ドル・円相場の予想水準を引き上げた。1ドル=150円を上回った後の下落局面では押し目買いが入るとみている。
6日付のリポートで山田氏は「高市氏の勝利を踏まえ、ドル・円相場の予想を引き上げた。2025年末の予想を1ドル=153円から155円に、2026年末の予想を同148円から150円にそれぞれ上方修正する」とした。同予想に対するリスク要因としては、米国での「深刻な景気減速もしくはリセッション(景気後退)」が起きる可能性を指摘。米政府機関閉鎖についても注視していると記した。
動画:円安止まらず、対ユーロで過去最安値-円キャリートレードをBofA証券の山田氏が解説

INGのアナリスト、クリス・ターナー氏とフランチェスコ・ペソレ氏は7日付のリポートで以下のように述べた。
高市氏が率いる新政権は、景気浮揚に向けてあらゆる影響力を行使すると市場はみている。実際、いわゆる「高市トレード」はイールドカーブのスティープ化、株高、円安という形で現れている。
欧州を拠点とするトレーダーによると、ヘッジファンドは150円70銭よりも円安の水準で、円ショートのポジションを増やしている。
為替市場では、円安の進行を抑えるため日本当局者による口先介入が行われるかに注目が集まっている。日本の当局が為替介入に踏み切ったのは2024年7月が最後で、当時は円相場が一時1ドル=160円を超えて急落した局面だった。
株式
S&P500種株価指数は反落。過去最高値の更新が続いていただけに、市場には買い疲れの兆しが広がった。
| 株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| S&P500種株価指数 | 6714.59 | -25.69 | -0.38% |
| ダウ工業株30種平均 | 46602.98 | -91.99 | -0.20% |
| ナスダック総合指数 | 22788.36 | -153.31 | -0.67% |

人工知能(AI)関連への投資ブームに支えられた市場の高揚感は、S&P500種の時価総額が4月の安値から16兆ドル(約2430兆円)増加するなか、買われ過ぎへの警戒感に変わった。オラクルのクラウド事業の利益率が市場予想を下回っているとの報道も、市場では材料視された。
テスラ株もさえない。同社は主力のスポーツタイプ多目的車(SUV)「モデルY」の廉価版を発表。人気車種をより手頃な価格にすることで、米国のEV向け税額控除廃止による影響を和らげる狙いがある。
関連記事:深まるAIバブル懸念、歴史は繰り返すのか-大型テク株の急騰に危うさ
UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのウルリケ・ホフマン・ブチャディ氏は「ここまで力強い上昇が続いた後だけに、一時的な調整局面があっても不思議ではない。ただ、株式相場の上昇は堅固なファンダメンタルズに支えられており、今後も市場を下支えするとみている」と語った。

