26年間続いた公明党の連立離脱は政局混迷にさらに拍車をかけるのか・・・。どうやらそうではないようだ。混乱が続いてきた政局の収拾に向けた最後の戦いと見た方が良さそうだ。その根拠は何か。有力政治家たちの何気ない言葉遣いだ。聞き流せば何も感じない程度の言葉だが、実は極めて重要な意味を内包している。おそらく政治家は意識的にそうしているのだろう。センシティブな言葉の裏に隠された“思惑”を理解したものが、最後の戦いで勝利を収める。20日の週の前半に予定されている臨時国会の首班指名選挙でその答えが出る。あと1週間ちょっと。この間、疑心暗鬼にすっぽりと覆われた永田町で国会議員たちは、“勝ち馬”を求めて右往左往するだろう。おそらく血が出るほど激しく醜い情報合戦が展開される。騙す方も騙される方も、切る方も切られる方も、どちらも悪いわけではない。これが政治の実態なのだ。

公明党の斉藤鉄夫代表は10日、自民党の高市総裁との会談を終えたあと記者会見し、政治とカネをめぐり「高市氏の回答に進展はなかった」と説明。それを理由に26年間続いた自民党との連立関係を一旦白紙に戻すと説明した。このあと会見した高市氏は「公明党から一方的に連立を離脱すると通告された。大変残念だ」と強調した。両当事者のこの発言の中にセンシティブな言葉が隠されている。まず公明党。同党は連立継続の条件として①靖国神社参拝問題②外国人問題③裏ガネ問題と政治献金の規制強化ーの3つをあげている。①と②は折り合ったものの、③の政治とカネで折り合いがつかず、これをもって連立離脱を表明した。離脱の理由に高市氏の保守的体質や、積極財政論者としての懸念はあげていない。政治とカネの1点に絞っている。おそらくこれは一般の有権者や党員の“受け”を意識したのだう。

これに対して高市氏は「一方的に通告された」と、こちらはこの1点で受けて立つ。どこがセンシティブなのか。政治家同士の協議である。事前に調整していないはずがない。協議を始める前からお互いがお互いの腹の中を完全に理解し合っていた。問題は公明党が自民党を切ったのか、自民党が公明党を切ったのか。おそらく自民党の腹の中を知った公明党が「切られる前に自民党を切った」、これが真相だろう。裏にいる策士はもちろん麻生太郎。総裁選の大逆転劇を生み出した後見人。決選投票は「党員投票の上位者に投票する」。高市氏が優位であることを知った上での指示だ。結果的に何が起こったのか。国民民主、維新の2党に自民党につくか立憲民主党につくか、決断を迫ったのである。自民党が主役だった混迷政局はかくして野党が主役に躍り出た。