▽【米国市況】円は対ドル5日続落、153円目前-金価格さらに上昇
Rita Nazareth
- 円は昨年12月以来の長期下落局面、市場では介入ラインを探る動きも
- 金スポット価格は一時4059.31ドル、S&P500種は押し目買いで反発
ニューヨーク外国為替市場で、円はドルに対して5営業日続落。昨年12月以来の長期下落局面となった。自民党の高市早苗総裁が財政拡張・金融緩和志向との見方から円を売る動きが続いている。この日は1ドル=153円に迫る場面もあった。
円の対ドル相場は、2024年に日本が為替介入を実施した日の安値水準(157円99銭、159円45銭、160円17銭、161円76銭)に近づきつつある。市場では介入ラインを探る動きが強まっているが、当局は特定の水準だけでなく、円安のスピードやボラティリティー(変動率)も注視しているとみられる。
| 為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| ブルームバーグ・ドル指数 | 1211.09 | 1.80 | 0.15% |
| ドル/円 | ¥152.71 | ¥0.81 | 0.53% |
| ユーロ/ドル | $1.1628 | -$0.0029 | -0.25% |
| 米東部時間 | 16時35分 |

ドル指数は9月に2022年以来の安値を付けたが、このところ持ち直している。米政府機関の一部閉鎖による悪影響はあるが、米国外での懸念要因が相次いでいることが、ドル買いを促している。
スカンジナビスカ・エンスキルダ・バンケンのアジア戦略責任者、ユージニア・ビクトリノ氏は「日本やフランスの財政持続性への懸念が高まっていることを受け、市場は米国のマクロ経済見通しを評価し直している」と指摘。「米政府機関の閉鎖が続いているにもかかわらず、皮肉なことに市場は、米国の状況が相対的にましだと見なしている」と述べた。
ブルームバーグ・ドル・スポット指数は3日続伸。アジアや欧州のトレーダーによれば、ヘッジファンドがユーロや円の下落を見込んだオプションの購入を拡大していること、実需のドルロング需要がドル指数の上昇につながっている。
為替オプション市場では、円高を見込む投資家の姿勢が一段と後退。円相場が下落基調を強めるなか、ボラティリティーも3週間ぶりの高水準に上昇している。
1カ月物のドル・円リスクリバーサルは5営業日連続で上昇し、8日にはプットとコールの価格が等しいパリティー(等価)となった。これは2022年9月以来およそ3年ぶりの水準だ。
これは1カ月先のドル・円相場について、トレーダーが円安に賭けるコールオプションと円高に備えるプットオプションに同程度の価格を支払っていることを示す。市場では2022年9月以降、プットを買うためにコールよりも高いプレミアムを支払う状況が続いていたが、その構図が崩れた格好だ。

株式
S&P500種株価指数は反発。前日は上昇一服となったが、株価には上値余地があるとの見方から、押し目を拾う動きが再び強まった。
| 株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| S&P500種株価指数 | 6753.72 | 39.13 | 0.58% |
| ダウ工業株30種平均 | 46601.78 | -1.20 | 0.00% |
| ナスダック総合指数 | 23043.38 | 255.02 | 1.12% |
堅調な企業業績や米利下げ再開などを背景に株価が連日で最高値を更新するなか、モメンタムを追う投資家は株式市場への投資を続けている。人工知能(AI)をめぐる熱気も再び高まり、このところ浮上していたAI関連銘柄に対するバブル懸念もいったん和らいだ。
「現在のテクノロジー大手のPER(株価収益率)は、ドットコム・バブルのピーク時にハイテク企業が示していた水準をなお大きく下回っており、強気相場は健在とみている」と、UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのマーク・ヘーフェル氏は述べた。