シティグループのクリス・モンタギュー氏は「市場で利益確定の動きが強まっており、とりわけナスダックではそのリスクが高まっている。これが今後の上値を抑える要因となり得る」と述べた。
パイパー・サンドラーのクレイグ・ジョンソン氏は、マクロ経済の追い風が株式市場を支えていることから、依然として強気の見方を維持している。それでも、ここ数週間で大きく値を上げて過熱感の出ている銘柄には警戒が必要だと指摘している。
国債
米国債相場は上昇(利回りは低下)。この日実施された580億ドル規模の3年債入札は堅調な需要を集めた。東部時間午後1時に締め切られた3年債入札は、最高落札利回りが3.576%と、入札前取引の水準3.584%を下回った。
ウェルズ・ファーゴ・セキュリティーズの金利ストラテジスト、アンジェロ・マノラトス氏は「労働市場が全体として弱含む中でも利回りが上昇し、一部で需要を押し上げたとみられる」と指摘。3年債は前回の入札以降、割安感が出ていたと述べた。
| 国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
|---|---|---|---|
| 米30年債利回り | 4.73% | -2.2 | -0.45% |
| 米10年債利回り | 4.12% | -2.7 | -0.65% |
| 米2年債利回り | 3.57% | -2.3 | -0.63% |
| 米東部時間 | 16時41分 |
市場では、米金融当局者の発言も意識された。
米連邦準備制度理事会(FRB)のマイラン理事は、他の一部政策当局者が考えるほど、FRBの2大責務の間に大きなジレンマはないとの認識を示した。
マイラン氏は人口増加ペースの減速に加え、トランプ大統領の関税政策によるインフレへの影響は限定的だとする自身の見通しなどを理由に挙げ、FRBが利下げを継続することは可能だとの見解を改めて表明した。
関連記事:マイランFRB理事、物価見通し楽観-「2大責務に大きなジレンマなし」
一方、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は、大幅な利下げはインフレを再び加速させるリスクがあるとの見解を示した。
ミネソタ・スター・トリビューン紙が主催した人工知能(AI)と経済に関するパネル討論会で「(大幅利下げを行えば)経済が一時的に高インフレに見舞われることになるだろう」と指摘。「基本的に、経済の潜在成長力や供給能力を超えるペースで景気を押し上げようとすれば、最終的には経済全体で物価が上昇することになる」と述べた。
関連記事:ミネアポリス連銀総裁、大幅利下げに慎重姿勢-インフレ再加速の恐れ
原油
ニューヨーク原油先物相場は小幅ながら3日続伸。日中は方向感に欠ける展開となった。市場は、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成するOPECプラスによる一連の増産措置の影響やサウジアラビアの動向を見極めようとしている。
OPECプラスは5日、11月に日量13万7000バレルの増産を実施することで合意。サウジアラビアは、主要油種のアジア向け販売価格を据え置き、慎重姿勢を取っていることを示唆した。市場では値上げが予想されていた。
エミレーツNBDのチーフエコノミスト代行兼調査部門グループ責任者のエドワード・ベル氏は「OPECプラスが11月に予定している増産は非常に小幅だ」と指摘。「市場は今後も在庫増加の兆候を注視していくだろう」と述べた。

ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物11月限は、前日比4セント(0.1%)高の1バレル=61.73ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント12月限は2セント下げて65.45ドル。
金
金相場は続伸。先物相場では、中心限月である12月限が初めて1オンス=4000ドルを突破。スポット価格も4000ドルに迫った。米国の政府機関閉鎖とフランスの政治危機が手掛かり。
スポット価格は3991ドルを上回り、過去最高値を更新した。
米連邦政府機関の閉鎖を受け、同国経済の健全性を判断する重要なデータが公表されない状況が続いており、金融当局は経済情勢の変化の把握に苦慮している。市場は依然として今月の0.25ポイント利下げを織り込んでいる。利下げは、金利を生まない金にとって追い風となる。
フランスではルコルニュ首相が辞任。与野党の予算協議が難航し、財政健全化に向けた取り組みが頓挫(とんざ)したことが背景にある。日本では財政拡大派の高市早苗氏が自民党新総裁に就任し、次期首相に就任する見通しが強まった。
MKS・PAMPの調査・金属戦略責任者、ニッキー・シールズ氏はリポートで、フランスと日本の政治情勢が財政悪化懸念を強め、金相場を押し上げていると指摘。今回の急上昇を主導したのは、欧州と日本を中心とした個人投資家の需要、および機関投資家からの資金流入だと分析した。
中国人民銀行(中央銀行)は9月、金保有を11カ月連続で増やした。金価格が過去最高値を更新する局面で買い増しを続けた。
こうした中、ゴールドマン・サックス・グループは、2026年12月の金価格予測を1オンス=4900ドルに上方修正した。従来は4300ドルだった。
金スポット価格はニューヨーク時間午後3時35分現在、前日比21.66ドル(0.55%)高の1オンス=3982.64ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は28.10ドル(0.7%)上昇し4004.40ドルで引けた。
原題:S&P 500 Falls After $16 Trillion Surge From Lows: Markets Wrap
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