高市氏の首班指名選挙が大幅に遅れる見通しだ。理由は公明党の連立離脱示唆。昨年の総選挙、今年の都議会議員選挙、先ごろの参院選挙。この3つの選挙で示された「民意」は自民党と公明党に対する不信任だった。7月に実施された参院選の比例代表得票数は自民党が前回(2022年)に比べ540万票減らしている。公明党は同97万票減。昨年の総選挙での得票数を同じように比較すると、自民党は530万票減、公明党は114万票減。この数字は明らかに「民意」を映し出している。衆参の両選挙で自民党は1070万票、公明党は210万票減らしている。この数字は自公連立政権にノーを突きつけたものと解釈していいだろう。この結果を受けて自民党の石破総裁が辞意を表明、総裁選挙を経て高市新総裁が誕生した。後ろ盾である麻生太郎氏は決選投票に向けて、「党員票の上位者に投票せよ」と指令を出した。要するに民意を尊重せよと言うことだ。
こうした経緯を無視するかのように公明党は、突然のように高市新総裁に対する懸念を表明した。高市氏が新総裁に選出されたのは4日。同氏はこれを受けてすぐに連立相手の公明党に挨拶に向かう。普通は新総裁就任への祝意を表明するのが一般的だが、公明党代表の斉藤氏はこの席で「連立離脱の可能性を示唆した」と、主要メディアは伝えている。そして昨日(8日)自民党と公明党は連立協議を行う。ここで公明党は3点の懸念を表明した。①靖国神社参拝問題②外国人問題③裏金問題と企業献金ーこの3つとされる。①②については両党が合意、③は合意に至らず持ち越しとなった。次回会合の日程も決まっていないことから、両党の話し合いは長引く可能性があると主要メディアは伝えている。協議の詳細は不明だが、公明党がどうして裏金と企業献金にこだわるのか、個人的には理解できない。岸田・石破両政権の時はどうして言わなかったのか、これが一番の疑問だ。
公明党の対応は理解し難い。離脱するなら連立協議を経て最終的に表明すればいいのではないか。最初から離脱を示唆する意味は何か。影響力強化に向けた脅しか。今後の推移を見守るしかないが、いずれにしても公明党にとって民意はどこにあるのか聞いてみたい気がする。もう一つ気になるのは連合の対応だ。芳野友子会長は8日の記者会見で、「国民民主の連立入りは“看過できない”」とクギを刺した。連合は国民民主と立憲民主の野党2党を支持している。国民民主の政権入りは、連合という組織にとって股裂状態を意味する。だが、ここでも問いたいのだ。芳野会長は国政選挙で示された民意を理解しているのだろうか。どうやら民意よりは組織の防衛を優先しているように見える。これは明らかに既得権益の優先だ。民意を尊重するなら組織がどうなろうと構わないのではないか。高市新総裁が直面している生みの苦しみは、この国に蔓延る既得権益派がいかに民意を無視しているか、閉塞感を強める日本の実態である。