ハイテク銘柄の比重が高いナスダック100指数は1.2%上昇。半導体のエヌビディアが相場をけん引した。同社のジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)はCNBCのインタビューで、ブラックウェルへの需要「非常に強い」と述べた。
ゴールドマン・サックスのストラテジスト、ピーター・オッペンハイマー氏は、米国のハイテク株に現時点でバブルを懸念するのは時期尚早との見方を示す。同氏によると、ハイテク大手の株価が記録的な上昇を続けている背景には、堅調な利益成長がある。過去のバブルでは、市場の上昇は主に投機によって支えられていた。
それでも同氏は、一部銘柄に偏った上昇やAI分野での競争激化に伴うリスクを避けるため、投資家に分散投資を改めて推奨している。
関連記事:米ハイテク株、加熱気味だがバブルの懸念は時期尚早-ゴールドマン
パイパー・サンドラーのクレイグ・ジョンソン氏によると、AI関連銘柄や好調なマクロ環境に支えられて相場は大幅に上昇してきたが、動向を注視すべきことを示す兆しも見え始めている。「投資家は強気姿勢を維持すべきだが、過熱感のある銘柄や、依然として解決の見通しが立たない米政府機関の閉鎖には注意が必要だ」と同氏は語った。
バンク・オブ・アメリカ(BofA)のストラテジスト、ジル・ケアリー・ホール氏によれば、同行の顧客は4週連続で米国株を売り越した。個別株と株式型上場投資信託(ETF)のいずれからも資金流出が見られたという。
国債
米国債相場は総じて下落(利回りは上昇)。この日行われた390億ドル規模の10年債入札は、需要が市場予想をやや下回った。
| 国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
|---|---|---|---|
| 米30年債利回り | 4.71% | -0.9 | -0.19% |
| 米10年債利回り | 4.13% | 0.4 | 0.09% |
| 米2年債利回り | 3.58% | 2.1 | 0.58% |
| 米東部時間 | 16時35分 |
世界最大の債券市場である米国債市場は足元で動きづらい状況にあるが、政府機関の閉鎖が終了し、重要な経済指標の発表が再開されれば、相場が急激に変動する可能性があると市場関係者は身構えている。
米政府閉鎖で雇用やインフレに関する重要な統計の発表が見送られ、年内残り2回の連邦公開市場委員会(FOMC)会合を前に、国債相場は方向感を失っている。
しかし統計の公表が再開されれば、総額30兆ドル規模の市場に波乱が広がる可能性がある。さらに、政府閉鎖の影響でデータ収集そのものが複雑化する恐れもある。オプション市場では、年内の米金融政策をめぐるさまざまなシナリオに備えたヘッジ需要が高まっている。
関連記事:政府閉鎖でFRB利下げ見通しに不透明感、債券市場でヘッジの動き拡大
ブランディワイン・グローバル・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ジャック・マッキンタイア氏は「この状況がさらに1週間でも続けば、10月経済統計の質に疑問が生じるはずだ。そうなれば、金融当局にとっても市場にとっても実体経済の健全性を見極めるのが難しくなる」と指摘。「したがって、相場が荒れる可能性がある」と語った。

アメリベット・セキュリティーズの米金利トレーディング戦略責任者、グレゴリー・ファラネロ氏も同様の見解を示す。「もし16日までに政府閉鎖が解消すれば、消費者物価指数(CPI)と雇用統計が発表される見通しだ。そこで予想外の結果となれば相場が不安定化し、上にも下にも振れる可能性がある」と述べた。
金
金相場は4日続伸。スポット価格も初めて1オンス=4000ドルを突破した。米経済への懸念や政府機関の一部閉鎖を巡る不安が金相場を一段と勢い付かせた。
アジア時間に4000ドル台に乗せた後、ニューヨーク時間には一時4059.31ドルまで上値を伸ばした。
金スポット価格はわずか2年前には2000ドルを下回っていた。今世紀に入ってからのパフォーマンスは株式を大きく上回っており、年初からの上昇率は54%を超えている。背景には、世界貿易や米連邦準備制度理事会(FRB)の独立性、米財政の安定性を巡る不透明感がある。
地政学的緊張の高まりも安全資産としての金需要を押し上げており、中央銀行は金の購入を積極的に続けている。

サクソ・キャピタル・マーケッツのストラテジスト、チャル・チャナナ氏は「金が4000ドルを突破したのは、単なる恐怖心理ではなく資産再配分の結果だ」と指摘。「経済指標の公表が停止され、利下げが視野に入る中で実質金利は低下しており、人工知能(AI)関連株は過熱感が出ている。今回の上昇局面は中銀が土台を築いたが、今は個人投資家と上場投資信託(ETF)が次の波をけん引している」と述べた。
金スポット価格はニューヨーク時間午後3時30分現在、前日比59.24ドル(1.5%)高の1オンス=4044.09ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は66.10ドル(1.7%)上昇し4070.50ドルで引けた。
原油
ニューヨーク原油先物相場は4日続伸。1週間ぶりの高値を付けた。米国内の石油製品在庫が減少したため、買いが優勢になった。米国株の上昇も追い風となった。
米エネルギー情報局(EIA)によれば、受け渡し拠点であるオクラホマ州クッシングの在庫が週間で76万3000バレル減少したほか、石油製品の在庫も全体的に減った。特に留出油の在庫は6月下旬以来の大幅な減少となった。

ただ、世界的な供給過剰への根強い懸念がなお上値を抑制している。石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成するOPECプラスが生産を引き上げ、米国内の今年の生産は過去最高に達するとみられている。
ウクライナによる製油所へのドローン攻撃でロシアの精製能力が低下しているものの、ロシアの輸出は16カ月ぶりの高水準に近づいている。
コンサルティング会社オイリティクスの創業者ケシャブ・ロヒヤ氏は「先物取引での価格と、予測される世界の需給緩和との乖離(かいり)は続いている」とし、「原油相場は再び、65-70ドルのレンジでの取引が定着しつつある」と述べた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェストテキサスインターミディエート(WTI)先物11月限は、前日比82セント(1.3%)高の1バレル=62.55ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント12月限は1.2%上げて66.25ドル。
原題:
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